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欲望の怨嗟
Wside 世界は
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世界はいつ正しくなったのか。
いや、本当はいつからか悪となってしまったのか。それはわからない。
ゆえに世界は偽りだ。なにかが足りず、なにかがいらない。
―――俺たちの世界は暴虐に満ちている。
―――僕たちの世界は殺戮に満ちている。
人が知らぬところで、人が死ぬ。
満ち満ちていても、誰も知らない世界の姿。
偽りの世界はもう一度、蘇る。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
俺の席の後ろに座る生徒二人が、スマホ片手に話し始めた。
「なあ、この掲示板知ってるか?」
「どの掲示板だよ?」
「とにかく、これ見てみろよ」
そういって片方の男子生徒が見せたのは一枚の写真だった。
しかし、見たからと言ってもう一方の生徒がなんなのかを理解することは難しい。
「なになに……至急】こいつの正体を教えてくれ?―――なにこれ、ヒーローショー?何のアニメか知りたいとか?」
「て、思うだろ?でも、スレの内容をよく見てくれ」
「『なんか怪人に襲われたけど、写真の怪人が助けてくれた』?……内容がぶっ飛びすぎでしょ。さすがに釣りだよ」
「俺もそう思ったんだけどなー。スレ民の中にも真面目に調べた人がいて、この写真の姿に該当するアニメキャラも、企業キャラもいない。もちろん、ネットで活動する人たちがこういう姿になったっていうこともないらしい」
「いや、そういわれても……そもそも、その写真はいつ撮ったものなのさ」
男子生徒たちが目にしている写真は、昨日の夜に掲示板でちょっとした話題になったもの。異形の人型の存在―――怪人をとらえたというものだった。
ことの顛末は―――
「それは、夜帰り道のことだった―――自分以外の人がいないはずの夜道。だけど、明らかに人の気配がする。でも、振り向いてみても誰もいない。怪訝に思いながらもう一度歩き出すと、先ほど聞こえた足音が近くなってるではないか!もう一度後ろを見ると……」
「ごくり……」
「そこには見たこともない異形の存在が!」
「ひっ!?きゃー!……じゃ、ねえんだわ。結局、なんで襲ってきたほうの写真はないんだろうな?」
「きゃー!って、このスレ主は男だと―――「そこじゃねえ」まあ、必死に逃げてるときは写真撮ってる余裕がなかったんじゃないかな?これも、立ち去ってくところを慌てて……じゃないか?だいぶブレてるし」
ことの内容は今の会話の通りだと言える。まあ、信じる意味もない与太話のようなものだ。
あれを信じるのはよっぽどのオカルト好きか妄想主義者だろう。
「どう思うよ?」
「いや、企業とかショーとかそういうのじゃなければ普通に加工でしょ」
「それもそうだよな!」
「お前も、暇つぶしにこういうの見つけてくるだけだろ?本当は信じてないくせに」
「あれ、バレた?―――でも、面白いじゃん。ほら、ほかにも超能力が使えるようになるアプリ、とかあるじゃん」
「お前、どれだけスレにハマってんだよ……」
今は放課後ということもあって、彼らは自由に話している。そんな普通学校のはずなのだ。
俺の名前は、零陵一
15歳の高校1年。そう、普通の入学したての高校1年のはずだった。
そんな俺が帰るために校門に近づいていくと―――
「おい、零陵。面かせよ」
「……またか」
最近は不良に絡まれる。
学校自体に、大規模な不良グループの頭がまぎれているのが原因ではあるのだが、そのせいで付近のメンバーがこの高校に放課後集合してくる。そうでなくても、近くにたむろしていることが多い。
それが原因で、この高校への志望者が少なくなり、年々偏差値下がっているとのことだ。
教師たちもその不良たちに頭を悩まされており、それでつぶれた者たちも少なくない。
すべては、3年次にいる頭のせいだ。金も半端に持っている家柄ということもあって、文句を言えるものがまずいない。むしろ、女という名の上納品を納めれば、金すらもらえるときもある。
まあ、それが頻繁にあるかと聞かれればそうでもない。無駄に女の選り好みはしているとのことだ。
そんな噂が、友人もおらず、入学してから1か月しか経っていない俺に流れてくるほど有名である。
だからこそだろう。あの時の俺が、まったく責められなかったのは。
端的に言うのなら、俺は不良グループの一部メンバーを半殺しにした。文字通り、息をすることすら苦しいと思うほどに追い詰めた。
血にまみれ、死屍累々とした現場を後にしたのだが、やはり足はついてしまっていた。
