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第4部 漫画・出版史
フィギュアからのメッセージ~クレしん外伝・フィギュアウォーズを分析する~
クレヨンしんちゃんのエピソードには「外伝」とも呼ばれる通常回とは違った雰囲気のエピソードが原作、アニメともに度々作られている。
ある時は昔話や童話等のパロディ系、ある時はSF・ファンタジー系、またある時はしんのすけたちが何らかの職業に扮するお仕事系、さらにはぶりぶりざえもんの冒険などのシリーズもの…など多様なジャンルで通常回とは違った笑いと感動を届ける。
パラレルワールド的な設定故にファンの間でも好みが分かれるのだが、筆者は外伝は外伝でクレしんのキャラクターを使ってどこまで違った設定の物語を作れるかというクレしんという作品の可能性に作り手自ら挑戦しているようで割と好きである。作品によっては世界観にあわせてキャラクターの設定が本編とは変わっている(特にパロ系やファンタジー系に顕著)のもあり、クレしんキャラが役者のようにいろんなキャラを演じているように楽しめるのだ。
今回から外伝の中から2025年現在アニメ化されてない作品をいくつか分析し、知られざるクレしん外伝の魅力を紐解いていこう。
今回は単行本41巻収録の「フィギュアウォーズ」。タイトル通りフィギュアがキーとなる物語だ。
一応この作品はアマゾンプライムで独占配信された「おもちゃウォーズ」の元になっているのだが、別作品といえるほど大幅に改変されており、フィギュアウォーズとしてはアニメ化してないのでここで取り上げるとする。
ざっくりいえば世界征服を企む命を持ったフィギュアにしんのすけが立ち向かうという勧善懲悪ストーリーなのだが、単なるおこちゃま向けのバトルストーリーでは終わらない、大人の心にも響く深いメッセージが込められているのだ。
しんのすけたちの前に立ちはだかる悪役の名は「オバーン」。「チューコーネン仮面」という映画の悪役である。
本作でしんのすけと対峙するオバーンは映画から飛び出してきた本人とかではなく、ヨシりんが持っていたフィギュア。ヨシりんが会社の同僚からチューコーネン仮面のビデオとともにセットでもらったものなのだが、「映画がつまらなかったから」「いらなかったから」という理由でビデオともども捨てられてしまう。その夜、雷にあたったことによりオバーンのフィギュアに命がやどり、オバーンは自らの光線で人類をフィギュア化することによる世界征服に乗り出す。さらには一緒に捨てられたチューコーネン仮面のフィギュアにも命を与え、手下にする。
オバーンがフィギュア化による世界征服を企む理由は「人気がない・飽きた等の理由で何でもすぐ捨てる人類への復讐」。この作品のテーマのひとつとなっているのが「物の扱い」「何でもすぐ捨てる人類への警告」。冒頭のオバーンに命が宿るシーンにおけるオバーンのセリフだけでそのテーマをわかりやすく説明している。
さらにそのテーマにより説得力を持たせているのがこのシーンに続くしんのすけとひまわりの日常シーン。
ふたりは「アクション仮面」「ミカちゃん人形」「シリマルダシ」のフィギュア3つで遊んでいるが、しんのすけは突然「古いから飽きた」と言い出し、みさえに新しいのを買ってほしいとねだる。
冒頭ではいらないもの(=チューコーネン仮面のビデオとフィギュア)をつかまされて捨てたヨシりんという「大人目線での捨てる」が描かれているが、続けて「さんざん遊び飽きたから捨てようとするしんのすけ」という「子ども目線での捨てる」が描かれている。大人と子供、年齢と理由は違えど、「いらないからって何でもかんでも捨てる」という人類の性は共通であるというメッセージの柱が描かれている。
その後、オバーンはヨシりんミッチーを手始めに、となりのおばさん、さらにみさえとひまわり、そしてひろしと着々とフィギュア化計画を進めていく。
その魔の手はかすかべ防衛隊にも迫り、ネネちゃんとマサオくんは母親をフィギュア化され、風間くんとボーちゃんもオバーンにやられてしまった。
さらに作戦を進めるオバーンはしんのすけたちが遊んでいたアクション仮面ら3つのフィギュアに命を与え、自らのしもべとする。洗脳されたアクション仮面たちもまた、自らを捨てようとしたしんのすけたちを恨み、襲い掛かる。
自分たちのおもちゃがオバーン側についたことに対してしんのすけは「裏切るのか!?」と投げかけると、ミカちゃん人形は「アンタらだってアタイらを捨てようとしたくせに」と返答。これまたオバーンと対比することで、子供と大人、元の持ち主は違えど捨てられた側・捨てられかけた側の苦しみは同じということをフィギュアの目線から描いている。
