【完結】ねこの国のサム

榊咲

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〈番外編〉

チビの執着〜その前〜

 チビが知らない内に、サムが《人の国》へ行く事が決まっていたのを知ったのは、ブチが突然帰って来た時だった。最初はブチが帰って来たのが、純粋に嬉しくて、喜んでいた。でも、その後にサムからされた話を聞いて、喜んだのが馬鹿らしくなってしまった。だからブチに聞く事にした。

「ねぇ、ブチ兄ちゃん、サム兄ちゃんが何処かに行っちゃうって、本当?」
「ああ、本当だ。まぁ、俺は前から相談はされてたけどな……。なんだチビ、サムの事、反対なのか?」
「……チビには、話てくれなかった」

 チビはサムがブチには相談していたと聞いて、苛立ちを隠せなくなり、ブチに八つ当たりをしてしまいそうになります。でも、ここでブチに八つ当たりしても、仕方ないよな、とも思いました。そこでブチに聞く事にしました。

「……ブチ兄ちゃん、何でサム兄ちゃんは、チビに話してくれなかったのかな?」
「そうだなぁ、チビがまだまだ小さいから、話しても分からないと思ったんじゃかないか」
「う、う、チビは小さくないもん!!」

「そうかな?俺から見たらチビは十分小さいぞ」
「……そんなの当たり前じゃんか!」
「そう言う事だよ、チビ。じゃぁな、俺は帰るから」

 ブチはチビに自分の意見を言うと修行先に帰って行きました。その背中を見ながらチビは、どうしようもなくイライラする気持ちを抑えられません。誰かにこの気持ちを聞いて貰わなきゃと思いました。そこへニセイが通り掛かりました。

「ねぇ、ニセイ兄ちゃん」
「なんだよ、チビ。……何、怒ってんだよ。可愛い顔が台無しだぜ!」
「ぷん、チビは怒ってないもん……。あのね、サム兄ちゃんが《人の国》に行っちゃうって、知ってた?」

「ああ、そのことか。……まあな。……チビもサムが《人の国》の事を調べてたのは知ってるだろう?」
「それが、なに?どう結びつくの?」
「だ・か・ら・な、《人の国》に行く為に調べてたんだよ!……まぁ、最初は違ってたみたいだけどな……」

 チビはサムが《人の国》の事を調べていた事は知っていましたが、まさか、サム自身が行く為だとは思っていませんでした。いつもは余り仲の良く無いニセイがサムの事が分かるのが、なんだか気に入らなくなりました。

 そしてニセイを睨む様な顔になりました。その時には、チビは怒れるのか、苛つくのか、悲しいのか、分からなくなっていて、イラついた様な、泣きそうになる様な声でニセイに聞きます。

「何で、何で、ニセイ兄ちゃんは、サム兄ちゃんの事がわかるの?」
「そりゃ、オレとサムは双子だからな」
「え、ニセイ兄ちゃん達って、双子なの?」

「なんだよ!俺たちが双子なのが、気に入らないのかよ!」
「ち、違うよ……、だって、ニセイ兄ちゃん達、似てないよ!」
「ああ、それか。そうだな、オレはアゴ母さんに似てるって言われるからな」

 チビは初めて知った衝撃的な事実に、怒りや苛つきも無くなる程、ビックリして目を大きく開け、口も同じ様に大きく開けた顔で、ニセイを見つめました。

「まぁ、そう言う事で、オレはサムの考えが何となく分かるんだわ」
「ふ~ん、でも、分かってたんなら、何でチビに教えてくれなかったのさ」
「そりゃ、サムが言うと思ったからさ。……なんだよ、聞いて無かったのか?」

「今日、ブチ兄ちゃんが帰って来てた時に聞いた」
「ゲェ、ブチ兄ちゃん帰って来てるのかよ!」
「ううん、もう帰ったよ」

「驚かすなよ、チビ。ビックリするじゃないか。オレのガラスのハートが壊れるじゃんか」
「なに言ってるの。ニセイ兄ちゃんはガラスじゃぁなくて、ハガネでしょ!フンだ」
「お前なぁ。サムとオレの扱いが、どうしてそんなに違うんだよ!」

 ニセイはチビの、サムとの対応の違いに気がついていましたが、ここまで対応が違うと、同じ兄妹なのに、どうしてなんだと思ったので、チビに聞いてみました。

「だって、サム兄ちゃんは優しいもん。チビのイヤがる事はしないし」
「おい、オレがいつお前のイヤがる事、したんだよ!」
「え~、自覚がなかったの~!」

「あのなぁ、イヤならイヤっていえよなぁ。……まぁこれから、気を付けるよ……」
「え、そんなに落ち込まないでよ、ニセイ兄ちゃん。……ニセイ兄ちゃんは元気なのがウリなのに…」
「ハァ、まあいいや。なんとか元気になったな。チビ」

「あれ、そういえば……。ニセイ兄ちゃん、ありがとう!」
「礼を言われる様な事はしてねぇよ」

 チビはブチと話していた時の不快感が無くなっている事に気が付きました。ニセイと話す事でサムが《人の国》へ行く事を忘れる事が出来たのだと理解しました。それと同時に、これがニセイの優しさなのだと言うことも、知る事が出来たのでした。

 それからチビがどうしたかと言うと、サムと離れるのが嫌で、サムに付いて回って、アゴ母さんに叱られる事になるのでした。それはまた別の話になります。
 
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