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アメリカ国防会議 Part2
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米国政府は、ロシアによる殺戮を看過できぬものとして、
側近だけの国防会議を臨時に招集した。
重厚な防音扉が閉じられた瞬間、
部屋の空気が一段、重く沈んだ。
国務長官が口を開いた。
「閣下……酷いものです。
スパイ衛星で凡そは把握していましたが、これほどとは……」
言葉を選びながら、彼は一瞬、資料から目を逸らした。
「このままでは、国威は失われ続けます。
アメリカへの信頼も、確実に低下していくでしょう」
大統領は答えず、椅子の背に深く身を預けたまま、
天井を見上げていた。
「……そうだな」
低い声だった。
「支援は追加する。だが、はっきり言えば手詰まりだ。
経済制裁も、もはや効いていない」
国防長官が静かに頷く。
「支援すればするほど、ロシアは追い詰められます。
その結果として、ウクライナ国民への虐殺で屈服を迫るでしょう」
その言葉が落ちたあと、
数秒間、誰も口を開かなかった。
大統領は、机の縁を指で二度、軽く叩いた。
乾いた音が、やけに大きく響く。
「……まさにそれだ。
だが、介入はできない。
介入すれば世界大戦だ。わが国も無傷では済まん」
国防長官は身を乗り出した。
「このままでは、犠牲者は増え続けます。
ロシアは、局地的核使用すら辞さないでしょう。
そして――アメリカは出てこないと、見切っています」
大統領はゆっくりと視線を上げた。
「……場所にもよるが、核が使われたからといって、
米国が核反撃できるかと問われれば……答えは出ている」
一瞬、沈黙。
「傍観するしかない、という現実だ。
何か……他に案はないのか?」
国防長官の目が、わずかに光った。
「……あります。
以前から考えていた私案ですが……今こそ実行すべきかと」
大統領は、初めて身を起こした。
「言ってみたまえ」
国防長官は、言葉を選ばなかった。
「北朝鮮に、核による奇襲をかけます。
ピョンヤンを、ピンポイントで殲滅する」
誰かが、無意識に息を呑んだ。
「原潜からの集中攻撃です。
反撃の余地は与えません」
大統領は即座に否定しなかった。
ただ、肘をつき、指を組んだ。
「……それで、どうなる?」
「ロシアは理解します。
ウクライナ戦争の継続が、自国の滅亡に直結すると」
国務長官が、低く唸った。
「……停戦、ということか」
「それだけではありません。
中国も、台湾侵攻を棚上げするでしょう」
大統領の口元が、わずかに歪んだ。
「……一石二鳥、いや三鳥だな」
その言葉が出た瞬間、
会議の結論は、誰の中でも固まった。
命令は、静かに下された。
命令は実行された。
奇襲だった。
米国原潜艦隊が放った核ミサイルは、数分でピョンヤンを灰燼と化した。
反撃は、なかった。
最初に凍りついたのは、ロシアと中国だった。
ロシア大統領は、報告書を握り潰した。
「……そうか。
アメリカは、決意したということか……」
その夜、ロシア軍は全面撤退を命じられ、
停戦の申し入れが即座に打電された。
中国でも、同様だった。
軍幹部が緊急招集され、台湾侵攻計画は無期限延期となる。
世界は喝采した。
北が失った数十万の命は、
「必要な犠牲」という一行で処理された。
おしまい
側近だけの国防会議を臨時に招集した。
重厚な防音扉が閉じられた瞬間、
部屋の空気が一段、重く沈んだ。
国務長官が口を開いた。
「閣下……酷いものです。
スパイ衛星で凡そは把握していましたが、これほどとは……」
言葉を選びながら、彼は一瞬、資料から目を逸らした。
「このままでは、国威は失われ続けます。
アメリカへの信頼も、確実に低下していくでしょう」
大統領は答えず、椅子の背に深く身を預けたまま、
天井を見上げていた。
「……そうだな」
低い声だった。
「支援は追加する。だが、はっきり言えば手詰まりだ。
経済制裁も、もはや効いていない」
国防長官が静かに頷く。
「支援すればするほど、ロシアは追い詰められます。
その結果として、ウクライナ国民への虐殺で屈服を迫るでしょう」
その言葉が落ちたあと、
数秒間、誰も口を開かなかった。
大統領は、机の縁を指で二度、軽く叩いた。
乾いた音が、やけに大きく響く。
「……まさにそれだ。
だが、介入はできない。
介入すれば世界大戦だ。わが国も無傷では済まん」
国防長官は身を乗り出した。
「このままでは、犠牲者は増え続けます。
ロシアは、局地的核使用すら辞さないでしょう。
そして――アメリカは出てこないと、見切っています」
大統領はゆっくりと視線を上げた。
「……場所にもよるが、核が使われたからといって、
米国が核反撃できるかと問われれば……答えは出ている」
一瞬、沈黙。
「傍観するしかない、という現実だ。
何か……他に案はないのか?」
国防長官の目が、わずかに光った。
「……あります。
以前から考えていた私案ですが……今こそ実行すべきかと」
大統領は、初めて身を起こした。
「言ってみたまえ」
国防長官は、言葉を選ばなかった。
「北朝鮮に、核による奇襲をかけます。
ピョンヤンを、ピンポイントで殲滅する」
誰かが、無意識に息を呑んだ。
「原潜からの集中攻撃です。
反撃の余地は与えません」
大統領は即座に否定しなかった。
ただ、肘をつき、指を組んだ。
「……それで、どうなる?」
「ロシアは理解します。
ウクライナ戦争の継続が、自国の滅亡に直結すると」
国務長官が、低く唸った。
「……停戦、ということか」
「それだけではありません。
中国も、台湾侵攻を棚上げするでしょう」
大統領の口元が、わずかに歪んだ。
「……一石二鳥、いや三鳥だな」
その言葉が出た瞬間、
会議の結論は、誰の中でも固まった。
命令は、静かに下された。
命令は実行された。
奇襲だった。
米国原潜艦隊が放った核ミサイルは、数分でピョンヤンを灰燼と化した。
反撃は、なかった。
最初に凍りついたのは、ロシアと中国だった。
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「……そうか。
アメリカは、決意したということか……」
その夜、ロシア軍は全面撤退を命じられ、
停戦の申し入れが即座に打電された。
中国でも、同様だった。
軍幹部が緊急招集され、台湾侵攻計画は無期限延期となる。
世界は喝采した。
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「必要な犠牲」という一行で処理された。
おしまい
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