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記録ノ125 名前をなくした作文

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6年生の1学期の終わりごろ、僕たち6年生は「社会を明るくする運動」の作文に応募することになった。
毎年6年生がいじめなどをテーマに作文を書き、応募するのだ。
時は過ぎてその作文のことをすっかり忘れていた2学期の秋のある日の朝の会終了直後、僕を始めクラスの半分以上の人間が突然M上先生に呼び出され、なぜか音楽準備室へ。
そこで話されたのは作文の件。残念ながらこの学校から賞は出なかったのだが、うちのクラスの中から優秀な内容を書いた人たちに参加賞としてクリアファイルが贈られるということなのだ。僕もファイルをもらった。

作文大嫌い人間で、高確率で書き直しを食らう人生ばかり送ってきた僕にとって作文でほめられたのは初めてのことであった。
作文の内容は自分のいじめ経験をもとに言葉遣いや悪口をテーマに問題提起したものだ。
だが正直言って、作文のタイトルも忘れていた。しかしこのとき先生の持っていたリストにファイルが贈られたメンバー全員分の作文のタイトルが書かれていた。
僕のタイトルは「ウソと言い方と悪口と」であった。そういやそんなタイトルだったっけ。この時はそんな感じだった。

しかしこの数日後、例の作文が返された日に事件が起こる。
「あれ?オレの作文、タイトルがない!書いたはずなのに!」
特に消した跡もない。
僕は慌てて先生に回収したときにタイトルが書かれていたかを聞いた。そのアンサーは…
「タイトルは最初から書いてなかったぞ、リストのタイトルも向こうが内容から想像で付けたんじゃないか?」
「そんなことはありません!ボクはしっかりタイトルを書きました!」と僕は反論したが、先生からは「記憶違いじゃないのか?」と返された。
しばらく納得のいかない日々が続き、「何者かに歴史を変えられてタイトル消されたんじゃないか?」と思いかけ、まともな判断もできなくなりそうになったが、数日たって結局「オレは最初からタイトル忘れてた。リスト観て思い出したのは記憶違い」という認識になった。

作文は提出する前にタイトルや名前を忘れてないかしっかり確認しましょう。
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