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第7章

第334話 クライスSIDE 悪役令息のきもだめし②

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新入生歓迎イベントは授業の後、よいの口に始まった。

まずは、学園内にある『宵闇よいやみの洞窟』の前に集まって、くじ引きでペアを決める。そして、ペアになった二人で手を繋いで洞窟内のコースを巡り、魔石スタンプを押して戻ってくる、というのがきもだめしの内容だ。

1年と6年でペア、という決まりがなければ、どんなことをしてでもキルナとペアになったのに……。キルナが自分以外の人間と手を繋ぐなど、想像するだけでも怒りが湧いてくる。

「キルナ、相手は誰だった?」
「えと、クーマ=ザッケルって子。ねぇ、それより、クライスの相手は誰だった?」

聞かれてはじめて、引いたくじの紙をまだ開いていないことに気づいた。キルナの相手は誰か。そればかりに気を取られ、自分の相手のことなんて興味がなかったから。小さく折り畳まれた紙を開いてみると、“ユジン=フェルライト”とある。

「ユジン……だね」

やっぱりか、というかんじで頷くキルナ。ユジンの背中を見て何か考え込んでいる。
なんだか様子がおかしい。もしや、『俺とユジンが結婚する』とかいう馬鹿げた予言に関係することか?

ぐしゃりとユジンの名が記された紙を手の中で潰した。



「クライス王子、よろしくお願いします」
「……ああ、ユジン。こちらこそよろしく」

やってきたユジンと型通りの挨拶をする。内心はどうあれ、婚約者の弟と不仲だと思われないよう細心の注意を払って接する。相手も同じように表面上の笑顔は完璧だった。

すると、それを横で見ていたキルナがすうっと息を吸い込んで、言葉を放った。大きく息を吸い込んでいた割に、消えてしまいそうなほど弱々しい声で、彼が告げる。

「二人がペアだなんて……、絶対絶対、ぜーったい……認めないからね……」
「キルナ……?」 
「キル兄様……?」

俺とユジンがペアだとは認めない……それはやきもちか? とも思うが、もっと重く何か追い詰められているような、そんな雰囲気がある。

俯いたままこちらを見ようともしない彼に、ユジンも心配そうに声をかけるが、それも聞いていないようだ。何度も同じセリフをブツブツと口にするだけ。

キルナの様子が気になる。
苦手な肝試しを前に気分が昂っているのだろうか。休ませるべきか? もうすぐイベントの開始時刻だ。始まる前にどうするか決めなければ。

頭を悩ませていると、ユジンが周囲に聞こえない程度の小さな声で話しかけてきた。

「王子、兄様とペアになったのは誰ですか?」
「クーマ=ザッケルという男らしい。そういえばお前のルームメイトがそんな名だったか?」
「そうですが。よりにもよってクーマですか!?」
「どんな奴なんだ?」
「いい奴には違いないのですが……」

説明を聞き終えると、俺とユジンはお互いに向かって、同時に同じ提案をしていた。

「ペアを、変えよう」
「ペアを、変えましょう」
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