(完)狐の怪

承

　その村の事を聞いたのはある屋敷で行われたパーティーでのことだった。
　そのパーティーは変わった趣向のパーティーだった。誰も彼も摩訶不思議な格好をして参加していた。

　ふと周りを見てみると、先ほどまで周りにいた知り合いが居なくなっていた。場所を移動しながら友人達を探してみたが見当たらなかった。仕方なく隣にいた狐のお面を被った男に話しかけた。

「あの、すみません。お伺いしたい事があるのですが…」
「何でしょう？」

　狐のお面を被った男は面倒そうに話しはじめた。
　私は疑問に思った事を彼に聞いてみた。

「何故、狐のお面を被っているのですか？　確か今回は仮装するだけで良かったと思いますが」
「ああ、これですか…」

　彼は自分が被ったお面を指差しながら言った。私は返事が返ってくるとは思っていなかったので、焦りながら質問をした。

「そ、そうです。もし差し支えなければ、教えて頂けますか？」

　彼は私の質問に驚き、丸い目を限界まで見開いた。そして私を見返してきた。

　男は私にお面の由来を教えてくれた。
　何でもあの狐のお面はこの地にある神社に詣でると貰えるという事だった。もう少し詳しく教えて欲しいと頼むとお面の男は意外そうな声で訪ねてきた。

「どうしてそんなにこの狐のお面の事を聞きたいんだ？」

　私はお面では無く神社の事が知りたいと正直に話した。

「お面では無くこの辺りにある神社に行きたいんですよ。何か知りませんか？」
「神社？」
「そうなんです。この辺りに有名な神社があると聞いてきたんです」
「有名な神社ねえ。……もしかしてこのお面の神社か？」
「多分、そうじゃ無いかと思うんですよ。確かお面の神社もこの辺りにあるんですよね」
「ああ、そうだ。だが有名とはねえ。そんなたいした神社じゃないけどなあ。この辺りの氏神様だし」
「そうなんですか？確かちょっと変わった催事があるって聞いたんですけど」
「そうか？何処にでもある神社だと思うがなあ。まあ、このお面は変わってると思うがね」

　お面の男と話し込んでいると友人達が此方を見ている事に気がついた。だが神社の事を聞きたくて私は友人達の視線を無視する事にした。