それ行け!! 派遣勇者(候補)。33歳フリーターは魔法も恋も超一流?

初老の妄想

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勇者候補たちの想い

28.西方大教会の思惑

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■スタートス 聖教会 司祭執務室

タケルを待っていた男は、西方大教会のギレン副司教と名乗った。
話を聞くとタケル達をムーアの西方大教会に「お迎え」したいらしい。

「勇者タケル様は、並外れた魔法のお力をお持ちと聞きまして、是非ともムーア西方大教会で修練を積まれるようにと、オズボーン大司教から命を受けてまいりました。」

「ムーアに行くと、何か良いことがあるのですか?」
「ムーアはこのような田舎町ではございません。料理も豪華なものをお出ししますし、宿所も広いお部屋をご用意できます。なによりも、炎の大魔法士であるオズボーン大司教が自らご指導されますので、良い修練ができるはずです。」

「オズボーン大司教は炎魔法でどのぐらいのことが出来るんですか?」
「大司教は3階の高さの炎を100メートル先に放たれたことがあります。」

「そうですか。ところで、ムーアの町にはお風呂とかウォシュレットありますか?」
「お風呂? ウォス・・ それは何でしょうか?」

「ご存じないなら結構です。仲間と西條さん・・・サイオン大魔法士にも相談して、お返事させていただきます。」
「そ、そんな、お考えになる必要など全くございません。今よりもはるかに快適にお過ごしいただける環境がお約束できます。大司教からは、私の転移魔法でこのままお連れするように命を受けておりますので、是非ご一緒にムーアへお越しください。」

「サイオン大魔法士はこの件をご存じですか?」
「スタートスは西方大教会の管轄ですので、全てオズボーン大司教のご判断に従うことになっております。」

返事が噛み合っていないが、西條には伝わっていないようだ。
ノックスを見ると、表情が曇っている。
マリンダは悲しそう・・・に見えた。 
腹は決まった。

「先ほど申し上げたとおりです、相談させていただいてからお返事します。片付けることがあるので、これで失礼します。マリンダさん一緒に来てください。お願いがあるので。」 

引きとめようとするギレンを無視して、マリンダを部屋の外へ連れ出した。
そのまま無言でマリンダと一緒に食堂へ戻った。

■スタートス 聖教会 宿舎食堂

食堂に入ると3人とも待っていてくれた。
ダイスケに時間を聞くと15時45分だったので、ナカジーは後15分。
マリンダも一緒に座ってもらう。

「何の話だったの?」ナカジーが食いつく。
「俺たちをムーアの西方大教会に移したいっていう話だった。」
「何で?」
「居心地があっちの方が良いから。って言ってる。」
「ふーん、じゃぁ行くの?」
「一応、西條さんとみんなに相談するって返事しといた。」

「タケルさんは行きたくないんですか?」
「オッ、ダイスケ君は僕の心が読めるようになったのかい?」
「そう、俺はいずれにせよ断ると思う。西條さんと話してから返事するけどね。なんたって、俺たちを雇ってるのはあの人だから。」

「どうして、断るんスか? 居心地良いんでしょ?」
「それはねー。マリンダさん この話って教会内の勢力争いみたいなものでしょ?」
「勢力争いとは申しませんが、オズボーン大司教様がタケル様達をお手元におきたがっているのは間違いないと思います。」
「どうして、手元に置いときたいんですか?」ダイスケが食いつく。
「おそらく、タケル様の魔法力をお聞きになったのではないかと・・・」

「アキラさん、会社で働いてるとたくさん居ますよね。『失敗すると部下の責任、成功すると上司の手柄』みたいな感じで、成功しそうになると乗っかってくるやつ。」
「うん、いっぱい居る」
珍しく、真顔ではっきり返事が来た。

「みんなには申し訳ないけど、そう言うのが大嫌いなんで、断ると思う。」

「ところでマリンダさん。俺たちがムーアに行ったらマリンダさん達はどうするの?」
「私は皇都に戻ることになると思います。こちらにはノックス司祭だけが残る形になると思います。」

「ね、ダイスケ。これだけでも断る理由になるでしょ?」
ニヤッと笑ってダイスケを見た。

「男どもは・・・」
そう言ってタケルを睨んだナカジーが目の前から消えた!
お帰り時間が来たようだ。
身につけていたものが全て椅子の上と下に落ちる。

「スゲェ、目の前で見ると改めてビックリだね。」
タケルは首を横に振って感心した。

「話を戻すと、そもそもムーアにも勇者が居るんでしょ?」
「はい、いらっしゃいます。」
「良いの?二チームも居て?」
「それは、私にはわかりかねますが、タケル様達をお手元におきたいお気持ちは理解いたします。」
「マリンダさんはどっちが良いと思うの?」
横のマリンダを見て、少し意地悪な質問をする。
「全ては勇者様がお決めになることです。ただ、ムーアがスタートスより大きな町であることは間違いございませんので・・・」

ダイスケ達に向き直る。
「結局、いくつも断る理由があるんだけど、ムーアが快適って言っても風呂もウォシュレットも無いからね。だったらこっちと変わんないじゃん。こっちはお風呂もお願いしているんだから、この町には既に義理があるでしょ?」
「最終決定は戻ってからにするけど、行かない心積もりでお願いします。」
二人は頷いた、理解してくれたようだ。

■スタートス 聖教会 司祭執務室

 「ノックス、貴様の話と違うではないか!こちらの勇者は聖教会に協力的であるとの報告は嘘であったか!!」
「ギレン様、決して嘘ではございません。タケル様はいつも教会に負担が無いようご配慮いただいておりました。今回の件も、悪い話ではございませんし・・・まだ、正式なお返事をいただいた訳でもございませんから・・・」
「この件はオズボーン様がお決めになったこと。万一、サイオンの意見て断るようなことになれば、オズボーン様の顔に泥を塗るようなものだ!貴様はどのように責任を取るつもりか!」
「責任と申されても・・・」
「断られた場合は厳しい処分が下るものと覚悟しておけ!」
ギレンは言い捨てて、部屋を出て行った。

「それにしても、オズボーン様はどうしてタケル様の魔法力をご存知なのか・・・」
ノックスはつぶやきながら頭を抱えた。

(赤い聖教石を持つ勇者をこの町においておけるわけが無かろうが)
ブラックモアは考え込むノックスを見て、心の中であざけった。

■スタートス 聖教会 宿舎

タケルはギレンやみんなとの会話を思い出しながら、歯ブラシ製作に取り組んでいた。
材料は割り箸、爪楊枝、ディオにもらった硬い毛、糸を駆使している。
最終的に、割り箸の隙間からしっかりした毛が飛び出したものが出来たので満足した。

(気に入らない、大きな組織はこんなやつらが多すぎる)
(しかし、断ったら昔の会社みたいに嫌がらせをされる可能性がある。)
(俺は来ないだけでいいけど、マリンダさん達に迷惑をかけないためには・・・)

西條にどう話すかを考えながら、現世への帰還を起きて待っていた。

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