それ行け!! 派遣勇者(候補)。33歳フリーターは魔法も恋も超一流?

初老の妄想

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魔竜とは

175.教皇の役割

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■皇都セントレア
 ~第17次派遣一日目~

「それはもちろん、この世界の人々が幸せに生きていけることが私の願いです」
「だったら争いは・・・」

 教皇はタケルが言い掛けた言葉を最後まで言わせなかった。

「争いは無い方が良い・・・、その通りでしょう。ですが、神が争いを求めて居る訳ではありません。争いを選んだのは我々人間の側です。間違った道を選んでしまうのも人の常ですから、神はそれを咎めることも争いをとめることもしないのです。そして、私は神の声を皆に伝える教皇です。私個人で争いが無い方が良いと考えても、神の声で無い以上は私が教会を動かして、争いを止めることはできないのですよ」
「そんな! それでは教皇と言うのは何も考えずにただ神の声を伝えるのが役割だとでもいうのですか!?」

 -そんな伝言板みたいな役割が国のトップで良い訳が無い。

「・・・サイオンからあなた達が居る世界の事を聞きました。あなた達の世界では人間が国のあり方を決めていると。そして、そのため間違いも多いが、人の世は発展・・・科学というのでしょうか? 便利で豊かになっている・・・、そういう世界なのですよね?」
「そうですね、決め方は国によって違いますけど、人が決めていると言うのはその通りです」

 民主主義ばかりではないが、独裁国家でも独裁者が決めていると言う点では人が国のあり方を決めているのは間違いないだろう。

「そこが、このドリーミアとは全く異なるのですよ。このドリーミアでは神が国のあり方を我々に教えてくれました。そして、今まではその通りに暮らしてきたのです。ですが、どうやら神は私たちにも自ら考える道を与えたのだと思います。それが、幼い勇者の死であり、あなた方の召喚、そして、それをきっかけとした今回の争いは西方州も南方州もそれぞれの司教が自らの判断で行動を起こした結果です」
「ですから、それを教皇の立場で止められるんじゃないのでしょうか? 司教達が自らの判断で行動を起こしたのなら、教皇も自らの判断で行動を起こすべきなのでは?」

 タケルは会話が堂々巡りになっているような気がして苛立っていた。

「教皇である以上それは出来ません。私個人にどんな考えがあったとしても、教皇の立場として今回の件に介入することはありません。それが神の思し召しだからです」

 -結局は神が止めろと言っていないから止めない・・・、そこに行きつくってことだな。

「だったら、これから先も争いは続くし、それを止めるつもりは無い・・・、そういう事なのですね」
「争いが続くかは我々人間次第です。自ら争いをやめるかもしれませんが、そうならなければ、あなたのおっしゃる通りですね。私個人の考えでそれを止めるつもりはありません」

「そうですか、大変残念ですが考えが変わらないなら、これ以上は何も言いません。ですが、もう一つ別のお話があります」
「何でしょうか? 何でもおっしゃってください」

 教皇は口元へ笑みを浮かべて、タケルを静かに見つめている。

 -考えは変えないが、話は聞いてくれるのか・・・

「南の副司教は新たな神を見つけて、その神の力で死んだ勇者を呼び出そうとしているようです。死者を復活?させるようなことをアシーネ様はお許しになるのでしょうか?」
「新しい神・・・、それを神と呼ぶかどうかも人が決める事ですが、アシーネ様はどのような神であれ、人がそれを神と呼ぶのであればお認めになるでしょう。死者の時を戻す神・・・、私にはその神の声は聞こえませんから、私は神とは思っていませんけれども」

「私たちの世界では死者を復活させるような考えは悪しきものとされています。それは自然の理に反するからです。この世界でもそれは同じなのではないでしょうか? つまり、その考え自体が魔竜につながるのでは?」
「なるほど・・・、あなたはそのように魔竜を考えたのですか。それは、そうかもしれませんし、まったく異なるかもしれません。魔竜の復活は近い、ですが今はまだその時では無い。魔竜が何かは復活するまでは私にもわかりません」

 教皇は表情を変えずに淡々と話をする。魔竜が何か判らないと言う返事はいつ聞いても同じだった。そして、復活するその時にしか判らないと・・・。

「では、その死者を復活させる計画も止める必要は無いと? そういう事なのですか?」
「それについて私には神の声が聞こえていません。ですが、あなたにとってそれが悪しきものなのであれば、止めると言う事も勇者の選択肢なのでしょう。教会内の争いも同じです。勇者はその心のままに・・・、思うままにされることを神が望まれています」

 -何!? 結局は自分のしたいようにしろってこと!?

「では、私が勇者の復活や教会内の争いを止めたいと思えば、教皇は協力してくれるのですか?」
「もちろん協力します。ですが、どうやって争いや勇者の復活を止めるのでしょう?貴方の力や教会の力を使って抑え込むと言うことは、結局それも争いの形が変わるだけではないでしょうか?」
「確かに最初から武力・・・、力を使えばそうなるのでしょうが、話し合えば良いんじゃないでしょうか?」
「確かにその通りですね。ですが、南へ赴いて話をされて司教達の考えは変わったでしょうか?」
「それはどうでしょう・・・、行く前とは変わったと信じたいですけど」
「話をすることは簡単ですが、人の心の奥底を変えるのは簡単ではありません。それぞれの司教は争いを起こすだけの理由があったと信じていますからね」

 あくまでも第三者的な立場でしか物事を語らない教皇とは会話が成立しても、根本の部分が全くかみ合わなかった。それは、国のあり方を人間が決めて行くと言う部分が完全に教皇の頭の中から抜け落ちているからだろう。

 神が全てを決める国ドリーミア、だがその神が決定を人に委ねようとしているのか?
 人に委ねると争いが起こる・・・、神はそれをも望んでいるのか?

 タケルはこの世界にどうかかわって行けば良いかが判らなくなっていた。

 -帰ってみんなと相談してみよう。俺一人で決めるのは無理だ・・・
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