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勇者候補たちの想い
72.ボルク枢機卿
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■皇都大教会 枢機卿の部屋
~第6次派遣3日目~
枢機卿の部屋は石造りの階段を上がった3階にあった。
部屋の中は突き当たりに大きなガラス窓が2枚あり、司教の部屋より明るくて広い。
学校の教室を二つあわせたぐらいの広さだろう。
勧められた4人掛けのソファーも大きな大理石のテーブルを四方から囲む大きな応接コーナーだった。
奥の大きな机から、リーブスより少し若く見える男がソファーに歩いてくる。
「猊下、こちらがスタートスよりお見えになった勇者様方です」
「ようこそ、勇者のみなさん。枢機卿のボルクと申します」
「はじめまして、ボルクさん。私はタケル、こちらはアキラさん、そして教会でお世話になっているマリンダさんです」
ボルクは笑顔で3人を見たが、マリンダを見る目は鋭かった。
マリンダは司教に会ってから、一言も口を利いていない。
「ところで、サイオン殿はあちらで元気にしておりますか?」
「ええ、お元気です。私達には良くして下さっています」
「そうですか、お戻りになったらよろしくお伝えください。サイオン殿は私達の兄弟子に当たる人物ですので」
(枢機卿も、中途入信組みなのか?)
「ところで、勇者様は魔法の上達が大変早いようですが、誰の指導を受けられているのですか? そこのマリンダでは教えるのが難しいレベルまで使いこなしていると伺いましたが」
「基本的なことは、マリンダさんから伺いました。後は・・・神の助けですね。神様は皆さん、良くして下さいます」
「・・・良くして下さる・・ですか? ブヮッハッハ!! これは面白い! 中々、言えるセリフでは無いですな。 無論、勇者ならではの特権なのかもしれませんがねぇ」
(随分とフランクな人だな)
「勇者様が言う神の助けがどうやって得られるかを、この司教などは寝ずに考えるタイプなので、尚更愉快です」
「猊下、私を引き合いに出すのはおやめください」
「すまん、すまん、いやぁ、勇者様はサイオン殿と似たところがおありのようですね。彼も『魔法は理屈じゃない、神にどのように愛されるかだ』とよく言っていました」
「そうなんですか?」
(おれ達は西條さんのいう事を受け入れてこの国へ来ているからな)
「ですが、『神に愛される』というのが、やはり最も大事なのでしょう。私もタケル殿の魔法力をお伺いして、我々とは次元の違うお力に唖然としておりますから」
「猊下、タケル様は転移魔法もお使いになれるそうです」
「 !!・・・、さすがにそれは・・・、事実でしょうか?」
「ええ、使えます。今回もムーアまでは転移で移動してから、皇都へ来ていますので」
(ポータブル転移ポイントは内緒にしておこう)
「では、癒しの魔法も・・・」
「はい、一度しか使っていませんが、使えました」
「・・・しかし、そのように魔法を色々使われて、お体は大丈夫なのですか?」
「ええ、大丈夫ですよ。聖教石の力も借りていますから」
「なるほど、失礼ですが聖教石を見せていただいても?」
(聖教石を誤解したか、だがその方が良いかも)
タケルは胸元からペンダントを取り出した。
「!」
「!」
「!」
マリンダも含めて、聖教石を見た教会側の3人が絶句している。
タケルも見るたびに色が変化しているとは思っていた。
今は前よりも透明感が失われた赤だが、輝きは増していると思う。
「まさか、黄金化まで進んでいるとは・・・」
「黄金化?」
「ええ、聖教石が魔法の力で色が変わることはご存知でしょう。その最終段階は黄金色(こがねいろ)に変化します。この石は既に赤の中に黄金の結晶が混じっているようにお見受けします」
タケルも手にとって光にかざすと、確かに金色の細かい粒が赤い中に浮かんでいる。
「教会の中で、黄金色の聖教石を持つのは、私と教皇様の二人だけです。赤い石に限っても10名程度ですから・・・」
「タケル様、残念ですが教会では既に魔法については教えることが出来ないかもしれませんね」
(枢機卿ですらそうなのか)
「ですが、個人的にはご指導できると思います」
「個人的に? ですか?」
「この世界の魔法は、師匠から弟子に受け継がれるものですから、誰にもでもお教えする仕組みにはなっていません。私にも、司教のリーブスにもそれぞれ内緒の魔法があります。そうですよね、リーブスさん?」
「ええ、私もそのつもりだったのですが・・・」
「?」
「タケル様は魔法を創造する力もお強いようで、私の固有魔法を言い当てたと言いますか、予想されてしまいました・・・」
「・・・ほう。更に興味深いですね。・・・ならば、こうしましょう。もし、タケル様が私の固有魔法を言い当てられたら、その魔法を伝授することにしましょう」
(この人はずっと楽しんでるな)
(光魔法で固有の魔法・・・?)
