57 / 306
第5章
第193話 リリーSIDE 消えたメガネ
しおりを挟む
そうこうしているうちに、嫌な視線が消えた。どうやら護衛騎士が全て排除したらしい。フェルライト家のか王家のか知らないけど、すごい数の護衛だ。ちょっと近くに買い物に来ただけなのに大袈裟過ぎて笑える。
(彼の周りには過保護な人間しかいないのかな? まあ、自分だって人のことは言えないか。同い年なのに、なんだか無性に心配で彼から目が離せないし。)
「ほわぁ。便利そうな魔道具がいっぱい。この花瓶、中の水がずっときれいに保たれるから水換えが必要ないのだって!」
「へぇ、いいね。メガネは花が好きだもんね。一つ買ったら?」
「うん……。でも、今日はプレゼントを買いに来たし…また今度にする。あぁ、どれがいいんだろ、人に贈るものってほんとに難しいよ。クライスは剣術が得意だし、もしかして武器とかがいいのかな?」
「誕生日プレゼントに武器はおかしいでしょ」
「そう?」
一通り魔道具屋を見て回ったけど、プレゼントはまだ決まっていない。この様子だとまだまだ時間がかかりそうだ。
「ねえメガネ、ちょっと休憩しない? 甘いものでも食べながらゆっくり考えようよ」
たくさん歩いたし、正直疲れた。そろそろお茶と甘いものが欲しいな、と思って提案すると、メガネも同じだったみたいで「うん。そうしよっ」と嬉しそうに答えた。
「馬鹿ベルトおすすめのティールーム“キラキラ星”に行こうよ。その店、スコーンが有名なんだってさ」
地図を見ながら行ってみると超人気店で長蛇の列だったのに、ウェイターに名前を告げると店長が出てきて中に通され、さっと座ることができた。どうやらベルトが予約しておいてくれたらしい。しかもスコーンセット二人分を支払い済みだという。
「へ? ベルトが払ってくれたの? なんで?」
「“俺様は行けないけど、ココットタウンを楽しんでくれ”、とのことです」
店長がにこやかに告げると、メガネは「予約してお金まで払ってくれるなんて……。ベルト優しっ!」と感動していた。
(ふ~ん、あいつもたまには役に立つんだね。)
ちょっと見直していると、焼きたてのスコーンにクロテッドクリームとジャムが添えられ、うやうやしく運ばれてきた。僕はマフマフ入りとプレーンの二種類、メガネはポポの実入りとプレーンのスコーンセットにした。
(そういえばメガネは超偏食みたいだけど、これは食べられるのかな?)
見ていると、割ってジャムとクリームをのせたスコーンを、上品な手つきで次々と小さな口に運んでいる。どうやら問題なかったようだ。僕も同じようにスコーンを口に入れるとほろほろした食感に、思わずおぉっと感嘆の声が出た。
「ん、おいしっ。外はカリカリ中はもっちりしてて食べ応えがあるね。さっぱりしたクリームや甘酸っぱいジャムをつけると味が変わって、いくらでも食べられそう……」
「たしかに。これはベルトが勧めるだけあるね」
「ね、リリー、こっちのポポの実入りのスコーン食べてみて。ほんのり甘くてとってもおいしいから。そんでそっちのマフマフ入りのを一口ちょうだい。はい、お口開けて、あ~ん」
「あ、ちょっと、メガネ。口にジャムついちゃったでしょ。もっとうまく入れてよ」
あ~んというから慌てて口を開けたけど、入れるのが下手なせいでジャムが口の端に付いてしまう。もう! と怒ると、彼が綺麗な刺繍入りのハンカチで丁寧に拭いてくれた。
「ごめん。ふふっ、ピンクのジャムお口につけてるリリーってなんか可愛い。あれ? 何これ。よく見るとこのジャムちょっと光ってるよ?」
「星屑のジャムだからね。そりゃ光るよ。ヒカリビソウっていう光る草の成分が入ってるんだ」
「ヒカリビソウ!? 僕、それ光飴作るために育てたことあるよ!!」
興奮しながらその飴作りについて語るメガネ。その栽培がいかに大変だったか。できた光飴で部屋をデコレーションした時の喜びは如何程だったか、内容は決して真似したいものじゃないしそこまで興味はないけれど、楽しそうに語る様子は見ていて飽きない。
彼を見ていると、ほんわか可愛い系はもちろん、小悪魔テイストの服やセクシー系の服も似合うんだろうな、と次々妄想が膨らむ。
「ふわぁ、このミルクティーいい香り。スコーンによく合う」
「ほんとだ」
スコーンと紅茶を一緒に口に含むと、また違った味がして美味しかった。
最高のお菓子とお茶を堪能し、次は宝石を見に行こう、ということになった。王子に贈るような宝石があるとしたらここかな、とこの街で一番大きなジュエリーショップに入った瞬間だった。
ぎゅっと握っていたはずの彼の手が。
ーー消えた。
「メガネ!? どこ!?」
辺りを探し回ってもいない。護衛騎士たちに視線を向けると、彼らも見失ったらしい。すぐさま大捜索が始まった。
「どこに…いったの?」
メガネが消えた……。
