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勇者候補たちの想い
38. 教会魔法士 マリンダ
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■スタートス聖教会裏 空き地 ~第三次派遣3日目~
夕食会が終わった後、タケルは買ったばかりの革の敷物とリュックを持って、空き地のシルバーへ向かった。
念のため、井戸によって手作り歯ブラシで歯を磨き、口をゆすぐ。
(あくまでも、念のため)
シルバーはいつもの木の下で、丸くなっていたがタケルに気がついて座りなおした。
いつものように首にハグをする。
顎の下の毛が伸びていてフワフワしている。
「今日はまた、クッションになっておくれ。」
そういって、シルバーに横になるように促した。
シルバーはタケルの言うことが完全に理解できる。
タケルはそう信じている。
神に言葉が届くように、シルバーにも届いている。
寝そべったシルバーの横に毛皮を敷いて、聖教石のランプに火をともした。
真っ暗だった空き地に緩やかな光が広がる。
マリンダを待つ間にリュックから加工前の聖教石をいくつか取り出した。
3cmぐらいの長さのものを二つ選んで、1つずつに神の祈りを捧げた。
(風の神 ウィン様 この石に風の力をお与えください)
(細く、石をもうがつ風の力が必要です)
頭の中で、拳(コブシ)と風で砕ける岩のイメージを描いた。
目をつぶって10秒ほど祈りを続ける。
ランプにかざすと、石は乳白色に変わっている。
手応えを感じ、出来栄えに満足してリュックにしまった。
(女性と屋外で二人っきりになるのはいつ以来だろう? 大学時代?)
緊張しながら、ランプの火を見つめる。
(グレン様、いつもありがとうございます。)
(少し炎の色を強く白くしてください)
ランプの明るさが増し、歩いてくるマリンダのシルエットが浮かび上がった。
改めて見ても、マリンダは細身でスタイルが良い。
あの美貌でこのスタイル、現世なら間違いなくモテモテだろう。
(この世界の美的感覚っておんなじかな?)
「遅くなりました、タケル様」
「こちらこそ、こんなところに呼び出して申し訳ない。座ってください」
毛皮をポンポンとたたいて、タケルの横へ座るように促した。
素直に座り両足を伸ばす。
少しの間、ランプが当たるマリンダの顔を見つめていたが、いつものようには目を合わせてくれない。
いつまでも見ていられる横顔だが・・・
「何か、心配事があるんですね?」
「心配事ということでは・・・」
「じゃあ、悩み事ですか?」
「どちらかというと。・・・」
「話してみませんか?」
「お話すべきかどうか・・・」
「それ自体が悩み事なんですね。じゃあ、こうしましょう。勇者として命令しますので、包み隠さず、私に話してください。」
「・・・承知しました。実はブラックモアから、タケル様をムーアにお連れするように協力しろと言われております。」
「具体的には何をしろと?」
「ムーアの良さを伝えて説得するように。それでダメなら・・・」
「ダメなら?」
「誘惑しろと・・・。」
「なるほど。ブラックモアさんはオズボーン側の人間ってことですか・・・
しかし、今更誘惑する必要も無いと思いますけどね。」
「それは、どう言う意味でしょうか?」
マリンダがようやくタケルを見てくれた。
「だって、俺はマリンダさんのことが大好きですから、誘惑する必要は無いってことですよ。」
緊張で少し引きつった笑顔をマリンダに向ける。
「だからと言ってムーアに移るかどうかは別の問題ですけどね。私も多少のプライドは持ってますから、操られるのが好きでは無いので。」
「・・・、ムーア行きについては、そのように仰ると思っておりました。タケル様はご自身の思うとおりにされるべきだと思っております。ですが・・・」
「・・・ですが?」
「・・、この話をタケル様にしても、しなくても、私の想いが汚れてしまったような気がして、心が苦しいのです。」
(ひょっとして、マリンダは・・・マジ!?)