「今日でなくても結構ですから、思いついたらいつでもお越しください。転移の間はご自由にお使いいただいて結構ですので」
「判りました、少し考えさせてください。他に幾つかお願いがあるのですが?」
「なんでしょうか?」
「一つ目は私達の身分証みたいなものを枢機卿のお名前で頂けないでしょうか?」
タケルはチタの町での出来事を枢機卿に説明した。
「ご迷惑をお掛けしたようですね。わかりました、私の名前で発行いたしましょう」
「ありがとうございます、もう一つは『土の魔法』について、教えてくれる方がいれば紹介して欲しいのです」
「それはまた、興味深い。南の大司教が一番詳しいのですが、今は紹介できる状況ではないので・・・、しばらくお時間をください」
「わかりました、最後に・・・」
タケルは西方大教会から誘われていることとスタートスの為に行きたくないことを枢機卿に話した。
「ハッハッハ! さすが、オズボーンさんですね。中々の策士ぶりです。どうするか・・・、 いっそ、形だけムーアに行ってしまうと言うのはどうでしょう?」
「カタチだけ? というのは?」
「ええ、先ほどの証明書には『スタートスの勇者』であることを私が正式に認証しておきます。今後教会内でも、その名称で統一させることにいたしましょう」
「ですから、オズボーンには『ムーアに移る』とだけ言えば良いのです。転移を使えば隣の部屋みたいなものですから、部屋と食事だけ用意させて行きたい時だけ行けば良いのでは?」
「オズボーンさんの顔を立てろと言うことですか?」
「いえいえ、逆ですよ。彼がどれだけ頑張っても『スタートスの勇者』の名称は覆りませんから、皆さんの活躍は彼の名声向上には役立たないでしょう」
「それに気づけば、皆さんへの興味も薄れるでしょうけどね。彼が用意したものは簡単には取り下げられない。後は皆さんの使いたいときに使える豪華な部屋だと思ってください」
(かなり意地悪な性格だな)
「なるほど、その方法ならスタートスの人たちもがっかりしないかもしれませんね」
(教会士トリオが解放できるならそれでもいいかな?)
~第6次派遣3日目~
枢機卿の部屋は石造りの階段を上がった3階にあった。
部屋の中は突き当たりに大きなガラス窓が2枚あり、司教の部屋より明るくて広い。
学校の教室を二つあわせたぐらいの広さだろう。
勧められた4人掛けのソファーも大きな大理石のテーブルを四方から囲む大きな応接コーナーだった。
奥の大きな机から、リーブスより少し若く見える男がソファーに歩いてくる。
「猊下、こちらがスタートスよりお見えになった勇者様方です」
「ようこそ、勇者のみなさん。枢機卿のボルクと申します」
「はじめまして、ボルクさん。私はタケル、こちらはアキラさん、そして教会でお世話になっているマリンダさんです」
ボルクは笑顔で3人を見たが、マリンダを見る目は鋭かった。
マリンダは司教に会ってから、一言も口を利いていない。
「ところで、サイオン殿はあちらで元気にしておりますか?」
「ええ、お元気です。私達には良くして下さっています」
「そうですか、お戻りになったらよろしくお伝えください。サイオン殿は私達の兄弟子に当たる人物ですので」
(枢機卿も、中途入信組みなのか?)