震える手から、大事に持っていたピンクの袋がぽすんと地面に落ちる音がした。
(彼の周りには過保護な人間しかいないのかな? まあ、自分だって人のことは言えないか。同い年なのに、なんだか無性に心配で彼から目が離せないし。)
「ほわぁ。便利そうな魔道具がいっぱい。この花瓶、中の水がずっときれいに保たれるから水換えが必要ないのだって!」
「へぇ、いいね。メガネは花が好きだもんね。一つ買ったら?」
「うん……。でも、今日はプレゼントを買いに来たし…また今度にする。あぁ、どれがいいんだろ、人に贈るものってほんとに難しいよ。クライスは剣術が得意だし、もしかして武器とかがいいのかな?」
「誕生日プレゼントに武器はおかしいでしょ」
「そう?」
一通り魔道具屋を見て回ったけど、プレゼントはまだ決まっていない。この様子だとまだまだ時間がかかりそうだ。
「ねえメガネ、ちょっと休憩しない? 甘いものでも食べながらゆっくり考えようよ」
たくさん歩いたし、正直疲れた。そろそろお茶と甘いものが欲しいな、と思って提案すると、メガネも同じだったみたいで「うん。そうしよっ」と嬉しそうに答えた。
「馬鹿ベルトおすすめのティールーム“キラキラ星”に行こうよ。その店、スコーンが有名なんだってさ」
地図を見ながら行ってみると超人気店で長蛇の列だったのに、ウェイターに名前を告げると店長が出てきて中に通され、さっと座ることができた。どうやらベルトが予約しておいてくれたらしい。しかもスコーンセット二人分を支払い済みだという。
「へ? ベルトが払ってくれたの? なんで?」
「“俺様は行けないけど、ココットタウンを楽しんでくれ”、とのことです」
店長がにこやかに告げると、メガネは「予約してお金まで払ってくれるなんて……。ベルト優しっ!」と感動していた。
(ふ~ん、あいつもたまには役に立つんだね。)
ちょっと見直していると、焼きたてのスコーンにクロテッドクリームとジャムが添えられ、うやうやしく運ばれてきた。僕はマフマフ入りとプレーンの二種類、メガネはポポの実入りとプレーンのスコーンセットにした。
(そういえばメガネは超偏食みたいだけど、これは食べられるのかな?)
見ていると、割ってジャムとクリームをのせたスコーンを、上品な手つきで次々と小さな口に運んでいる。どうやら問題なかったようだ。僕も同じようにスコーンを口に入れるとほろほろした食感に、思わずおぉっと感嘆の声が出た。
「ん、おいしっ。外はカリカリ中はもっちりしてて食べ応えがあるね。さっぱりしたクリームや甘酸っぱいジャムをつけると味が変わって、いくらでも食べられそう……」
「たしかに。これはベルトが勧めるだけあるね」
「ね、リリー、こっちのポポの実入りのスコーン食べてみて。ほんのり甘くてとってもおいしいから。そんでそっちのマフマフ入りのを一口ちょうだい。はい、お口開けて、あ~ん」
「あ、ちょっと、メガネ。口にジャムついちゃったでしょ。もっとうまく入れてよ」
あ~んというから慌てて口を開けたけど、入れるのが下手なせいでジャムが口の端に付いてしまう。もう! と怒ると、彼が綺麗な刺繍入りのハンカチで丁寧に拭いてくれた。
「ごめん。ふふっ、ピンクのジャムお口につけてるリリーってなんか可愛い。あれ? 何これ。よく見るとこのジャムちょっと光ってるよ?」
「星屑のジャムだからね。そりゃ光るよ。ヒカリビソウっていう光る草の成分が入ってるんだ」
「ヒカリビソウ!? 僕、それ光飴作るために育てたことあるよ!!」
興奮しながらその飴作りについて語るメガネ。その栽培がいかに大変だったか。できた光飴で部屋をデコレーションした時の喜びは如何程だったか、内容は決して真似したいものじゃないしそこまで興味はないけれど、楽しそうに語る様子は見ていて飽きない。
彼を見ていると、ほんわか可愛い系はもちろん、小悪魔テイストの服やセクシー系の服も似合うんだろうな、と次々妄想が膨らむ。
「ふわぁ、このミルクティーいい香り。スコーンによく合う」
「ほんとだ」
スコーンと紅茶を一緒に口に含むと、また違った味がして美味しかった。
最高のお菓子とお茶を堪能し、次は宝石を見に行こう、ということになった。王子に贈るような宝石があるとしたらここかな、とこの街で一番大きなジュエリーショップに入った瞬間だった。
ぎゅっと握っていたはずの彼の手が。
ーー消えた。
「メガネ!? どこ!?」
辺りを探し回ってもいない。護衛騎士たちに視線を向けると、彼らも見失ったらしい。すぐさま大捜索が始まった。
「どこに…いったの?」
メガネが消えた……。
震える手から、大事に持っていたピンクの袋がぽすんと地面に落ちる音がした。
515
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。