「えーと、率直に聞きますけど、マリンダさんは俺のことが好き?」
「はい。お慕いしております。」
真っ直ぐ見つめてくれた。
「やっぱり、魔法の力がすごいから?」
「いえ、天賦の才能をお持ちなのは勿論すごいことです。ですが、自慢されることも無く、次々と新たな魔法を生み出されています。他の勇者様のことも常に気に掛けておられますし、ミレーヌや町の皆のことにも心配りをされています。私はそんなタケルさまのことが・・・」
タケルは照れと嬉しさが交じり合って、マリンダを見ることが出来なかった。
後ろのシルバーにもたれかかって、星空を見上げる。
(ちゃんと見てくれてるんだ、上司に褒められるより1000倍うれしい)
(しかし、わずかな理性を失わないようにしないと・・・シルバー助けてね)
「マリンダさんもシルバーに寄りかかってごらん。気持ち良いよ」
マリンダはタケルと同じように星空を見上げた。
「マリンダさんは気にする必要ないです。ブラックモアが何を言おうと、心の中の想いが純粋であれば、汚れるようなことはありませんからね。」
「・・・はい。ありがとうございます。」
勇気を振り絞って、隣のマリンダの手を握る。
マリンダも握り返してくれた。
「でも、俺はずっとこの世界にいるわけではないし、勇者の役割でこの世界に来ているだけだから。1年ぐらいで居なくなる。」
「はい、承知しています。それでも・・・」
「それでも?」
「私の心の中の想いは変わりません。この世界に居ても居なくても。」
「・・・ありがとう。」
マリンダはさっきより強く手を握り返している。
(これ以上は・・・)
邪念が膨れ上がるタケルの背もたれが突然元の位置に戻った。
シルバーは急に起き上がって伸びをしている。
タケル達は無理やり起こされた。
(お開きってことね、了解 シルバー。)
マリンダを見つめて、それ以上は何もいわずに部屋へ戻ることにした。
ベッドに入って思い起こす。
(まだ、ドキドキしてる。高校生よりプラトニック)
(ブラックモア、オズボーン・・・これからも色々あるだろうな)
悶々とした気持ちを抱えたまま、眠りについた。
夕食会が終わった後、タケルは買ったばかりの革の敷物とリュックを持って、空き地のシルバーへ向かった。
念のため、井戸によって手作り歯ブラシで歯を磨き、口をゆすぐ。
(あくまでも、念のため)
シルバーはいつもの木の下で、丸くなっていたがタケルに気がついて座りなおした。
いつものように首にハグをする。
顎の下の毛が伸びていてフワフワしている。
「今日はまた、クッションになっておくれ。」
そういって、シルバーに横になるように促した。
シルバーはタケルの言うことが完全に理解できる。
タケルはそう信じている。
神に言葉が届くように、シルバーにも届いている。
寝そべったシルバーの横に毛皮を敷いて、聖教石のランプに火をともした。
真っ暗だった空き地に緩やかな光が広がる。
マリンダを待つ間にリュックから加工前の聖教石をいくつか取り出した。
3cmぐらいの長さのものを二つ選んで、1つずつに神の祈りを捧げた。
(風の神 ウィン様 この石に風の力をお与えください)
(細く、石をもうがつ風の力が必要です)
頭の中で、拳(コブシ)と風で砕ける岩のイメージを描いた。
目をつぶって10秒ほど祈りを続ける。
ランプにかざすと、石は乳白色に変わっている。
手応えを感じ、出来栄えに満足してリュックにしまった。
(女性と屋外で二人っきりになるのはいつ以来だろう? 大学時代?)
緊張しながら、ランプの火を見つめる。
(グレン様、いつもありがとうございます。)
(少し炎の色を強く白くしてください)
ランプの明るさが増し、歩いてくるマリンダのシルエットが浮かび上がった。
改めて見ても、マリンダは細身でスタイルが良い。
あの美貌でこのスタイル、現世なら間違いなくモテモテだろう。
(この世界の美的感覚っておんなじかな?)
