月の沙漠の物語〜ある少女の話〜

榊咲

文字の大きさ
6 / 22
①沙漠を行く

⑸オアシスにて3

 ヒロトは食事を終えて、ダイが来るのを待っていました。食後のお茶を飲んでいると、ダイと沙漠で助けた男がヒロトのテントに入ってきた。

「ヒロト、ダイだ。今いいか?」
「ああ、入ってくれ」
「ヒロト、助けた男を連れてきたが、ちょっといいか」
「どうしたんだ?ダイ」

 ダイは男をその場に残して、ヒロトに話しかけた。小声で男には聞こえないように注意した。

「(ヒロト、あの男だが、ちょっと厄介ごとに巻き込まれるかもしれない。どうする?)」
「(厄介ごとに?何か喋ったのか?)」
「(いや、今のところ何も喋っていない)」
「(そうか。……ダイ、一度話してみよう)」
「(……わかった。ヒロトに従う。だが、危険だと思ったら、……いいか?)」
「(ああ、頼む)」

 ヒロトとダイの話し合いは1分もかからずに終わり、男の話を聞く事になった。

「お待たせした。俺はヒロトと言う。あんたはなんて言うんだ?」
「助けて頂きありがとうございます。えぇと、僕は……あれ、僕は誰だ?」
「おい、何ふざけてんだ。ヒロトの質問に答えろ!」

「すみません。お答えしたいのですが、その……覚えていません」
「はぁ~、覚えてない?どう言う事だ」
「僕は誰なんでしょう?……僕は、どこから来たんだろう?……思い出せない……」

「ダイ、この男はどんなふうにいたんだ?」
「はぁ、沙漠に倒れてましたよ。ヒロト」
「ラクダはいなかったのか?」

「いなかったですよ。この男だけでした」
「と言うことは、馬車か何かで連れてこられたのか?」
「多分、そうでしょう。ヒロト、どうしますか?」

「う~ん、ここに放り出すわけにもいかんだろう」
「まあ、そうですね。じゃぁ、街まで連れて行きますか?」
「それが、妥当だろうな。……面倒だが、仕方ないな。ダイ、頼めるか?」
「ああ、ヒロト。あんたに頼まれちゃぁ、断れないぜ」

 ヒロトとダイは男が記憶が欠落していると思った。しかし、その理由でここに放り出すのは、人道的にどうかと思い、今商隊キャラバンが向かっている街まで連れて行く事にした。それを男に伝えようとした。

「よろしくな。……おい、あんた、何も覚えてないのか?」
「……そのようです。思い出せない……」
「そうか。モノは相談なんだが、あんたをここに残すのも気が引ける。それで、俺たちが向かう街まで連れて行くが、それでいいか?」

「僕は構いません。お願いします」
「そうか。……う~ん、名前がないと困るな~……、ダイ、どうする?」
「ちょっと、オレに降らないでくれよ!」

「困ったな~。おい、あんた。……あんたはどう呼ばれたい?」
「えぇ、僕ですか?……じゃぁ、カイでお願いします」
「なんでカイなんだ?」

「えぇと、なんとなく、こう呼ばれてたみたいだと思ったんです」
「そうか。じゃぁ、あんたは今からカイだ。呼ばれたら返事をしてくれよ」
「はい。わかりました。お願いします」

「おい、ダイ。あとは任せたぜ!」
「へいへい、わかったよ。ヒロト」
「じゃぁカイ。このダイについて行ってくれ」

「はい。ダイさん、お願いします」
「はぁ。ヒロト、今日はどうするんだ」
「ああ、今日は休ませてやれ」

「わかった。じゃぁカイ。着いて来てくれ」
「はい、ダイさん」
「ああ、カイ。オレの事は呼び捨てでいいぞ。なんてつけられたら腕に鳥肌がたっちまう。これからはって呼べよ」

「はい。わかりました。ダイ」
「おお、その調子だ。じゃぁ、行くぞ、カイ」

 ダイはカイを連れて、ヒロトのテントから出て、カイを最初にいたテントまで連れてきました。そして、明日からの事を話し始めました。

「カイ。明日の朝、みんなに紹介するぜ。まあ、仕事はおいおいだな。……う~ん、今日はこのまま休んでくれ」
「わかりました。ダイ」
「あ、そういえば、カイは外国語が読めるのか?……それも覚えてないか……」

「あの、どんなモノですか?」
「ああ、あんたの身分証らしきものが、ポケットに入ってたんだ。見てみてくれ」

 カイはダイに言われた通り、ポケットを探し始めます。そして胸のところにある、名刺サイズの長方形の紙が出てきました。それをみたカイは、流暢に読み始めました。
 ダイはそれをみて、やはり上流階級の者だと思い、これはヒロトに報告しなければいけないと思いました。

「……カイ、それ読めるんだな。なんて書いてあるんだ?」
「え、僕読んでましたか?」
「ああ、スラスラと淀みなくな」

「あれ、そうか……。僕は読めてるんだ……。でも何故……。全然、意味がわからない……。ダイ、すみません。読めるようですが、意味がわかりません……」
「へぇ、意味がわからない?……と言う事は、あんたの事はやっぱりわからないって事か……」

 ダイはこれでカイの事が分かると思って、期待してたのに、カイ自身が意味がわからないと言うので、ガックリしてしまいました。

「はぁ、そうだよな~。カイは記憶がないって言ってたものな~」
「ダイ、本当にすみません」
「いや、カイは悪くないぞ。まあ、今は休め」

 ダイはカイに休むように言ってヒロトのテントの方に歩いて行きます。ヒロトにカイが身分証の様なモノが読める事を話すために歩き始めました。
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

令嬢失格な私なので

あんど もあ
ファンタジー
貴族の令息令嬢が学ぶ王都学園。 そこのカースト最下位と思われている寮生の中でも、最も令嬢らしからぬディアナ。 しかしその正体は……。

ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
 第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。  言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。  喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。    12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。 ==== ●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。  前作では、二人との出会い~同居を描いています。  順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。  ※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。

私たちの離婚幸福論

桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。 しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。 彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。 信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。 だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。 それは救済か、あるいは—— 真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし