なんか違う? と思ったら兄弟の中で自分だけ人間だった話

日色

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第一章

第7話 比べてしまう自分

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 そんなふうに出会いは最悪だった僕たちだけど、意外なことに僕とルカはもうお互いの名前を呼び捨てにするほど仲良くなった。ルカはあの冷徹な口調が信じられないくらい優しくしてくれる。聞けばあの時は緊張して気が立っていたらしい。

(うん、それは仕方がないよね。僕だってこの家から出て急に知らない人だらけのお屋敷に行ったら、緊張して絶対変になってしまうもの)

 彼と一緒におしゃべりする時間はとても楽しい。年上ばかりに囲まれて生活していたから、同い年の子どもとわいわい遊ぶのは新鮮でどれだけ遊んでも遊び足りないくらいだ。ただ、僕は彼が来てからというもの、とてつもない劣等感にさいなまれていた。

 とくにそれを感じるのは家庭教師のシオン先生、ルカと三人でのお勉強タイム。今日も円形の机を取り囲むように座って問題集を解いていると、隣に座っているルカがうう~んと伸びをしながら言った。

「終わったあ~」
「え……もう?」

 一緒に始めた……というか、なんなら僕の方が先に数ページ進めていた問題集をルカはものの数分で解き終えてしまったらしい。しかも当然のように満点。

「時間が余りましたね。ならルカ君、次はこれをやってください」
「え~!? シオン先生、ひどいですよ。せっかく終わったのにこんなに分厚い問題集を渡すなんて」

 分厚い上によりレベルの高そうな問題集を渡されたルカはぶつぶつ文句を言いながらも、スムーズにペンを動かす。そのサラサラと滑るペンの音が、一層僕の焦りを掻き立てる。

(まだ2ページしか進んでない。どの問題も結構難しいし、全然終わりそうにない……)

 シオン先生はどう思ってるんだろう。こんな出来の悪い生徒を持って最悪だって思ってるかな? 急に不安になってきて顔色を窺うも、先生はいつも通りあまり感情を出すことなく向かいの席に座って僕たちの様子を見守っている。質問すると淡々とした口調で教えてくれるところも普段と変わらない。

 区切りのいいところで先生に提出をして丸つけをしてもらう。
 シュルン、シュッ、という先生のペンの動きと音で予想はついていたけれど、20問中13問しか合っていなかった。もともと頭はあまり良くないとはいえ、ここまでたくさん間違えることは滅多にない。周りのことが気になりすぎて注意散漫になっていたことが原因なのは明らかだ。

「ここと、ここは使う公式を間違っています。もう一度教科書で調べてやり直してください」

 戻された問題集を受け取り、バツのついた問題に向き合う。
 その間に、ルカがわからないところを先生に質問していた。聞こえてくる内容は僕には理解できないものばかり。

「あっそういうことだったのかあ。わかりました、シオン先生。ありがとうございます!」
「ふむ、ルカ君はなかなか理解が早いですね」

(シオン先生が、褒めた……?)

 先生がぽつりと漏らした褒め言葉に衝撃を受ける。僕は一度も褒められたことがないから、てっきり先生は褒めないタイプなのだと思っていた。

(そっか、単に僕に褒めるところがなかっただけだったんだ)

「ほんとに、ルカはすごいね。僕ももっと頑張るよ」

 悔しかったけど、なんとなく黙っている方がカッコ悪い気がして僕も先生に乗っかるようにルカを褒める。すると、ルカは可愛らしく頬をピンクに染めて照れながらこう返した。

「そんな、アーシュの方がすごいって。だって、こんなに何度もやり直して、教科書もボロボロになるまで見直してさ。昨日だって宿題を朝遅くまで頑張ってやってたの僕知ってるよ」
「そう……だけど。結局できるようになってないから意味ないよ」

 曖昧に笑って僕は俯く。

 ルカは賢い上に性格もいい。何でもうまくできる。
 それに比べて僕ときたら。

 ルカにも一つくらいできないことがあればいいのに、なんて考えてしまう。ああ、そういえば人間の血が混ざってるのがコンプレックスだって言ってたな。半分でも人間の血が混ざっていることがどうしても許せないのだと。
「ほんと最悪~」ってぶつくさ文句を言ってたことを思い出し、彼にもそういう弱み? みたいな部分があってよかったなんて思っちゃったりして……

 はぁ、何を考えてるんだろう。ルカの母親が人間なのはルカのせいじゃない。そもそも彼が言うほど親が人間なのは悪いことでもなんでもないことだと思うのに。

 何度も彼の不満や愚痴を聞いているうちに、自分は。なんて変な優越感を感じるようになってしまった。

(あああああぁ、もう! なんて嫌なやつなんだろう。バカな上に性格も悪いとか、サイテーだ。最低最低最低最低最低っ!!!)

 僕は叫び出しそうな気持ちをなんとか抑えながら、引き続き問題に取りかかった。
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