その後、しんのすけはオバーンを倒すため、ゴミ捨て場に捨てられたヨシりんのチューコーネン仮面のビデオを拾い、オバーンの弱点を探ろうとするも別番組が重ね撮り(当時テレ朝系で放送されていた「銭形金太郎」。ちなみにヨシりんは重ね撮りに失敗したと思いこみ、当該シーンの直前で電源を切っていた)されてたためにそのシーンを確認することはできず、そのスキにチューコーネン仮面とアクション仮面一行が現れ、しんのすけは拘束されてしまい、しんのすけはチューコーネン仮面からストレス発散にサンドバッグにされてしまうが、しんのすけが苦しんでるのを見たアクション仮面たちはしんのすけたちとの今までの楽しかった思い出を思い出し、目が覚めてしんのすけたちに味方することを誓う。
自らを捨てた人類を恨むオバーンに「どうせお前たちもいつかは捨てられるんだよ」と言われたアクション仮面は「そうかもしれん、しかし俺たちはこの子たちと遊んだとき確かに生き、喜んだ!」ミカちゃん人形も「たとえいつか捨てられてもしんのすけたちが大好き」と答えた。フィギュアの側から人類のポジティブな部分を描くことにより「おもちゃたちは遊んでくれるキミたちのことが大好きなんだよ、だから大切にしよう」というメッセージを子供たちにわかりやすく伝えている。
最後はオバーンの攻撃を食らいバラバラになってしまったミカちゃん人形の手鏡を使ってオバーンのビームを反射させてしんのすけが勝利。オバーンとチューコーネン仮面も普通のフィギュアに戻った。
ラストシーン直前では自分たちのことが好きと言ってくれ、自分たちのために戦ってくれたアクション仮面たちにしんのすけたちが愛着がわいた様子が描かれた。
しんのすけたちも「自分のことが大好き」といってくれたおもちゃたちの心を知ったことで「大切にしよう」という気持ちが芽生えたのだ。
「物を大切にしよう」的エピソードは子供向けの作品では定番であるが、この作品ではバトル、ファンタジー、ちょっぴりホラーなどいろんなジャンルを混ぜ合わせ、さらにおもちゃの目線を人間側が知っての心変わりを描くことによってより強いメッセージとして打ち出している。
個人的にフィギュアウォーズの原作に忠実なアニメ化を願いたいところだ。ただ、ビデオテープがキーとなってるところが現代ではアニメ化が難しいのかもしれないが…
ある時は昔話や童話等のパロディ系、ある時はSF・ファンタジー系、またある時はしんのすけたちが何らかの職業に扮するお仕事系、さらにはぶりぶりざえもんの冒険などのシリーズもの…など多様なジャンルで通常回とは違った笑いと感動を届ける。
パラレルワールド的な設定故にファンの間でも好みが分かれるのだが、筆者は外伝は外伝でクレしんのキャラクターを使ってどこまで違った設定の物語を作れるかというクレしんという作品の可能性に作り手自ら挑戦しているようで割と好きである。作品によっては世界観にあわせてキャラクターの設定が本編とは変わっている(特にパロ系やファンタジー系に顕著)のもあり、クレしんキャラが役者のようにいろんなキャラを演じているように楽しめるのだ。
今回から外伝の中から2025年現在アニメ化されてない作品をいくつか分析し、知られざるクレしん外伝の魅力を紐解いていこう。
今回は単行本41巻収録の「フィギュアウォーズ」。タイトル通りフィギュアがキーとなる物語だ。
一応この作品はアマゾンプライムで独占配信された「おもちゃウォーズ」の元になっているのだが、別作品といえるほど大幅に改変されており、フィギュアウォーズとしてはアニメ化してないのでここで取り上げるとする。
ざっくりいえば世界征服を企む命を持ったフィギュアにしんのすけが立ち向かうという勧善懲悪ストーリーなのだが、単なるおこちゃま向けのバトルストーリーでは終わらない、大人の心にも響く深いメッセージが込められているのだ。
しんのすけたちの前に立ちはだかる悪役の名は「オバーン」。「チューコーネン仮面」という映画の悪役である。
本作でしんのすけと対峙するオバーンは映画から飛び出してきた本人とかではなく、ヨシりんが持っていたフィギュア。ヨシりんが会社の同僚からチューコーネン仮面のビデオとともにセットでもらったものなのだが、「映画がつまらなかったから」「いらなかったから」という理由でビデオともども捨てられてしまう。その夜、雷にあたったことによりオバーンのフィギュアに命がやどり、オバーンは自らの光線で人類をフィギュア化することによる世界征服に乗り出す。さらには一緒に捨てられたチューコーネン仮面のフィギュアにも命を与え、手下にする。