教師たちから陰で賛辞を浴びていたが、ボコボコにした奴の仲間からはヘイトを買うことになってしまった。
それのせいで、入学から2週間で、からまれる日々。撃退すればするほど俺が強いと話題になり、いつのまにかヘイトそっちのけで俺を倒すことが力の誇示みたいになる。
ある意味、俺のせいで学校に不良が集まっている節もある。それは少し申し訳ないとは思っている。
しかし、教師陣はこの問題に干渉してこない。このままだと俺も、加減の仕方がわからなくなって、殺すかもしれない。文字通りに。
だからこそ、誰かに止めてほしいものだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
僕は図書室が好きだ。図書委員以外、誰もいない空間。騒ぐことなどありえないこの場所。
まさに僕にとっての癒しだ。
授業はつまらないし、低俗な連中も多い。
本当はもう少し上の偏差値の高校に行ってもよかったのだが、いろいろと事情があって、この学校に行かざるを得なかった。
まあ、そこには納得しているし、必要なこと。それをわかっているから、文句を言うつもりはない。
だが、低レベルな授業に僕は辟易している。
歴史も数学も、化学だって、僕が知っていること以外の話などない。先生がたまに話す「実は……」の話題で僕が知らなかったためしがない。
しかし、この図書室は違う。
僕の知らない世界―――物語がある。
僕を裏切るシナリオ。綿密に編み込まれた伏線。
文字しか書かれていないのに、まるでその世界に引き込まれているような感覚に襲われる。
僕はその感覚が好きだった。
僕の世界は狭い。友達も、家族もいない。
いるのは、たった一人の相棒だけ。
そんな僕にとっての物語は、異世界に転生するような、それだけ大きな感覚なのだ。
だからこそ、僕にとって今の状況は許せない。
「あ、あの……それって、シュピーゲルの本ですよね?それと……同じクラスの零蘭颯二さんだよね?」
僕の読書の時間に、不躾にも話しかけてくる女子がいる。
ただ、この本を知っているとは興味深い。
「この本の作者を知っている。その感嘆すべき目利きに免じて見逃してあげよう。僕の読書の邪魔をしないでくれたまえ」
「あ、あの……ごめんなさい」
僕の言葉を言いて、彼女はすぐに帰っていった。
確か彼女は、同じクラスの紀里谷花音―――数学の時間はよく首をかしげている姿をよく目にする。
クラスメイトの名前、顔、その他特徴などを把握しているが、興味はない。
勝手に頭に入ってくるだけ。
そう考え、僕は読書に戻る。
彼女が、まだ僕の近くの席に座っていることなど、気付かずに
いや、本当はいつからか悪となってしまったのか。それはわからない。
ゆえに世界は偽りだ。なにかが足りず、なにかがいらない。
―――俺たちの世界は暴虐に満ちている。
―――僕たちの世界は殺戮に満ちている。
人が知らぬところで、人が死ぬ。
満ち満ちていても、誰も知らない世界の姿。
偽りの世界はもう一度、蘇る。
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俺の席の後ろに座る生徒二人が、スマホ片手に話し始めた。
「なあ、この掲示板知ってるか?」
「どの掲示板だよ?」
「とにかく、これ見てみろよ」
そういって片方の男子生徒が見せたのは一枚の写真だった。
しかし、見たからと言ってもう一方の生徒がなんなのかを理解することは難しい。
「なになに……至急】こいつの正体を教えてくれ?―――なにこれ、ヒーローショー?何のアニメか知りたいとか?」
「て、思うだろ?でも、スレの内容をよく見てくれ」
「『なんか怪人に襲われたけど、写真の怪人が助けてくれた』?……内容がぶっ飛びすぎでしょ。さすがに釣りだよ」
「俺もそう思ったんだけどなー。スレ民の中にも真面目に調べた人がいて、この写真の姿に該当するアニメキャラも、企業キャラもいない。もちろん、ネットで活動する人たちがこういう姿になったっていうこともないらしい」
「いや、そういわれても……そもそも、その写真はいつ撮ったものなのさ」
男子生徒たちが目にしている写真は、昨日の夜に掲示板でちょっとした話題になったもの。異形の人型の存在―――怪人をとらえたというものだった。
ことの顛末は―――
「それは、夜帰り道のことだった―――自分以外の人がいないはずの夜道。だけど、明らかに人の気配がする。でも、振り向いてみても誰もいない。怪訝に思いながらもう一度歩き出すと、先ほど聞こえた足音が近くなってるではないか!もう一度後ろを見ると……」
「ごくり……」
「そこには見たこともない異形の存在が!」
「ひっ!?きゃー!……じゃ、ねえんだわ。結局、なんで襲ってきたほうの写真はないんだろうな?」
