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第6章
第286話 気持ちの正体①
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しばらく抱き合っていると、クライスの震えが徐々に収まってきた。よかった。
「この辺に座ろっか」
二人で湖のすぐ近くに座った。景色を眺めながら横に並んで、じゃなく対面になって僕が彼の膝上に乗って。
「こんな座り方でいいの? 重くない?」
「ああ、大丈夫。全然重くない。くっついていると安心する」
「そか」
変な座り方だと思ったけれど、クライスはこの方がお話ししやすいというし、僕も彼を安心させたかったから頷いた。ちょっと恥ずかしい気がしたけど、たしかにこうやって座ったら目は合わせやすいよね、と思う。やってみると案外しっくりきたので気に入った。
「教えてほしいな。僕達のこと。どうやって出会ってどんな話をしていたのか」
「ああ、もちろん」
僕が忘れてしまった過去のお話を、彼に教えてもらうことにした。
なんと出会った場所は噴水の中らしい。自宅の噴水で溺れていた僕をクライスが助けたのが初めての出会い。
ずぶ濡れになったからその後一緒にお風呂に入り、なぜか湯船に潜って出てこなくなった僕を引っ張り上げた後、僕らはファーストキスをした。
ビックリしたのとのぼせたのとで気を失い、しばらくして目覚めた僕にクライスがプロポーズしたのだって。(出会ったその日にプロポーズって、早っ!)
その後は一緒に学園に通い、勉強したり運動したり、魔法の練習をしたりした。
ここへくる前は、湖でデートしていた。その途中でいなくなった僕を、溺れたのじゃないかって必死に探し回ったけどどこにもおらず、ようやくここへ辿り着いたのだという。(それで会った時、「無事だったのか」って言ったのか)
(ってあれ? なんか僕ずっと溺れてない? 僕ってそんなにカナヅチなの?)
しかも溺れる度にクライスに救出してもらい迷惑をかけている。なんだか聞けば聞くほど彼に申し訳なくなってきた。そういえば、ここにきた時もクライスとルゥ、二人ともボロボロだったよね? それってめちゃくちゃ苦労してここに来てくれたってことなんじゃ……。
(なんてこと!)
「えと、ごめん。心配かけて。急にいなくなってビックリしたよね」
「見つかったから、問題ない。無事でよかった」
さっき湖を見て震えていたのも、僕がいなくなった時のことを思い出したからだったのか。そりゃ、一緒に湖に行った相手(しかも重度のカナヅチ)が消えちゃったら溺れたとしか思えない。一生トラウマになってもおかしくない。問題ないどころか大アリすぎる。こんなの何度謝っても謝り足りない。
「ほんとごめ……」
「『あやまらなくていいから』」
あれ? 言葉が、重なって聞こえた。今のクライスの声と、たぶん、過去のクライスの声が重なったような。
「ねぇ、なんかその言葉、聞いたことある気がする」
「え?」
「もっと言ってみて。何か思い出すかもしれない。クライスが僕によく言ってたこととか、他にない? なんか印象に残りそうな言葉とか」
「そうだな」
彼は一呼吸置いて、こう言った。
「愛してる」
え?
僕は彼を見る。
「俺はキルナを愛してる」
もう一度彼は同じ言葉を繰り返した。はっきり聞こえた。僕は自分の胸に手を当てた。
胸が張り裂けそう。信じられないくらい速い鼓動でドクドクいっている。でも頭はクリアだった。難しいなぞなぞの答えがわかった時のように。
(やっと、わかった!!!)
わからないって思っていた気持ち。
クライスに会ってからずっとずっと心を満たすこの気持ち。
言いたくても言えなかった気持ち。
の正体が。
「あのね」
額と額がくっつきそうなくらい近くで見つめ合いながら、彼に告げた。
「僕もクライスのこと、愛してる」
「この辺に座ろっか」
二人で湖のすぐ近くに座った。景色を眺めながら横に並んで、じゃなく対面になって僕が彼の膝上に乗って。
「こんな座り方でいいの? 重くない?」
「ああ、大丈夫。全然重くない。くっついていると安心する」
「そか」
変な座り方だと思ったけれど、クライスはこの方がお話ししやすいというし、僕も彼を安心させたかったから頷いた。ちょっと恥ずかしい気がしたけど、たしかにこうやって座ったら目は合わせやすいよね、と思う。やってみると案外しっくりきたので気に入った。
「教えてほしいな。僕達のこと。どうやって出会ってどんな話をしていたのか」
「ああ、もちろん」
僕が忘れてしまった過去のお話を、彼に教えてもらうことにした。
なんと出会った場所は噴水の中らしい。自宅の噴水で溺れていた僕をクライスが助けたのが初めての出会い。
ずぶ濡れになったからその後一緒にお風呂に入り、なぜか湯船に潜って出てこなくなった僕を引っ張り上げた後、僕らはファーストキスをした。
ビックリしたのとのぼせたのとで気を失い、しばらくして目覚めた僕にクライスがプロポーズしたのだって。(出会ったその日にプロポーズって、早っ!)
その後は一緒に学園に通い、勉強したり運動したり、魔法の練習をしたりした。
ここへくる前は、湖でデートしていた。その途中でいなくなった僕を、溺れたのじゃないかって必死に探し回ったけどどこにもおらず、ようやくここへ辿り着いたのだという。(それで会った時、「無事だったのか」って言ったのか)
(ってあれ? なんか僕ずっと溺れてない? 僕ってそんなにカナヅチなの?)
しかも溺れる度にクライスに救出してもらい迷惑をかけている。なんだか聞けば聞くほど彼に申し訳なくなってきた。そういえば、ここにきた時もクライスとルゥ、二人ともボロボロだったよね? それってめちゃくちゃ苦労してここに来てくれたってことなんじゃ……。
(なんてこと!)
「えと、ごめん。心配かけて。急にいなくなってビックリしたよね」
「見つかったから、問題ない。無事でよかった」
さっき湖を見て震えていたのも、僕がいなくなった時のことを思い出したからだったのか。そりゃ、一緒に湖に行った相手(しかも重度のカナヅチ)が消えちゃったら溺れたとしか思えない。一生トラウマになってもおかしくない。問題ないどころか大アリすぎる。こんなの何度謝っても謝り足りない。
「ほんとごめ……」
「『あやまらなくていいから』」
あれ? 言葉が、重なって聞こえた。今のクライスの声と、たぶん、過去のクライスの声が重なったような。
「ねぇ、なんかその言葉、聞いたことある気がする」
「え?」
「もっと言ってみて。何か思い出すかもしれない。クライスが僕によく言ってたこととか、他にない? なんか印象に残りそうな言葉とか」
「そうだな」
彼は一呼吸置いて、こう言った。
「愛してる」
え?
僕は彼を見る。
「俺はキルナを愛してる」
もう一度彼は同じ言葉を繰り返した。はっきり聞こえた。僕は自分の胸に手を当てた。
胸が張り裂けそう。信じられないくらい速い鼓動でドクドクいっている。でも頭はクリアだった。難しいなぞなぞの答えがわかった時のように。
(やっと、わかった!!!)
わからないって思っていた気持ち。
クライスに会ってからずっとずっと心を満たすこの気持ち。
言いたくても言えなかった気持ち。
の正体が。
「あのね」
額と額がくっつきそうなくらい近くで見つめ合いながら、彼に告げた。
「僕もクライスのこと、愛してる」
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