死が見える眼

北川 聖

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死が見える眼

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最近、また人間嫌悪、人生嫌悪の傾向が出てきてしまった

私には人の不幸がよく見える。自分のだけでなく他人のまで見えるから気持ちは重くなる

不幸な人間は経済的な困窮からだけではない、孤独、病気、中毒いろいろからなる

すれ違いざまに見えてしまう。その人が命を終えようとしているのを

私は人に干渉したくないので最初のうちはその人の後をついていくだけだった

自殺を考えていませんか、考え直しましょうよと言える立場でもない

でも100%1時間以内に自殺することが分かった

1時間人の後を追うというのは結構大変なことである

早く死ねというのもおかしいので帰ろうと引き返そうとしたことがあった

その瞬間、悲鳴が聞こえ車に突っ込んだのがわかった

私は自殺否定論者ではない、勝手に生まれてきたのだから勝手に死ねばいいという考えだ

別に誰に頼まれているのでもないのに生き続けている方がどうかしている

小さい子供がいて病気がちで毎日生きていくのが辛いという人もいるだろう

でもそれはその人の選んだ意思でもあり運命でもある

人は生まれるのも生きていくのも自分の責任であり運命だと思っている

運命は人それぞれに必ずついてまわる、運命を呪っても仕方がないだろう

今日も髪の長い美少女が友達と笑いながらすれ違った、彼女は一瞬私を見た、冷たい目で

私は誰であろうと気にしないことにしている。こちらの気が重くなるばかりだからだ

今日も夕方のニュースにでも乗るだろうくらいに考えていた

すると何やら気配がざわついた、私が振り向いたとき少女が鋭利な凶器で私の脇腹をついていた

なぜだ、という疑問と焼けつくような痛みで混乱しながら少女の顔を見つめた

彼女は走行中にいきなり目の前に飛び出してきた女性の娘だった

裁判に何度か傍聴に来ていたが髪型が変わったのと大人びていたので気付かなかったのだ

彼女は凶器を抜くと自分の胸に突き刺した

私の口からその時初めて叫び声が出た

「俺を殺したいなら殺して構わない、だが死ぬ事はないだろう!」

私は彼女が確実に死ぬだろうと思いながらも

「この世は不幸に満ちているんだ、死んでたらきりがないんだよ」

「自殺は君の運命じゃないんだ」

こう叫ばずにいられなかった
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