「きゃー!って、このスレ主は男だと―――「そこじゃねえ」まあ、必死に逃げてるときは写真撮ってる余裕がなかったんじゃないかな?これも、立ち去ってくところを慌てて……じゃないか?だいぶブレてるし」
ことの内容は今の会話の通りだと言える。まあ、信じる意味もない与太話のようなものだ。
あれを信じるのはよっぽどのオカルト好きか妄想主義者だろう。
「どう思うよ?」
「いや、企業とかショーとかそういうのじゃなければ普通に加工でしょ」
「それもそうだよな!」
「お前も、暇つぶしにこういうの見つけてくるだけだろ?本当は信じてないくせに」
「あれ、バレた?―――でも、面白いじゃん。ほら、ほかにも超能力が使えるようになるアプリ、とかあるじゃん」
「お前、どれだけスレにハマってんだよ……」
今は放課後ということもあって、彼らは自由に話している。そんな普通学校のはずなのだ。
俺の名前は、零陵一
15歳の高校1年。そう、普通の入学したての高校1年のはずだった。
そんな俺が帰るために校門に近づいていくと―――
「おい、零陵。面かせよ」
「……またか」
最近は不良に絡まれる。
学校自体に、大規模な不良グループの頭がまぎれているのが原因ではあるのだが、そのせいで付近のメンバーがこの高校に放課後集合してくる。そうでなくても、近くにたむろしていることが多い。
それが原因で、この高校への志望者が少なくなり、年々偏差値下がっているとのことだ。
教師たちもその不良たちに頭を悩まされており、それでつぶれた者たちも少なくない。
すべては、3年次にいる頭のせいだ。金も半端に持っている家柄ということもあって、文句を言えるものがまずいない。むしろ、女という名の上納品を納めれば、金すらもらえるときもある。
まあ、それが頻繁にあるかと聞かれればそうでもない。無駄に女の選り好みはしているとのことだ。
そんな噂が、友人もおらず、入学してから1か月しか経っていない俺に流れてくるほど有名である。
だからこそだろう。あの時の俺が、まったく責められなかったのは。
端的に言うのなら、俺は不良グループの一部メンバーを半殺しにした。文字通り、息をすることすら苦しいと思うほどに追い詰めた。
血にまみれ、死屍累々とした現場を後にしたのだが、やはり足はついてしまっていた。
教師たちから陰で賛辞を浴びていたが、ボコボコにした奴の仲間からはヘイトを買うことになってしまった。
それのせいで、入学から2週間で、からまれる日々。撃退すればするほど俺が強いと話題になり、いつのまにかヘイトそっちのけで俺を倒すことが力の誇示みたいになる。
ある意味、俺のせいで学校に不良が集まっている節もある。それは少し申し訳ないとは思っている。
しかし、教師陣はこの問題に干渉してこない。このままだと俺も、加減の仕方がわからなくなって、殺すかもしれない。文字通りに。
だからこそ、誰かに止めてほしいものだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
僕は図書室が好きだ。図書委員以外、誰もいない空間。騒ぐことなどありえないこの場所。
まさに僕にとっての癒しだ。
授業はつまらないし、低俗な連中も多い。
本当はもう少し上の偏差値の高校に行ってもよかったのだが、いろいろと事情があって、この学校に行かざるを得なかった。
まあ、そこには納得しているし、必要なこと。それをわかっているから、文句を言うつもりはない。
だが、低レベルな授業に僕は辟易している。
歴史も数学も、化学だって、僕が知っていること以外の話などない。先生がたまに話す「実は……」の話題で僕が知らなかったためしがない。
しかし、この図書室は違う。
僕の知らない世界―――物語がある。
僕を裏切るシナリオ。綿密に編み込まれた伏線。
文字しか書かれていないのに、まるでその世界に引き込まれているような感覚に襲われる。
僕はその感覚が好きだった。
僕の世界は狭い。友達も、家族もいない。
いるのは、たった一人の相棒だけ。
そんな僕にとっての物語は、異世界に転生するような、それだけ大きな感覚なのだ。
だからこそ、僕にとって今の状況は許せない。
「あ、あの……それって、シュピーゲルの本ですよね?それと……同じクラスの零蘭颯二さんだよね?」
僕の読書の時間に、不躾にも話しかけてくる女子がいる。
ただ、この本を知っているとは興味深い。
「この本の作者を知っている。その感嘆すべき目利きに免じて見逃してあげよう。僕の読書の邪魔をしないでくれたまえ」
「あ、あの……ごめんなさい」
僕の言葉を言いて、彼女はすぐに帰っていった。
確か彼女は、同じクラスの紀里谷花音―――数学の時間はよく首をかしげている姿をよく目にする。
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