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第6章
第273話 妖精の家
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「んぇ、ここは?」
「あら気がついたのね。ちょっと待ってて、お水を用意するわ。あれ? コップはどこへおいたかしらね。あ、ありがとう」
長いポニーテールの女の人が、妖精から白い陶器のコップを受け取っている。魔法かしら? 空だったコップに水が満たされていく。「はい、どうぞ」と手渡されたコップに口をつけると冷たくておいしい水だった。
「おいしっ! ありがと」
「まだ安静にしておいてね。この子たちったら、無理やり連れてきちゃったみたいだから。ん? なになに? そんなことないって?」
ベッドの周囲を見回す。見たことないところだ。
木製の小屋、みたい。ちょっと散らかってるけど色々なカワイイ小物で溢れた女性らしい部屋。なんだか不細工な顔のぬいぐるみが枕元に並べられ、机には花瓶に花が生けてある。あの紫の花はラーズかな? キラキラと光る宝石つきのアクセサリーが机の上に無造作に置かれていて、レースのカーテンからは柔らかな日差しが差し込んでいる。
(この場所、好きかも!)
大好きなお花がたくさん飾ってあって、窓から花や草の香りがする風が入り込んでくる。何より、たくさん妖精がいる。本の上にも棚の上にも机の下にもびっしりと。コロコロと楽しげに笑い合い、「ね~ね~あそぼ~よ~」と僕を誘ってくる。
椅子に座って妖精とおしゃべりしている彼女に、僕は問いかけた。
「えと、ここって……」
「ここは妖精の家よ」
「妖精のお家?」
ふむふむ、納得! だからこんなに妖精がいるのか。
「僕はたしか……湖にいたのに」
(あれ、でもなんで湖にいたのだっけ? 僕は泳げないのにおかしいな)
考えても思い出せなかった。頭の中に靄がかかったみたいになっている。
「記憶がぼやけているのね。仕方がないわ。ここはそういうところだから。私ももう、ここへくる前のことはあまり覚えてないの。でも、大丈夫! いつか思い出せるかもしれないし、ここにはたくさんお友達がいるから寂しくなんてないわ。ね、みんな!」
「うんうん、いっしょにあそぼ~」
「ねぇ~おなべ、こげてるよ~~」
「ん? なになに? やだ、お鍋を火にかけっぱなしだったわ。ちょっと待っててね。温かいスープをご馳走するから」
彼女が持ってきたスープは、焦げ臭い上に煮詰めすぎたせいかしょっぱくて食べられなかった。
「……ごめんなさい。私実は料理って少し苦手で。え? なになに? ちょっとじゃない? んもう、いいでしょう、別に」
妖精にプンプンと怒る姿も可愛らしい。お父様と同じくらいの年齢かな?
綺麗な人……。黒い髪に金の瞳。僕と同じ色をしている。
「私の名前はカーナ、あなたは?」
「僕は、キルナというの」
「ふふ、キルナ、いい名前ね」
カーナ……なんだか聞いたことがあるような。でも忘れた。
僕は口直しをするためにもう一度お水を飲んだ。
「あら気がついたのね。ちょっと待ってて、お水を用意するわ。あれ? コップはどこへおいたかしらね。あ、ありがとう」
長いポニーテールの女の人が、妖精から白い陶器のコップを受け取っている。魔法かしら? 空だったコップに水が満たされていく。「はい、どうぞ」と手渡されたコップに口をつけると冷たくておいしい水だった。
「おいしっ! ありがと」
「まだ安静にしておいてね。この子たちったら、無理やり連れてきちゃったみたいだから。ん? なになに? そんなことないって?」
ベッドの周囲を見回す。見たことないところだ。
木製の小屋、みたい。ちょっと散らかってるけど色々なカワイイ小物で溢れた女性らしい部屋。なんだか不細工な顔のぬいぐるみが枕元に並べられ、机には花瓶に花が生けてある。あの紫の花はラーズかな? キラキラと光る宝石つきのアクセサリーが机の上に無造作に置かれていて、レースのカーテンからは柔らかな日差しが差し込んでいる。
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椅子に座って妖精とおしゃべりしている彼女に、僕は問いかけた。
「えと、ここって……」
「ここは妖精の家よ」
「妖精のお家?」
ふむふむ、納得! だからこんなに妖精がいるのか。
「僕はたしか……湖にいたのに」
(あれ、でもなんで湖にいたのだっけ? 僕は泳げないのにおかしいな)
考えても思い出せなかった。頭の中に靄がかかったみたいになっている。
「記憶がぼやけているのね。仕方がないわ。ここはそういうところだから。私ももう、ここへくる前のことはあまり覚えてないの。でも、大丈夫! いつか思い出せるかもしれないし、ここにはたくさんお友達がいるから寂しくなんてないわ。ね、みんな!」
「うんうん、いっしょにあそぼ~」
「ねぇ~おなべ、こげてるよ~~」
「ん? なになに? やだ、お鍋を火にかけっぱなしだったわ。ちょっと待っててね。温かいスープをご馳走するから」
彼女が持ってきたスープは、焦げ臭い上に煮詰めすぎたせいかしょっぱくて食べられなかった。
「……ごめんなさい。私実は料理って少し苦手で。え? なになに? ちょっとじゃない? んもう、いいでしょう、別に」
妖精にプンプンと怒る姿も可愛らしい。お父様と同じくらいの年齢かな?
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「私の名前はカーナ、あなたは?」
「僕は、キルナというの」
「ふふ、キルナ、いい名前ね」
カーナ……なんだか聞いたことがあるような。でも忘れた。
僕は口直しをするためにもう一度お水を飲んだ。
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