252 / 308
第8章
第388話 クライスSIDE 学友たちの報告
キルナのことをノエルとリオンに頼み、生徒会室でいじめ騒動に関わった生徒たちのリストを見ながらギアとロイルの報告を聞く。
「大体片付いたな」
「一週間ほどかかりましたが、やっとですね」
ほっと安堵の息を吐くギア。正義感の強い彼は、今回の件にとても憤っていた。
ずらりと並んだ名前に一通り目を通す。自分ともキルナとも普段あまり関わりがない人間が多い。無関係な人間が、よくもまぁ好き勝手に噂を流すものだと驚く。
「いじめに関わった人間はその度合いに応じて処分しました。今回は王家も調査に関わっているので処罰は比較的重いものになっています。ただ、噂を流しはじめたのが誰なのかは結局わかりませんでしたね」
ロイルが読み終わった書類をまとめ、落胆の声で言った。
「ああ、これだけ徹底的に探しても顔を見た者はいなかった。証拠も残っていない。わかったのは声だけ…か」
「それもなんの特徴もない普通の声、おそらく我々と同年齢くらいの男の声だった、ということしかわからないので、そこから特定するのは難しいようです」
嫌がらせの実行犯についてはあらかた犯人がわかったが、不可解なことに、噂の出どころはいくら探してもわからなかった。
『医務室にいたら、誰かが言ったんです。キルナ様は闇属性で黒い髪を隠してるんだって』
『学園のトイレで誰かに聞いたんです。キルナ様が闇の魔力を使って魔獣を誘き寄せてるって』
誰がそう言ったのか、は皆知らないと言う。しかし、年齢は同い年くらいの男な気がする、そして、そういえば
『制服なのに青いフードを被っていた』
と声を揃えて言う。今考えれば違和感を感じるが、その時はなんとも思わなかった、と。
ユジンと俺の結婚を頑なに信じていたキルナに、やっと『クライスと結婚したい』と言わせることができた。そこに至るまでどれほど大変だったことか。それなのに、『クライスと結婚できないかも』と言わせてしまったのだ。噂の元凶を絶対に許すことはできない。
「生徒たちの中にまだその青フードは紛れているのでしょうか。王家の影は他の任務のため一旦帰ってしまったので、後は我々で探さなければなりませんね」
「絶対にその声の主を見つけ出す。青フード。いいかげん捕まえて俺の手で葬ってやる」
抑えきれず放った殺気にロイルが青い顔で諌める。
「クライス様、お気持ちはわかりますが、見つけてもすぐには殺さないでくださいね」
「……わかっている」
「ほんとですかね」
あとは、リオンたちから報告があるようなのでキルナ様の護衛を交代しますね。そう言い置いて二人はキルナのもとに行き、代わりにリオンとノエルが来た。
王家から騎士を借り、十分な護衛はつけているが、念の為自分か学友のうちの誰かを必ずキルナに付けるようにしている。「もうだいぶ嫌がらせの対処法はわかったから、こんなに厳重に守ってくれなくても平気だよ」という彼の意見は無視して。
「リオン、ノエル。何か報告があると聞いたが」
「はい。とても言いづらいお話なんですけど、僕たち、見てしまったんですぅ」
「何をだ?」
二人は複雑そうな顔をしながら、報告をはじめた。その内容に耳を疑う。
「は? キルナがユジンに嫌がらせをしているところを見ただと?」
「はい」
リオンは暗い面持ちで頷いた。ノエルの表情からもいつもの胡散臭い笑みが消えている。
「何を見たんだ?」
「今朝、ユジン様の靴の中にガラス片を仕込んでいるのを見つけ、声をかけたら逃げられてしまい……申し訳ございません」
「僕は今日の放課後、キルナちゃんがユジンくんの体操服に、笑いながら動物の血のようなものをぶちまけているところを見ましたぁ。僕に気づくとすぐに二階の窓から飛び降りてどこかにいっちゃって、そのまま見失ってしまいました。すみません」
あのキルナがユジンに嫌がらせ……。
靴の中にガラス片、体操服に血? そしてこの二人を巻いて逃げただと?
