76 / 306
第5章
第212話 ロイルSIDE 恥じらう天使②※
しおりを挟む
手早く制服に着替えたクライス様がソファに座ると、俺は周囲に防音魔法を施して、調査結果をまとめた報告書を渡した。
「昨日捕らえた青フードの男、やはりキルナ様を攫った犯人とは別人で、体格も魔法の属性も違いました。調べによるとあいつは金で雇われただけの下っ端で、雇われたのもごく最近。キルナ様をあそこで見張り、食事を運ぶ役目を負っていたようです。雇い主のことは金をちらつかせると喋ろうとするそぶりを見せたのですが声は出ず、急に喉を掻きむしり苦しみ出したかと思うと、もう次の瞬間には事切れていた、ということです」
報告を聞くと「そうか、あの男は死んだのか」とクライス様は暗い声で溜息混じりに呟いた。
「遠隔で人を殺すなど、かなり高度な魔法だな。いや、魔法ではなく魔法契約か?」
「はい、おそらく。取り調べを行う部屋には外からの魔法を阻む結界が張られていましたから、ただの魔法ではないはずです。『雇用主の情報を漏らそうとすれば、命を奪う』というような契約を予め交わしていたのかもしれません。ただ、奴が死んでしまったので詳細はなんとも……」
「命を奪って口封じをするとは、やり方が非道だな。命に関わるような重い契約は、誰しも結べるものではない。高位の魔術師が絡んでいるのかもしれないな」
クライス様は難しい顔をしながら資料を捲っている。
「はい、いずれにしても騎士団の調査とも合わせると今回の件で一番怪しいのは間違いなくリメット侯爵家です。キルナ様が監禁されていた岩牢のある、ビビッド宝石鉱山を所有しています。転移魔法の魔力補助に使われたと思われる魔宝石のサファイアもそこで採れたもの。キルナ様が消えたジュエリーショップの所有者もリメット侯爵です。もっと言えば攫った犯人は子どものような体格で水属性の魔力を持っていた。その特徴は侯爵家の子息テア=リメットと一致します。ただ、あまりにも証拠を残し過ぎていて逆に怪しいような……」
「ああ、黒幕は他にいるのだろう。リメット家の力だけではあのビビッドドラゴンを動かすことはできない。必ず協力者がいるはずだ。リメット家を使ってキルナを攫い閉じ込め、何をするつもりだったのか……狙いが気になるな」
「ええ、その辺りはまた騎士団と魔術師団が続けて調査を行なっています。とりあえず私たちは、テア=リメットとその周囲に気をつけておきましょう」
その他諸々の話が終わると防音魔法を解除し、ダイニングでまだゆっくりと朝ごはんを食べているキルナ様に向かって俺は頭を下げた。
「キルナ様、すみません。お二人が結ばれた喜ばしい朝にバタバタと仕事の話など。このことは王宮やフェルライト公爵家にもお伝えしなければいけませんね。盛大にお祝いしなければ」
「んぇ? 結ばれた? ってなんのこと?」
コテンと首を傾ける彼。今更隠すなんて、照れ隠しだろうか。キルナ様は恥ずかしがり屋な面があるからな、と彼の心情を推察する。
「ははっ、隠さずとも良いのです。お二人は婚約者同士ですし、別に愛し合う行為を止める理由はありません。さすがに子作りは早いですが、きちんと道具を使って行う分には……」
キルナ様は手に持っていたパンをポロリとお皿に落とし、目を見張った。
「子作り……性行為のこと? も、もしかして、ロイル…昨日の大浴場のこと、クライスから聞いたの?」
今度は俺が驚く番だった。
「大浴場? えっ? 大浴場で初体験を済まされたのですか? クライス様、さすがにそれは……」
(ベッドまで我慢できなかったのか……。)
完璧な彼もキルナ様の前ではロマンチックな演出をする余裕がないらしい。思わず哀れみを込めた目で主を見てしまった。
「なんだその目は。ロイル、勘違いするな。確かに昨日大浴場でキルナの可愛いペニスをしゃぶったが、まだ挿入はしてない。部屋に戻ってからもっと可愛がりたかったのだが、そんな時間はなかった」
「え、そうなんですか? だって最後までしたって。挿れたということでは?」
「最後までしたのは宿題のことだ」
「……宿題」
そういえば今回の魔法生物学の宿題はページ数が多く、調べるのに時間がかかるものが多かった。あれを終わらせていたのか……最後まで。
「なんだ、てっきりお二人が共に苦難を乗り越えたことで愛の焔が燃え上がりーー。初めての行為に小さなアナルが傷ついてもキルナ様は愛しのクライス様のために耐えーー。硬く猛ったペニスを最後まで飲み込んで、朝までたっぷり愛し合ったのかと思いました」
「そうできればよかったのだが。いや、もちろん絶対にキルナを傷付けはしない。初めてのときだってしっかり奥の奥まで柔らかく解してよく慣らしてからゆっくりと……」
気付くと隣で俺たちの会話を聞いていたキルナ様は、ぷるぷると真っ赤になって震えている。赤い花弁を大量に散らせた、その甘く匂い立つような白い頸を晒し、大きな金の目をウルウルさせ、恥じらいながら俯いているそのお姿は……、
まさに天使!!
