傲慢な人

北川 聖

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傲慢な人

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気の苛立っている人、傲慢な人、横柄な人には詩は書けない

人の心を打つ詩は決して舞い降りてこない

そういう人は人を蔑ろにしている

心を平静にして静寂を感じている時に言葉は不意に現れる

自分でも気づかなかったような言葉が

およそその人に似つかわしくない言葉が

彼は再び会社で尊大な態度を取る

でも帰りの電車の窓に映る自分の顔が普段と違うと気づく

朝庭いじりをしている時、胸に激痛が走った

でもこんなものなんでもないと気にも留めなかった

彼はその日部下に激昂している時に倒れた

上司と部下が見舞いにやってきた

彼は上司を適当にあしらって帰すと

部下に怒鳴った

この前の案件、全部やり直しだ、あんなもの使えるか だからダメなんだ

彼の病状は悪化していった 彼は医師にも看護師にも尊大だった

ある日窓からシトシトと降る雨を見ていた

彼は心が沈んでいくとともに何かが心に芽生えた

薬を持ってきた看護師にありがとうと言った

看護師は微笑んで戻っていった

しかし会社の部下は一歩も病室に入らせなかった

致命的な発作が起きた

目を覚ますと部下たちが取り巻いていた

彼は瞬時に分かった

そうか俺は終わりなんだな

思いかけず涙が溢れた

その時警報が鳴った

慌ただしく医師たちが走ってくる

時が過ぎて彼は霊安室にいた

その顔は冷たく穏やかだった
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