「ところで、勇者様は魔法の上達が大変早いようですが、誰の指導を受けられているのですか? そこのマリンダでは教えるのが難しいレベルまで使いこなしていると伺いましたが」
「基本的なことは、マリンダさんから伺いました。後は・・・神の助けですね。神様は皆さん、良くして下さいます」
「・・・良くして下さる・・ですか? ブヮッハッハ!! これは面白い! 中々、言えるセリフでは無いですな。 無論、勇者ならではの特権なのかもしれませんがねぇ」
(随分とフランクな人だな)
「勇者様が言う神の助けがどうやって得られるかを、この司教などは寝ずに考えるタイプなので、尚更愉快です」
「猊下、私を引き合いに出すのはおやめください」
「すまん、すまん、いやぁ、勇者様はサイオン殿と似たところがおありのようですね。彼も『魔法は理屈じゃない、神にどのように愛されるかだ』とよく言っていました」
「そうなんですか?」
(おれ達は西條さんのいう事を受け入れてこの国へ来ているからな)
「ですが、『神に愛される』というのが、やはり最も大事なのでしょう。私もタケル殿の魔法力をお伺いして、我々とは次元の違うお力に唖然としておりますから」
「猊下、タケル様は転移魔法もお使いになれるそうです」
「 !!・・・、さすがにそれは・・・、事実でしょうか?」
「ええ、使えます。今回もムーアまでは転移で移動してから、皇都へ来ていますので」
(ポータブル転移ポイントは内緒にしておこう)
「では、癒しの魔法も・・・」
「はい、一度しか使っていませんが、使えました」
「・・・しかし、そのように魔法を色々使われて、お体は大丈夫なのですか?」
「ええ、大丈夫ですよ。聖教石の力も借りていますから」
「なるほど、失礼ですが聖教石を見せていただいても?」
(聖教石を誤解したか、だがその方が良いかも)
タケルは胸元からペンダントを取り出した。
「!」
「!」
「!」
マリンダも含めて、聖教石を見た教会側の3人が絶句している。
タケルも見るたびに色が変化しているとは思っていた。
今は前よりも透明感が失われた赤だが、輝きは増していると思う。
「まさか、黄金化まで進んでいるとは・・・」
「黄金化?」
「ええ、聖教石が魔法の力で色が変わることはご存知でしょう。その最終段階は黄金色(こがねいろ)に変化します。この石は既に赤の中に黄金の結晶が混じっているようにお見受けします」
タケルも手にとって光にかざすと、確かに金色の細かい粒が赤い中に浮かんでいる。
「教会の中で、黄金色の聖教石を持つのは、私と教皇様の二人だけです。赤い石に限っても10名程度ですから・・・」
「タケル様、残念ですが教会では既に魔法については教えることが出来ないかもしれませんね」
(枢機卿ですらそうなのか)
「ですが、個人的にはご指導できると思います」
「個人的に? ですか?」
「この世界の魔法は、師匠から弟子に受け継がれるものですから、誰にもでもお教えする仕組みにはなっていません。私にも、司教のリーブスにもそれぞれ内緒の魔法があります。そうですよね、リーブスさん?」
「ええ、私もそのつもりだったのですが・・・」
「?」
「タケル様は魔法を創造する力もお強いようで、私の固有魔法を言い当てたと言いますか、予想されてしまいました・・・」
「・・・ほう。更に興味深いですね。・・・ならば、こうしましょう。もし、タケル様が私の固有魔法を言い当てられたら、その魔法を伝授することにしましょう」
(この人はずっと楽しんでるな)
(光魔法で固有の魔法・・・?)
「今日でなくても結構ですから、思いついたらいつでもお越しください。転移の間はご自由にお使いいただいて結構ですので」
「判りました、少し考えさせてください。他に幾つかお願いがあるのですが?」
「なんでしょうか?」
「一つ目は私達の身分証みたいなものを枢機卿のお名前で頂けないでしょうか?」
タケルはチタの町での出来事を枢機卿に説明した。
「ご迷惑をお掛けしたようですね。わかりました、私の名前で発行いたしましょう」
「ありがとうございます、もう一つは『土の魔法』について、教えてくれる方がいれば紹介して欲しいのです」
「それはまた、興味深い。南の大司教が一番詳しいのですが、今は紹介できる状況ではないので・・・、しばらくお時間をください」
「わかりました、最後に・・・」
タケルは西方大教会から誘われていることとスタートスの為に行きたくないことを枢機卿に話した。
「ハッハッハ! さすが、オズボーンさんですね。中々の策士ぶりです。どうするか・・・、 いっそ、形だけムーアに行ってしまうと言うのはどうでしょう?」
「カタチだけ? というのは?」
「ええ、先ほどの証明書には『スタートスの勇者』であることを私が正式に認証しておきます。今後教会内でも、その名称で統一させることにいたしましょう」
「ですから、オズボーンには『ムーアに移る』とだけ言えば良いのです。転移を使えば隣の部屋みたいなものですから、部屋と食事だけ用意させて行きたい時だけ行けば良いのでは?」
「オズボーンさんの顔を立てろと言うことですか?」
「いえいえ、逆ですよ。彼がどれだけ頑張っても『スタートスの勇者』の名称は覆りませんから、皆さんの活躍は彼の名声向上には役立たないでしょう」
「それに気づけば、皆さんへの興味も薄れるでしょうけどね。彼が用意したものは簡単には取り下げられない。後は皆さんの使いたいときに使える豪華な部屋だと思ってください」
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