「おい、ロイル、あまり見るな」
クライス様は俺の視線を遮るためキルナ様のフードを頭にすっぽりと被せた。うさぎ特有の長い耳が頭からだらんと垂れ、よりうさぎに近づいたキルナ様の可愛さに、駄目だと分かっていても視線が外せない。天使にふわふわもこもこのうさぎルームウェアを組み合わせるというのは、なんと危険な試みなのだろう。
「申し訳ありません、あまりに……可憐で可愛らしく、庇護欲をそそる姿をされているものですから、つい」
「食べてしまいたくなるのもわかるか?」
「本当に、よく最後までするのを我慢されましたね!!」
二人でまじまじと彼を見たのがいけなかった。プルプルと震えていた彼が顔を上げ、涙目で俺たちを睨みつける。
「もうもうもう!! さっきから恥ずかしいことばっかり!! クライスもロイルも出てってぇ!!」
うさぎ天使に追い出され、俺たちは仕方なく隣室で彼の怒りが収まるのを待つことにした。
「昨日捕らえた青フードの男、やはりキルナ様を攫った犯人とは別人で、体格も魔法の属性も違いました。調べによるとあいつは金で雇われただけの下っ端で、雇われたのもごく最近。キルナ様をあそこで見張り、食事を運ぶ役目を負っていたようです。雇い主のことは金をちらつかせると喋ろうとするそぶりを見せたのですが声は出ず、急に喉を掻きむしり苦しみ出したかと思うと、もう次の瞬間には事切れていた、ということです」
報告を聞くと「そうか、あの男は死んだのか」とクライス様は暗い声で溜息混じりに呟いた。
「遠隔で人を殺すなど、かなり高度な魔法だな。いや、魔法ではなく魔法契約か?」
「はい、おそらく。取り調べを行う部屋には外からの魔法を阻む結界が張られていましたから、ただの魔法ではないはずです。『雇用主の情報を漏らそうとすれば、命を奪う』というような契約を予め交わしていたのかもしれません。ただ、奴が死んでしまったので詳細はなんとも……」
「命を奪って口封じをするとは、やり方が非道だな。命に関わるような重い契約は、誰しも結べるものではない。高位の魔術師が絡んでいるのかもしれないな」
クライス様は難しい顔をしながら資料を捲っている。
「はい、いずれにしても騎士団の調査とも合わせると今回の件で一番怪しいのは間違いなくリメット侯爵家です。キルナ様が監禁されていた岩牢のある、ビビッド宝石鉱山を所有しています。転移魔法の魔力補助に使われたと思われる魔宝石のサファイアもそこで採れたもの。キルナ様が消えたジュエリーショップの所有者もリメット侯爵です。もっと言えば攫った犯人は子どものような体格で水属性の魔力を持っていた。その特徴は侯爵家の子息テア=リメットと一致します。ただ、あまりにも証拠を残し過ぎていて逆に怪しいような……」
「ああ、黒幕は他にいるのだろう。リメット家の力だけではあのビビッドドラゴンを動かすことはできない。必ず協力者がいるはずだ。リメット家を使ってキルナを攫い閉じ込め、何をするつもりだったのか……狙いが気になるな」
「ええ、その辺りはまた騎士団と魔術師団が続けて調査を行なっています。とりあえず私たちは、テア=リメットとその周囲に気をつけておきましょう」
その他諸々の話が終わると防音魔法を解除し、ダイニングでまだゆっくりと朝ごはんを食べているキルナ様に向かって俺は頭を下げた。
