月の沙漠の物語〜ある少女の話〜

榊咲

文字の大きさ
8 / 22
①沙漠を行く

⑺オアシスにて5

 カイがユーリと話してからテントに戻り、30分ほど経った頃にダイが来ました。

「カイ、良く眠れたか?」
「あ、ダイさん。はい、よく眠れました。昨日はありがとうございました」
「ああそうだ。カイを見つけたのは、ヒロトの娘のユーリなんだ」

「え、ユーリさんですか?」
「あれ、カイはユーリに会った事があったか?」
「いえ、ありま………、あのぉ、朝早くに目が覚めてしまって、テントの外に出た時に会いました」

「またあいつは……」
「あの~、テントの外に出てはいけなかったですか?」
「ああいや、カイのことじゃぁないんだ。そのな、ユーリなんだ」

「ユーリさん?」
「ああ、いつも目を離した隙に、出掛けてしまうんだよ。ヒロトが心配するからやめろって言うんだがな~。全然言う事を聞きゃぁしないんだ」

 カイはユーリと話した時の事を思い出して、ユーリが自分にしてきた質問の事を思い出しました。その事をダイに話事にしました。

「あのユーリさんと話した時に感じた事があるんですが………」
「ほぉ、そりゃどんなことだ。教えてくれ」
「その~、ユーリさん、僕に興味があるみたいだったんです」

「う~ん、そうきたか」
「そうなんです。でも僕は自分の事が分かりませんから、その事を言ったら諦めてくれました」
「そうか。カイ、悪かったな。取り敢えず、今から食事だ。行こうか」
「はい。お願いします」

 ダイはカイから聞いた話に頭を抱えそうになりました。確かに昨日、ユーリがカイに興味を持っているような話をしていたのだ。その時にヒロトに話をしておくべきだったと、今更遅いが思ってしまったのです。そんな事を考えていたら食事の配膳を行っている場所に着いていた。

 そこにはヒロトとユーリ親子が揃っていた。ダイとカイは食事を持って、ヒロト達の側に向かった。

「おはよう、ヒロト、ユーリ」
「ああ、ダイ。おはよう。……カイは眠れたか?」
「ダイおじさん、おはよう!」

「ああおはよう、ユーリ」
「おはようございます。ヒロトさん、昨日はありがとうございました。よく眠れました」
「ユーリ。お前、また抜け出したのか?」

「おい。ダイ、何言ってんだ?」
「ヒロト、ユーリは朝早くにテントから外に出てたんだよ」
「はぁ~。ユーリ、どう言う事だ!父さんと約束したよな!」

「えぇ~。ちょっと外に出ただけだよ。お父さん」
「おいおい、ユーリ。カイに声掛けただろう?バレてんだよ!反省しろ」
「えぇ、カイさん喋っちゃったの~」

「ユーリさん、ゴメンね。でも約束を破ったらいけないと思うよ」
「えぇ~、じゃぁないだろう。ユーリ、反省しなさい!外は危ないって言ってるだろうが……」
「ヒロトの言う通りだぞ、ユーリ」

 ユーリは大人3人から責められて、項垂れてしまいました。ユーリだって、ここが沙漠の中にあるオアシスで、野生動物がいて、危ないとわかっているのです。

 それでも、あの清々しい空気を吸い込む感覚を止められないのです。まさか朝、声を掛けたカイがダイに自分と会った事を話してしまうとは思ってもみなかったのです。ユーリは読みがハズレたと思いました。ユーリは懲りずに父親に朝の散歩を頼む事にしました。

「ねぇ、お父さん。……お願いがあるんだけど」
「なんだユーリ。朝外に出る事なら、ダメだぞ。……さぁ、早く食べてしまいなさい。出発の準備をするからな」
「もう、お父さんのケチ!!」

 ユーリが父親に頼み込んでいる様子を見ていたカイが、ダイに話しかけます。

「ダイさん。僕がユーリさんをも見張りましょうか?」
「カイ。やめといた方がいいぞ」
「え、どうしてですか?」

「あのな、ユーリはいつまでも、沙漠を見てるんだよ!」
「そうなんですか?それなら、どこかに行くわけじゃぁ無いんでしょう?」
「いや、その内、出掛けるんだ。それで、カイも見つけたんだよ」

 ダイにこう言われてしまっては、カイもヒロトやユーリに言い出す事が出来ませんでした。
 そうこうしている間に、食事を終えた使用人達が出発の準備を始めていました。ただ、商隊長のヒロトとユーリは、外に出る、出ないで言い合いをしています。それを見てダイがため息を吐きました。

「ハァ。ヒロト、ユーリ、早く食えよ。今食ってんのは、あんた達だけだぜ」

 ヒロトとユーリはダイに言われて周りを見ると、食事をしているのは自分達だけになっているのに気が付きました。慌てて2人は食事を食べました。
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

令嬢失格な私なので

あんど もあ
ファンタジー
貴族の令息令嬢が学ぶ王都学園。 そこのカースト最下位と思われている寮生の中でも、最も令嬢らしからぬディアナ。 しかしその正体は……。

ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
 第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。  言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。  喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。    12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。 ==== ●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。  前作では、二人との出会い~同居を描いています。  順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。  ※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。

私たちの離婚幸福論

桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。 しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。 彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。 信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。 だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。 それは救済か、あるいは—— 真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。