月の沙漠の物語〜ある少女の話〜

榊咲

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②街までの道程

⑸ユーリとセイの勉強1

 ユーリはセイから隣国の言葉を教えて貰える事になり、上機嫌でラクダの世話をしています。食事をする前に父親から話を聞く前から、ユーリは一生懸命に勉強して父親の仕事の手伝いが出来る様になりたいと思っていました。それには、語学力を付ければいいと思っていても、父親に教えて欲しいとお願いしても、『お前にはまだ早い』と言われてしまっていたのです。

 食事を父親とセイと一緒に食べながらユーリはセイの事を観察していました。それを側で見ていた父親のヒロトは、娘がどこか知らない所に行ってしまうのでは無いかと思っていました。その心境のままに、娘のユーリに話しかけました。

「ユーリ、この本を読める様になりなさい」
「え、お父さんこの本って……」
「そう、お前が読みたいと言っていた本だ」

「でも……、お父さん、前はダメだって……」
「お前が勉強に使うなら別にいいさ。そのかわり、投げ出すんじゃぁないぞ!」
「ありがとう。お父さん。私、頑張るね」

 ヒロトがユーリに渡した本はユーリの母が持っていた本で、亡くなるまで大事にしていた本なのです。ユーリは母が亡くなった事が信じられなくて、母親が大切にしていた本をまるで母親の様にいつも一緒に持ち歩いたいた為に、ヒロトがユーリの成長に悪い影響を及ぼすと思い、ユーリから取り上げていた本になるのです。

 ユーリには母からの贈り物だと思っていた本を父親に取り上げられたので、最初は反発もしていたのですが、メイドのオリガから父親の苦悩を分かり易く聞いてからは、それも無くなりました。

「お父さん、この本が読める様になったら、お母さんの事を教えてね」
「ああ、いくらでも教えてやるよ!……セイ、悪いがよろしく頼むな」

「えぇ、ユーリさん、頑張りましょうね」
「はい、セイさん。お願いします」

 ユーリとヒロト、親子の話を食事をしながら、側で聞いていたセイは、突然、話を振られて驚いてしまいました。それでもヒロトとユーリの話から、教材として渡された本が、この親子にとって、とても大切なモノである事がわかりました。

 セイはその事を踏まえて、ユーリに『一緒に頑張ろう』と言うと、ユーリは子どもらしい笑顔で『お願いします』と答えました。

 楽しい食事が終わると、少しの休憩の後に宿泊する為のテント張りが、使用人と護衛隊とで行われました。
 セイもテントを張りを手伝ったり、ユーリと一緒にラクダの世話をしました。テント張りが終わると夕食まで、自由時間になりました。

 ユーリはヒロトから渡された本を持って、セイに近づきます。セイはユーリが近づいて来たのを見て、笑顔で出迎えました。

「セイさん、今日からお願いします」
「僕で本当にいいの?……僕は自分が誰かも分からないんだよ。間違った事を教えるかもしれないよ」
「私はセイさんがいいの。……その、なんでか分からないけど、セイさんを見てると安心するの」

「本当にいいんだね。それにしても、僕を見て安心するなんで、お父さんには言わない方がいいよ」
「ホント、なんでだろう?……セイさんには初めて会うのにね」
「じゃぁ、本を貸して」

「セイさん、読める?」
「まあ、なんとか読めるよ。……それにしても、古い本だね」
「この本はお母さんが持ってたの。だから、絶対に読める様になりたいの」
 
 セイはユーリから受け取った本を見て、ずいぶん古い本だと思いました。ペラペラと本を開いていると、ユーリがポツリと本の持ち主の事を話します。それを聞いて、ユーリがこの本は読みたいと言った事が腑に落ちました。

「そうだったんだね。じゃぁ、頑張ろうね」
「はい、よろしくお願いします」
「じゃぁ、まずはこの本の題名からだね」
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