「キルナ様、すみません。お二人が結ばれた喜ばしい朝にバタバタと仕事の話など。このことは王宮やフェルライト公爵家にもお伝えしなければいけませんね。盛大にお祝いしなければ」
「んぇ? 結ばれた? ってなんのこと?」
コテンと首を傾ける彼。今更隠すなんて、照れ隠しだろうか。キルナ様は恥ずかしがり屋な面があるからな、と彼の心情を推察する。
「ははっ、隠さずとも良いのです。お二人は婚約者同士ですし、別に愛し合う行為を止める理由はありません。さすがに子作りは早いですが、きちんと道具を使って行う分には……」
キルナ様は手に持っていたパンをポロリとお皿に落とし、目を見張った。
「子作り……性行為のこと? も、もしかして、ロイル…昨日の大浴場のこと、クライスから聞いたの?」
今度は俺が驚く番だった。
「大浴場? えっ? 大浴場で初体験を済まされたのですか? クライス様、さすがにそれは……」
(ベッドまで我慢できなかったのか……。)
完璧な彼もキルナ様の前ではロマンチックな演出をする余裕がないらしい。思わず哀れみを込めた目で主を見てしまった。
「なんだその目は。ロイル、勘違いするな。確かに昨日大浴場でキルナの可愛いペニスをしゃぶったが、まだ挿入はしてない。部屋に戻ってからもっと可愛がりたかったのだが、そんな時間はなかった」
「え、そうなんですか? だって最後までしたって。挿れたということでは?」
「最後までしたのは宿題のことだ」
「……宿題」
そういえば今回の魔法生物学の宿題はページ数が多く、調べるのに時間がかかるものが多かった。あれを終わらせていたのか……最後まで。
「なんだ、てっきりお二人が共に苦難を乗り越えたことで愛の焔が燃え上がりーー。初めての行為に小さなアナルが傷ついてもキルナ様は愛しのクライス様のために耐えーー。硬く猛ったペニスを最後まで飲み込んで、朝までたっぷり愛し合ったのかと思いました」
「そうできればよかったのだが。いや、もちろん絶対にキルナを傷付けはしない。初めてのときだってしっかり奥の奥まで柔らかく解してよく慣らしてからゆっくりと……」
気付くと隣で俺たちの会話を聞いていたキルナ様は、ぷるぷると真っ赤になって震えている。赤い花弁を大量に散らせた、その甘く匂い立つような白い頸を晒し、大きな金の目をウルウルさせ、恥じらいながら俯いているそのお姿は……、
まさに天使!!
「おい、ロイル、あまり見るな」
クライス様は俺の視線を遮るためキルナ様のフードを頭にすっぽりと被せた。うさぎ特有の長い耳が頭からだらんと垂れ、よりうさぎに近づいたキルナ様の可愛さに、駄目だと分かっていても視線が外せない。天使にふわふわもこもこのうさぎルームウェアを組み合わせるというのは、なんと危険な試みなのだろう。
「申し訳ありません、あまりに……可憐で可愛らしく、庇護欲をそそる姿をされているものですから、つい」
「食べてしまいたくなるのもわかるか?」
「本当に、よく最後までするのを我慢されましたね!!」
二人でまじまじと彼を見たのがいけなかった。プルプルと震えていた彼が顔を上げ、涙目で俺たちを睨みつける。
「もうもうもう!! さっきから恥ずかしいことばっかり!! クライスもロイルも出てってぇ!!」
うさぎ天使に追い出され、俺たちは仕方なく隣室で彼の怒りが収まるのを待つことにした。
557
あなたにおすすめの小説
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。