60 / 156
白衣の天使編
人工呼吸……? 1
しおりを挟む
「……ねぇ」
防波堤の上から消波ブロックの隙間を覗き込み、舞は声を掛けた。
「……ちょっと」
返事はない。
雛子の姿も目視で確認することが出来ない。
「もう良いからっ! 早く戻ってきなさいよっ!!」
大声で呼びかけても、雛子が戻ってこない。
まずいことになった。
額に冷や汗が滲む。
「だ、誰かっ……」
もつれそうになる足を必死に動かし、元来た防波堤を全力で走る。
(どうしようっ……!!)
母の形見だなんて大嘘もいいところだ。
ちょっとした憂さ晴らしのつもりだった。
昨日恭平と親密そうにしているのを目の当たりにして、雛子の事を疎ましいと思う気持ちが尚更強くなったからだ。
少し痛い目に合わせてやろう。
それもせいぜい、今日着て帰るはずの服がびしょ濡れになったとか、そのくらいで良かったはずだった。
「た、助けてっ!! 早く来てっ!!」
相変わらずビーチで遊んでいる面々に、舞は必死で叫ぶ。息を切らす舞の姿に、皆不思議そうな顔を向ける。
「どうしました? 雛子は?」
夏帆が訊ねる。
「お、落ちてっ……海にっ……」
「え?」
口がカラカラで上手く喋る事も出来ない。
「落ち着いて、篠原さん。どうしたの?」
真理亜が舞の背を擦りながら顔を覗き込む。
「だからっ! あの子が海に落ちたの! 全然上がってこないのよっ!!」
舞が叫ぶ。皆の顔色が一斉に変わった。
「どこだ」
「あっち、防波堤の」
「早く案内しろっ!!!!」
恭平の怒声に一瞬びくりとするも、すぐ雛子の降りた地点へとまた走り出す。
舞を先頭に、恭平と鷹峯、その他皆が着いてくる。
「ここ、ここから中に入って、戻ってこないっ……」
舞はボロボロと泣きながら消波ブロックの隙間を指差す。
恭平が躊躇うことなくその中へ飛び込む。
「ちょっと恭平っ……!! あなたまで巻き込まれたらどうするのよ!?」
恭平の行動に真理亜がギョッとして声を上げる。
「言ってる場合かっ!!」
恭平が消波ブロックの下から怒鳴り返す。
「雨宮!! いるか!! 返事しろっ!!!!」
中は複雑に入り組んでおり、その上足場も悪い。
(あいつ何でこんな所にっ……!)
足を取られないよう気を付けながら、恭平は進んでいく。
「雨宮っ!!!!」
程なくして、隙間のひとつに揺蕩う人影を見つけた。
まるで打ち捨てられた人形のようにうつ伏せで揺らめくその姿に、心の底からゾッとした。
「おいっ!! しっかりしろっ!!雨宮っ!!!!」
脇に手を差し込み力の限り引き上げる。表を向いたその顔は、信じられないほど真っ白で生気がない。
「クソッ……!! 起きろ、雨宮っ!!!!」
足が何かに挟まれている。このまま無理矢理引き抜けば折れるかもしれない。頭では分かっていたが、それよりも救助する事が先決だ。
「おい……!! 起きろって……!!」
このままここにいれば自分も巻き込まれる。そうなる前に戻らなければならない。
恭平はありったけの力で、完全に脱力した雛子の身体を引っ張る。
「ッ……! 抜けたっ!!」
そのまま意識のない雛子を引き摺り、最初にブロックを降りた場所まで戻る。
「救助用ロープありました!!」
「桜井君! これを!!」
上から鷹峯と悠貴、夏帆が救助用ロープを降ろす。恭平は雛子にロープを括り付け、皆が雛子を引き上げている間に自身はブロックに足を掛けて器用に上までかけ登る。
「しっかりしろっ!! おいっ!!!!」
紫色に変色した唇に、恭平は自身の唇を押し当て息を吹き込む。
防波堤の上から消波ブロックの隙間を覗き込み、舞は声を掛けた。
「……ちょっと」
返事はない。
雛子の姿も目視で確認することが出来ない。
「もう良いからっ! 早く戻ってきなさいよっ!!」
大声で呼びかけても、雛子が戻ってこない。
まずいことになった。
額に冷や汗が滲む。
「だ、誰かっ……」
もつれそうになる足を必死に動かし、元来た防波堤を全力で走る。
(どうしようっ……!!)