「遅くなりました、タケル様」
「こちらこそ、こんなところに呼び出して申し訳ない。座ってください」
毛皮をポンポンとたたいて、タケルの横へ座るように促した。
素直に座り両足を伸ばす。
少しの間、ランプが当たるマリンダの顔を見つめていたが、いつものようには目を合わせてくれない。
いつまでも見ていられる横顔だが・・・
「何か、心配事があるんですね?」
「心配事ということでは・・・」
「じゃあ、悩み事ですか?」
「どちらかというと。・・・」
「話してみませんか?」
「お話すべきかどうか・・・」
「それ自体が悩み事なんですね。じゃあ、こうしましょう。勇者として命令しますので、包み隠さず、私に話してください。」
「・・・承知しました。実はブラックモアから、タケル様をムーアにお連れするように協力しろと言われております。」
「具体的には何をしろと?」
「ムーアの良さを伝えて説得するように。それでダメなら・・・」
「ダメなら?」
「誘惑しろと・・・。」
「なるほど。ブラックモアさんはオズボーン側の人間ってことですか・・・
しかし、今更誘惑する必要も無いと思いますけどね。」
「それは、どう言う意味でしょうか?」
マリンダがようやくタケルを見てくれた。
「だって、俺はマリンダさんのことが大好きですから、誘惑する必要は無いってことですよ。」
緊張で少し引きつった笑顔をマリンダに向ける。
「だからと言ってムーアに移るかどうかは別の問題ですけどね。私も多少のプライドは持ってますから、操られるのが好きでは無いので。」
「・・・、ムーア行きについては、そのように仰ると思っておりました。タケル様はご自身の思うとおりにされるべきだと思っております。ですが・・・」
「・・・ですが?」
「・・、この話をタケル様にしても、しなくても、私の想いが汚れてしまったような気がして、心が苦しいのです。」
(ひょっとして、マリンダは・・・マジ!?)
「えーと、率直に聞きますけど、マリンダさんは俺のことが好き?」
「はい。お慕いしております。」
真っ直ぐ見つめてくれた。
「やっぱり、魔法の力がすごいから?」
「いえ、天賦の才能をお持ちなのは勿論すごいことです。ですが、自慢されることも無く、次々と新たな魔法を生み出されています。他の勇者様のことも常に気に掛けておられますし、ミレーヌや町の皆のことにも心配りをされています。私はそんなタケルさまのことが・・・」
タケルは照れと嬉しさが交じり合って、マリンダを見ることが出来なかった。
後ろのシルバーにもたれかかって、星空を見上げる。
(ちゃんと見てくれてるんだ、上司に褒められるより1000倍うれしい)
(しかし、わずかな理性を失わないようにしないと・・・シルバー助けてね)
「マリンダさんもシルバーに寄りかかってごらん。気持ち良いよ」
マリンダはタケルと同じように星空を見上げた。
「マリンダさんは気にする必要ないです。ブラックモアが何を言おうと、心の中の想いが純粋であれば、汚れるようなことはありませんからね。」
「・・・はい。ありがとうございます。」
勇気を振り絞って、隣のマリンダの手を握る。
マリンダも握り返してくれた。
「でも、俺はずっとこの世界にいるわけではないし、勇者の役割でこの世界に来ているだけだから。1年ぐらいで居なくなる。」
「はい、承知しています。それでも・・・」
「それでも?」
「私の心の中の想いは変わりません。この世界に居ても居なくても。」
「・・・ありがとう。」
マリンダはさっきより強く手を握り返している。
(これ以上は・・・)
邪念が膨れ上がるタケルの背もたれが突然元の位置に戻った。
シルバーは急に起き上がって伸びをしている。
タケル達は無理やり起こされた。
(お開きってことね、了解 シルバー。)
マリンダを見つめて、それ以上は何もいわずに部屋へ戻ることにした。
ベッドに入って思い起こす。
(まだ、ドキドキしてる。高校生よりプラトニック)
(ブラックモア、オズボーン・・・これからも色々あるだろうな)
悶々とした気持ちを抱えたまま、眠りについた。
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