それ行け!! 派遣勇者(候補)。33歳フリーターは魔法も恋も超一流?

初老の妄想

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派遣勇者の進む道

152.異なる種

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■風の谷 
 ~第13次派遣3日目~

 教会魔法士とリーシャの対立で不愉快な気持ちを抱えたままタケル達はレンブラントが用意してくれた倉庫に向かった。

「タケルさん、獣人の里に持って行きたいものを店で見つけて買って来たんですよ」
「何を買ったの?」

 コーヘイは何やら得意げに麻袋を持ち上げて見せている。

「人参の種と芋の苗です。野菜を売っている店で聞いたら、裏通りにある農具を売っている店を紹介してくれたんで行ってきました」
「そうか!それは良いね。獣人の村も自分達で野菜が育てられれば、生活が豊かになるよね」
「後は耕す道具なんですが・・・」
「OK、それはレンブラントさんに相談してみよう。大きな鍬とか鎌とかもいるのかもしれないな」

 外の魔獣も減ったから、密林を切り開いて開墾することも出来るだろう。レンブラントは商会に居たが、タケルに倉庫の鍵渡すと一緒に倉庫まで付き添って来てくれた。

「ここには鍵をかけておきます。鍵は私とタケル様しか持っておりませんから、安心してください。それと、注文いただいた大きな鍋も適当な物が見つかりましたので、とりあえず3個ご用意しております」
「いつもありがとうございます。次回で良いのですが畑を耕すための鍬のようなものを10本ほど用意してもらえますか?」
「承知しました・・・、それで塩の方ですが、いつ頃になりそうでしょうか?少しでも良いので、早めにいただけるとありがたいのです」
「そうですねぇ、本格的に生産できるのはいつになるかわかりませんが、出来たものから順次持ってきますよ」
「ありがとうございます。ぜひ、よろしくお願いします」

 南方州の騒乱で塩不足が深刻になって来ているようだった。

「じゃあ、私たちはここから魔法でいなくなりますので、レンブラントさんは外から鍵を掛けてもらっていいですか?」
「魔法で・・・、わかりました。おっしゃる通りにいたしましょう」

 レンブラントは怪訝な表情を浮かべたが、疑問を胸に閉まって扉を閉めて外に出て行った。
 倉庫は20畳程度の狭い場所だった。タケルが頼んでいた鍋と裁縫の道具等が木箱に入れて壁際に置いてある。細々としたものは全て鍋の中に入れて男三人が一つずつ持ち上げたが、かろうじて運べるぐらいの重さだった。

 荷物とみんなの周りに光聖教石(転移用)を5つ地面の中に埋め込んでスタートスの泉まで転移した。神殿に荷物を持って入ろうとしたときに、ヒメが空中に突然現れた。

「な、なんだ!」
「ま、まあ!?」

 リーシャとマリンダが驚いて声を上げている。

「二人は初めてだね。水の精霊のヒメだ。俺達の旅を助けてくれるんだよ」
「水の精霊・・・」
「何故、服を着ていないのでしょうか?」

 マリンダが疑問に思ったのも当然だ、タケルも前から気になっていた。

「ヒメ、なんで服を着ていないの?」
 -服? そのようなものは私には必要ありませんから。
「ところで、風の精霊ブーンはマリンダには見えなかったのに、ヒメはみんなに見えるんだね?」
 -ええ、私はタケルが旅に連れて行く人には見えるはずです。
「そうなんだね。この二人も獣人の村まで一緒に行きたいんだけど、良いかな?」
 -もちろん構いません。全てあなたが決める事ですから。

 男3人が鍋と裁縫道具を、女3人が袋に入った食材を大量に持って神殿の中に入ると扉が勝手に閉まった。ヒメはタケルの頭上辺りで浮いていたが、いつものようにタケルに抱きつこうとしたので慌てて手でヒメの肩を抑えた。

「何とか抱きつかずに連れて行ってほしいんだけど!?」
 -なぜですか?できるだけ触れている方があなたの望み叶いやすいのに?
「まあ、いろいろあるんですよ。お願いします」
 マリンダは驚きと怒りが混ざった表情で俺とヒメのやり取りを見ていた。エルフの次は精霊にやきもちを焼いている。

 -そうですか、判りました。もう外に出ても大丈夫ですよ。
「ありがとう、ヒメ」

 アキラさんが扉を開くとそこはいつもの密林の中だった。

「これは、一体どうなっているのだ?タケルの魔法とはまた違うのか?」
「どうなっているんだろうね・・・、神殿が空を飛ぶわけではないと思うんだよね。おそらく、神殿がこことスタートスの泉の両方に存在しているんだと思う」
「それなら何故、扉を開けると違うところなのだ?」
「それは・・・、神の思し召しだよ」
「?」

 それはタケルにもわかるはずが無かった。神の使いが力を貸してくれて、結界の外と行き来が出来るようになった。理屈では無く事実としてタケルも受け入れているだけなのだから。

 重い荷物を神殿前の転移ポイントに移して6人で獣人集会所前に転移すると、今日も長老達が地面に座って待っていた。

「おお、お戻りいただけましたか!?」
「ええ、約束ですからね。あのぉ、ここで待つのは無駄ですよ。集会所の中で待ってた方が良いんじゃないですか?」
「そうはいかんのです。タケル様達が戻るまではここでお待ちするのは村の総意です」
「そうですか・・・、今日は塩を作る鍋と裁縫道具と布、それから野菜を作る種と苗を持ってきました。野菜の作り方はコーヘイとマユミが説明しますから、だれか話の分かりそうな方をつけてください。私は人間たちの所に行って裁縫道具を渡してきます」
「わかりました、では、お前たちが野菜の作り方を教えてもらいなさい」

 虎系長老が狼系の獣人2名を呼び寄せてコーヘイ達に同行させた。獣人の村では野菜は天然の芋やキノコ、海藻類を食べていて、畑を作って栽培をしていなかった。栽培するには塩気の無い内陸に行かないといけないのだが、今までは魔獣が沢山いたから、密林の近くで農作業をするのが難しかったのだ。

 農作業チームは二人に任せて、タケルは裁縫道具を4人で手に持って、リーシャ達と村人の住んでいる集落に向かった。

「ここは、家も傷んでいるところが多いのだな。森の里もそうだが・・・」
「ああ、やはり人の世界と切り離されると道具が不足してる。不自由しているのはエルフの里と同じだけど、ここには鍛冶職人も居ないからもっと大変だったんだよ。それに・・・」

 タケル達が村人の住んでいるエリアまで行くと、小屋の前で魚を開いて干物にしていた女性が顔を上げて小屋の中に声を掛けた。

「サムス! タケル様が来てくれたよ!」

 -オォーー!

 タケルの名前が聞えたからか、いくつかの小屋から歓声があがり、サムスだけでなくぞろぞろと大勢の人が出てきた。

「サムスさん、漁の調子はどうですか?」
「ありがとうございます。腹いっぱい食べるだけの魚が毎日獲れています」
「そうですか、それは良かった。今日は皆さんにもう一つ仕事を持ってきました。誰か針仕事が得意な人が居ないでしょうか?」
「針仕事? それは何でしょうか?」

 え!? そこからだったのか・・・。
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