オバーンがフィギュア化による世界征服を企む理由は「人気がない・飽きた等の理由で何でもすぐ捨てる人類への復讐」。この作品のテーマのひとつとなっているのが「物の扱い」「何でもすぐ捨てる人類への警告」。冒頭のオバーンに命が宿るシーンにおけるオバーンのセリフだけでそのテーマをわかりやすく説明している。
さらにそのテーマにより説得力を持たせているのがこのシーンに続くしんのすけとひまわりの日常シーン。
ふたりは「アクション仮面」「ミカちゃん人形」「シリマルダシ」のフィギュア3つで遊んでいるが、しんのすけは突然「古いから飽きた」と言い出し、みさえに新しいのを買ってほしいとねだる。
冒頭ではいらないもの(=チューコーネン仮面のビデオとフィギュア)をつかまされて捨てたヨシりんという「大人目線での捨てる」が描かれているが、続けて「さんざん遊び飽きたから捨てようとするしんのすけ」という「子ども目線での捨てる」が描かれている。大人と子供、年齢と理由は違えど、「いらないからって何でもかんでも捨てる」という人類の性は共通であるというメッセージの柱が描かれている。
その後、オバーンはヨシりんミッチーを手始めに、となりのおばさん、さらにみさえとひまわり、そしてひろしと着々とフィギュア化計画を進めていく。
その魔の手はかすかべ防衛隊にも迫り、ネネちゃんとマサオくんは母親をフィギュア化され、風間くんとボーちゃんもオバーンにやられてしまった。
さらに作戦を進めるオバーンはしんのすけたちが遊んでいたアクション仮面ら3つのフィギュアに命を与え、自らのしもべとする。洗脳されたアクション仮面たちもまた、自らを捨てようとしたしんのすけたちを恨み、襲い掛かる。
自分たちのおもちゃがオバーン側についたことに対してしんのすけは「裏切るのか!?」と投げかけると、ミカちゃん人形は「アンタらだってアタイらを捨てようとしたくせに」と返答。これまたオバーンと対比することで、子供と大人、元の持ち主は違えど捨てられた側・捨てられかけた側の苦しみは同じということをフィギュアの目線から描いている。
その後、しんのすけはオバーンを倒すため、ゴミ捨て場に捨てられたヨシりんのチューコーネン仮面のビデオを拾い、オバーンの弱点を探ろうとするも別番組が重ね撮り(当時テレ朝系で放送されていた「銭形金太郎」。ちなみにヨシりんは重ね撮りに失敗したと思いこみ、当該シーンの直前で電源を切っていた)されてたためにそのシーンを確認することはできず、そのスキにチューコーネン仮面とアクション仮面一行が現れ、しんのすけは拘束されてしまい、しんのすけはチューコーネン仮面からストレス発散にサンドバッグにされてしまうが、しんのすけが苦しんでるのを見たアクション仮面たちはしんのすけたちとの今までの楽しかった思い出を思い出し、目が覚めてしんのすけたちに味方することを誓う。
自らを捨てた人類を恨むオバーンに「どうせお前たちもいつかは捨てられるんだよ」と言われたアクション仮面は「そうかもしれん、しかし俺たちはこの子たちと遊んだとき確かに生き、喜んだ!」ミカちゃん人形も「たとえいつか捨てられてもしんのすけたちが大好き」と答えた。フィギュアの側から人類のポジティブな部分を描くことにより「おもちゃたちは遊んでくれるキミたちのことが大好きなんだよ、だから大切にしよう」というメッセージを子供たちにわかりやすく伝えている。
最後はオバーンの攻撃を食らいバラバラになってしまったミカちゃん人形の手鏡を使ってオバーンのビームを反射させてしんのすけが勝利。オバーンとチューコーネン仮面も普通のフィギュアに戻った。
ラストシーン直前では自分たちのことが好きと言ってくれ、自分たちのために戦ってくれたアクション仮面たちにしんのすけたちが愛着がわいた様子が描かれた。
しんのすけたちも「自分のことが大好き」といってくれたおもちゃたちの心を知ったことで「大切にしよう」という気持ちが芽生えたのだ。
「物を大切にしよう」的エピソードは子供向けの作品では定番であるが、この作品ではバトル、ファンタジー、ちょっぴりホラーなどいろんなジャンルを混ぜ合わせ、さらにおもちゃの目線を人間側が知っての心変わりを描くことによってより強いメッセージとして打ち出している。
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