「ただ、その後、護衛のために私たちがお側についても、キルナ様は何事もなかったかのような態度でして」
「正直訳がわからないんですけど、クライス様に報告しておくべきかと思いましたので」
「それは本当にキルナだったのか?」
「はい。あれは、どう見てもキルナ様でした。あれだけ目立つ美しい容姿をしているので見間違えることはないかと」
「僕もバッチリ顔を見たので間違いありません。顔も声も、キルナちゃんでした」
信じられないことだが、この二人が自分に虚偽の報告をするとも思えない。一体何が起きているんだ?
「……ユジンを呼べ」
「大体片付いたな」
「一週間ほどかかりましたが、やっとですね」
ほっと安堵の息を吐くギア。正義感の強い彼は、今回の件にとても憤っていた。
ずらりと並んだ名前に一通り目を通す。自分ともキルナとも普段あまり関わりがない人間が多い。無関係な人間が、よくもまぁ好き勝手に噂を流すものだと驚く。
「いじめに関わった人間はその度合いに応じて処分しました。今回は王家も調査に関わっているので処罰は比較的重いものになっています。ただ、噂を流しはじめたのが誰なのかは結局わかりませんでしたね」
ロイルが読み終わった書類をまとめ、落胆の声で言った。
「ああ、これだけ徹底的に探しても顔を見た者はいなかった。証拠も残っていない。わかったのは声だけ…か」
「それもなんの特徴もない普通の声、おそらく我々と同年齢くらいの男の声だった、ということしかわからないので、そこから特定するのは難しいようです」
嫌がらせの実行犯についてはあらかた犯人がわかったが、不可解なことに、噂の出どころはいくら探してもわからなかった。
『医務室にいたら、誰かが言ったんです。キルナ様は闇属性で黒い髪を隠してるんだって』
『学園のトイレで誰かに聞いたんです。キルナ様が闇の魔力を使って魔獣を誘き寄せてるって』
誰がそう言ったのか、は皆知らないと言う。しかし、年齢は同い年くらいの男な気がする、そして、そういえば
『制服なのに青いフードを被っていた』
と声を揃えて言う。今考えれば違和感を感じるが、その時はなんとも思わなかった、と。
ユジンと俺の結婚を頑なに信じていたキルナに、やっと『クライスと結婚したい』と言わせることができた。そこに至るまでどれほど大変だったことか。それなのに、『クライスと結婚できないかも』と言わせてしまったのだ。噂の元凶を絶対に許すことはできない。
「生徒たちの中にまだその青フードは紛れているのでしょうか。王家の影は他の任務のため一旦帰ってしまったので、後は我々で探さなければなりませんね」
「絶対にその声の主を見つけ出す。青フード。いいかげん捕まえて俺の手で葬ってやる」
抑えきれず放った殺気にロイルが青い顔で諌める。
「クライス様、お気持ちはわかりますが、見つけてもすぐには殺さないでくださいね」
「……わかっている」
「ほんとですかね」
あとは、リオンたちから報告があるようなのでキルナ様の護衛を交代しますね。そう言い置いて二人はキルナのもとに行き、代わりにリオンとノエルが来た。
王家から騎士を借り、十分な護衛はつけているが、念の為自分か学友のうちの誰かを必ずキルナに付けるようにしている。「もうだいぶ嫌がらせの対処法はわかったから、こんなに厳重に守ってくれなくても平気だよ」という彼の意見は無視して。
「リオン、ノエル。何か報告があると聞いたが」
「はい。とても言いづらいお話なんですけど、僕たち、見てしまったんですぅ」
「何をだ?」
二人は複雑そうな顔をしながら、報告をはじめた。その内容に耳を疑う。
「は? キルナがユジンに嫌がらせをしているところを見ただと?」
「はい」
リオンは暗い面持ちで頷いた。ノエルの表情からもいつもの胡散臭い笑みが消えている。
「何を見たんだ?」
「今朝、ユジン様の靴の中にガラス片を仕込んでいるのを見つけ、声をかけたら逃げられてしまい……申し訳ございません」
「僕は今日の放課後、キルナちゃんがユジンくんの体操服に、笑いながら動物の血のようなものをぶちまけているところを見ましたぁ。僕に気づくとすぐに二階の窓から飛び降りてどこかにいっちゃって、そのまま見失ってしまいました。すみません」
あのキルナがユジンに嫌がらせ……。
靴の中にガラス片、体操服に血? そしてこの二人を巻いて逃げただと?
