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第5章
第187話 薬草園と妖精
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薬草園は早朝ランニングをしたときに一度見たことがあったから場所はすぐにわかった。寮の東側に位置し、自然豊かな場所だ。広い牧草地と隣り合っていて、白とピンクのメルヘンな牛、メイー牛が中に入って薬草を食べないように柵で区切られている。あちこちに花が咲き乱れ、妖精たちが楽しげに飛び回っていた。
そんな光景を見ていると、さっきまでモヤモヤしていた心がすっきりと洗われ、綺麗になっていく気がする。
(ふふ、肩のところに妖精がきた。可愛い。癒される……)
少し探すと温室の裏のところに二人の姿を見つけた。
「リリー、ベルト、おまたせ」
「お、キルナ、もう補習は終わったのか?」
「ん、ばっちり。今何探してるの? 僕も探すよ」
「遅いよメガネ! 探す薬草はあと三種類。メガネはメルビートとユーカミを探して。僕は温室でペペスを探すから。探し終わったらそっちにいくよ」
どこかな~と二つの薬草を探し回る。結構広い薬草園だから見つけるのに時間がかかるかもしれない、と思ったのだけど、すいすいキラキラと光の中で無邪気に遊ぶ妖精たちが「めるびーとはここ~」「ゆーかみはここ~」と教えてくれてすぐに見つかった。温室に入って二人と合流する。
「もう見つかったの!? やるね! ペペスってどっちだっけ。これかこれ、どっちかだと思うんだけど、似ていて区別がつかないよ」
リリーが指差す方向を見てベルトが言った。
「ああ、こっちだ。葉の裏に毛が生えている方がナム。生えてない方がペペスだ」
「へえ、さすがバカベルト、詳しいね」
「それは褒めてるのか? それにしてもこんなに早く見つかるなんてな。特にユーカミは数が少ないから時間がかかると思ってたのに」
「ふふっ、早く見つかってよかった」
本当は妖精のおかげなんだけど。僕が闇属性だということや妖精が見えるということは内緒にしているから、教えてくれた妖精には悪いけど全部自分で見つけたということにしておこう。
お礼に人差し指に集めた魔力の水を彼らに差し出すと「ん~おいし~」「ぼくも~」「もっとちょうだい~」と妖精たちが寄ってきて順番に飲んでいる。
「うう~ん、いい香りだ。僕このユーカミの香り好き。美味しそうな香りがする」
リリーがうっとりとユーカミの花に鼻を近付けながら言った。
「ああ、確かに甘くていい香りがするよな」
ユーカミは小さな紫の花を咲かせ、その花からはリンゴのような爽やかで甘い香りがする。
「ああ、なんか甘いものが食べたくなってきた。メガネ、何か作って」
「いいよ。早く薬草が集まったから時間もあるし、みんなでお茶しよ。実は僕、二人にちょっと聞きたいことがあって……」
「聞きたいこと? それは気になるな。じゃあゆっくり話が聞けるようにいい茶葉とティーセットを用意しておくよ」
ベルトの準備してくれる茶葉はいつも最高級の美味しいものばかりだから期待できる。
「ありがと。二人の部屋のキッチンじゃ僕また魔力枯渇で倒れちゃうかもしれないし、何か作ってから持ってくね」
「よし、そうと決まればさっさと摘んで帰ろう。さっきまでいい天気だったのに、急に雲行きが怪しくなってきた」
ベルトの言う通り、空がどんより暗くなっている。
「じゃあ、クライスの分も摘んでくよ。用事が終わったらここに来るって言ってたけど、時間がかかってるようだから」
大急ぎで目当ての薬草を採取して僕たちは寮に帰った。
帰ると同時くらいに雨が降ってきて、どんどん雨脚が強くなっていく。ギリギリセーフだったみたいだ。
部屋に戻って、手早くマドレーヌを焼き、薬草と簡単にラッピングしたマドレーヌ3個を、メモと一緒に机に置いた。
クライスへ
早く薬草採取が終わったから、リリーとベルトの部屋でお茶してから帰るね。クライスの分の薬草も摘んでおいたからここに置いておくよ。マドレーヌを作ったからよかったら食べて。
キルナ
ん、これでよし。部屋にはバターとバニラオイルの甘い香りが漂っている。出来立てのマドレーヌはまだ温かい。
でも外は寒そうだ。
雨が降ったら薬草園にいたあの妖精たちはどこにいくのだろう。部屋の中に移動するのかな? それとも天気なんて関係なしで外を飛び回るのかな?