「ただ、その後、護衛のために私たちがお側についても、キルナ様は何事もなかったかのような態度でして」
「正直訳がわからないんですけど、クライス様に報告しておくべきかと思いましたので」
「それは本当にキルナだったのか?」
「はい。あれは、どう見てもキルナ様でした。あれだけ目立つ美しい容姿をしているので見間違えることはないかと」
「僕もバッチリ顔を見たので間違いありません。顔も声も、キルナちゃんでした」
信じられないことだが、この二人が自分に虚偽の報告をするとも思えない。一体何が起きているんだ?
「……ユジンを呼べ」
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
BLゲームの悪役に転生したら攻略対象者が全員ヒロインに洗脳されてた
さ
BL
主人公のレオンは、幼少期に前世の記憶を思い出し、この世界がBLゲームで、自身は断罪される悪役だと気づく。
断罪を回避するため、極力攻略対象者たちと関わらないように生きてきた。
ーーそれなのに。
婚約者に婚約は破棄され、
気づけば断罪寸前の立場に。
しかも理由もわからないまま、
何もしていないはずの攻略対象者達に嫌悪を向けられてーー。
※最終的にハッピーエンド
※愛され悪役令息
悪役令息(Ω)に転生した俺、破滅回避のためΩ隠してαを装ってたら、冷徹α第一王子に婚約者にされて溺愛されてます!?
水凪しおん
BL
前世の記憶を持つ俺、リオネルは、BL小説の悪役令息に転生していた。
断罪される運命を回避するため、本来希少なΩである性を隠し、出来損ないのαとして目立たず生きてきた。
しかし、突然、原作のヒーローである冷徹な第一王子アシュレイの婚約者にされてしまう。
これは破滅フラグに違いないと絶望する俺だが、アシュレイの態度は原作とどこか違っていて……?
塩対応の同室αが実は俺の番を狙っていた
雪兎
BL
あらすじ
全寮制の名門学園に入学したΩの俺は、入寮初日から最悪の同室相手に当たった。
相手は学年でも有名な優等生α。
成績優秀、運動もできる、顔もいい。なのに——
めちゃくちゃ塩対応。
挨拶しても「……ああ」。
話しかけても「別に」。
距離も近づけないし、なぜか妙に警戒されている気がする。
(俺、そんなに嫌われてる……?)
同室なのに会話は最低限。
むしろ避けられている気さえある。
けれどある日、発情期トラブルで倒れた俺を助けてくれたのは、
その塩対応αだった。
しかも普段とは違い、必死な顔で言われる。
「……他のαに近づくな」
「お前は俺の……」
そこで言葉を飲み込む彼。
それ以来、少しずつ態度が変わり始める。
距離は相変わらず近くない。
口数も少ない。
だけど――
他のαが近づくと、さりげなく間に入る。
発情期が近いと察すると、さりげなく世話を焼く。
そして時々、独占欲を隠しきれない視線。
実は彼はずっと前から知っていた。
俺が、
自分の運命の番かもしれないΩだということを。
だからこそ距離を取っていた。
触れたら、もう止まれなくなるから。
だけど同室生活の中で、
少しずつ、確実に距離は変わっていく。
塩対応の裏に隠されていたのは――
重すぎるほどの独占欲だった。
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放
大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。
嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。
だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。
嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。
混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。
琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う――
「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」
知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。
耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。
婚約解消されたネコミミ悪役令息はなぜか王子に溺愛される
日色
BL
大好きな王子に婚約解消されてしまった悪役令息ルジア=アンセルは、ネコミミの呪いをかけられると同時に前世の記憶を思い出した。最後の情けにと両親に与えられた猫カフェで、これからは猫とまったり生きていくことに決めた……はずなのに! なぜか婚約解消したはずの王子レオンが押しかけてきて!?
『悪役令息溺愛アンソロジー』に寄稿したお話です。全11話になる予定です。
*ムーンライトノベルズにも投稿しています。