ーー水の妖精。
なんとなくブルーサファイアの髪を靡かせる彼のことが頭に浮かび、少し嫌な気持ちになった。
そんな光景を見ていると、さっきまでモヤモヤしていた心がすっきりと洗われ、綺麗になっていく気がする。
(ふふ、肩のところに妖精がきた。可愛い。癒される……)
少し探すと温室の裏のところに二人の姿を見つけた。
「リリー、ベルト、おまたせ」
「お、キルナ、もう補習は終わったのか?」
「ん、ばっちり。今何探してるの? 僕も探すよ」
「遅いよメガネ! 探す薬草はあと三種類。メガネはメルビートとユーカミを探して。僕は温室でペペスを探すから。探し終わったらそっちにいくよ」
どこかな~と二つの薬草を探し回る。結構広い薬草園だから見つけるのに時間がかかるかもしれない、と思ったのだけど、すいすいキラキラと光の中で無邪気に遊ぶ妖精たちが「めるびーとはここ~」「ゆーかみはここ~」と教えてくれてすぐに見つかった。温室に入って二人と合流する。
「もう見つかったの!? やるね! ペペスってどっちだっけ。これかこれ、どっちかだと思うんだけど、似ていて区別がつかないよ」
リリーが指差す方向を見てベルトが言った。
「ああ、こっちだ。葉の裏に毛が生えている方がナム。生えてない方がペペスだ」
「へえ、さすがバカベルト、詳しいね」
「それは褒めてるのか? それにしてもこんなに早く見つかるなんてな。特にユーカミは数が少ないから時間がかかると思ってたのに」
「ふふっ、早く見つかってよかった」
本当は妖精のおかげなんだけど。僕が闇属性だということや妖精が見えるということは内緒にしているから、教えてくれた妖精には悪いけど全部自分で見つけたということにしておこう。
お礼に人差し指に集めた魔力の水を彼らに差し出すと「ん~おいし~」「ぼくも~」「もっとちょうだい~」と妖精たちが寄ってきて順番に飲んでいる。
「うう~ん、いい香りだ。僕このユーカミの香り好き。美味しそうな香りがする」
リリーがうっとりとユーカミの花に鼻を近付けながら言った。
「ああ、確かに甘くていい香りがするよな」
ユーカミは小さな紫の花を咲かせ、その花からはリンゴのような爽やかで甘い香りがする。
「ああ、なんか甘いものが食べたくなってきた。メガネ、何か作って」
「いいよ。早く薬草が集まったから時間もあるし、みんなでお茶しよ。実は僕、二人にちょっと聞きたいことがあって……」
「聞きたいこと? それは気になるな。じゃあゆっくり話が聞けるようにいい茶葉とティーセットを用意しておくよ」
ベルトの準備してくれる茶葉はいつも最高級の美味しいものばかりだから期待できる。
「ありがと。二人の部屋のキッチンじゃ僕また魔力枯渇で倒れちゃうかもしれないし、何か作ってから持ってくね」
「よし、そうと決まればさっさと摘んで帰ろう。さっきまでいい天気だったのに、急に雲行きが怪しくなってきた」
ベルトの言う通り、空がどんより暗くなっている。
「じゃあ、クライスの分も摘んでくよ。用事が終わったらここに来るって言ってたけど、時間がかかってるようだから」
大急ぎで目当ての薬草を採取して僕たちは寮に帰った。
帰ると同時くらいに雨が降ってきて、どんどん雨脚が強くなっていく。ギリギリセーフだったみたいだ。
部屋に戻って、手早くマドレーヌを焼き、薬草と簡単にラッピングしたマドレーヌ3個を、メモと一緒に机に置いた。
クライスへ
早く薬草採取が終わったから、リリーとベルトの部屋でお茶してから帰るね。クライスの分の薬草も摘んでおいたからここに置いておくよ。マドレーヌを作ったからよかったら食べて。
キルナ
ん、これでよし。部屋にはバターとバニラオイルの甘い香りが漂っている。出来立てのマドレーヌはまだ温かい。
でも外は寒そうだ。
雨が降ったら薬草園にいたあの妖精たちはどこにいくのだろう。部屋の中に移動するのかな? それとも天気なんて関係なしで外を飛び回るのかな?
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