母の形見だなんて大嘘もいいところだ。
ちょっとした憂さ晴らしのつもりだった。
昨日恭平と親密そうにしているのを目の当たりにして、雛子の事を疎ましいと思う気持ちが尚更強くなったからだ。
少し痛い目に合わせてやろう。
それもせいぜい、今日着て帰るはずの服がびしょ濡れになったとか、そのくらいで良かったはずだった。
「た、助けてっ!! 早く来てっ!!」
相変わらずビーチで遊んでいる面々に、舞は必死で叫ぶ。息を切らす舞の姿に、皆不思議そうな顔を向ける。
「どうしました? 雛子は?」
夏帆が訊ねる。
「お、落ちてっ……海にっ……」
「え?」
口がカラカラで上手く喋る事も出来ない。
「落ち着いて、篠原さん。どうしたの?」
真理亜が舞の背を擦りながら顔を覗き込む。
「だからっ! あの子が海に落ちたの! 全然上がってこないのよっ!!」
舞が叫ぶ。皆の顔色が一斉に変わった。
「どこだ」
「あっち、防波堤の」
「早く案内しろっ!!!!」
恭平の怒声に一瞬びくりとするも、すぐ雛子の降りた地点へとまた走り出す。
舞を先頭に、恭平と鷹峯、その他皆が着いてくる。
「ここ、ここから中に入って、戻ってこないっ……」
舞はボロボロと泣きながら消波ブロックの隙間を指差す。
恭平が躊躇うことなくその中へ飛び込む。
「ちょっと恭平っ……!! あなたまで巻き込まれたらどうするのよ!?」
恭平の行動に真理亜がギョッとして声を上げる。
「言ってる場合かっ!!」
恭平が消波ブロックの下から怒鳴り返す。
「雨宮!! いるか!! 返事しろっ!!!!」
中は複雑に入り組んでおり、その上足場も悪い。
(あいつ何でこんな所にっ……!)
足を取られないよう気を付けながら、恭平は進んでいく。
「雨宮っ!!!!」
程なくして、隙間のひとつに揺蕩う人影を見つけた。
まるで打ち捨てられた人形のようにうつ伏せで揺らめくその姿に、心の底からゾッとした。
「おいっ!! しっかりしろっ!!雨宮っ!!!!」
脇に手を差し込み力の限り引き上げる。表を向いたその顔は、信じられないほど真っ白で生気がない。
「クソッ……!! 起きろ、雨宮っ!!!!」
足が何かに挟まれている。このまま無理矢理引き抜けば折れるかもしれない。頭では分かっていたが、それよりも救助する事が先決だ。
「おい……!! 起きろって……!!」
このままここにいれば自分も巻き込まれる。そうなる前に戻らなければならない。
恭平はありったけの力で、完全に脱力した雛子の身体を引っ張る。
「ッ……! 抜けたっ!!」
そのまま意識のない雛子を引き摺り、最初にブロックを降りた場所まで戻る。
「救助用ロープありました!!」
「桜井君! これを!!」
上から鷹峯と悠貴、夏帆が救助用ロープを降ろす。恭平は雛子にロープを括り付け、皆が雛子を引き上げている間に自身はブロックに足を掛けて器用に上までかけ登る。
「しっかりしろっ!! おいっ!!!!」
紫色に変色した唇に、恭平は自身の唇を押し当て息を吹き込む。
0
あなたにおすすめの小説
秘書と社長の秘密
廣瀬純七
大衆娯楽
社内の調査のため、社長・高橋健一はこっそり秘書・木村由紀と不思議なアプリで入れ替わることに。
突然“社長役”を任された由紀と、自由に動ける立場を手に入れた高橋。
ふたりの秘密の入れ替わり作戦は、どの様な結末になるのか?
ズボラ上司の甘い罠
松田丹子(まつだにこ)
恋愛
小松春菜の上司、小野田は、無精髭に瓶底眼鏡、乱れた髪にゆるいネクタイ。
仕事はできる人なのに、あまりにももったいない!
かと思えば、イメチェンして来た課長はタイプど真ん中。
やばい。見惚れる。一体これで仕事になるのか?
上司の魅力から逃れようとしながら逃れきれず溺愛される、自分に自信のないフツーの女子の話。になる予定。
(学園 + アイドル ÷ 未成年)× オッサン ≠ いちゃらぶ生活
まみ夜
キャラ文芸
年の差ラブコメ X 学園モノ X オッサン頭脳
様々な分野の専門家、様々な年齢を集め、それぞれ一芸をもっている学生が講師も務めて教え合う教育特区の学園へ出向した五十歳オッサンが、十七歳現役アイドルと同級生に。
子役出身の女優、芸能事務所社長、元セクシー女優なども登場し、学園の日常はハーレム展開?
第二巻は、ホラー風味です。
【ご注意ください】
※物語のキーワードとして、摂食障害が出てきます
※ヒロインの少女には、ストーカー気質があります
※主人公はいい年してるくせに、ぐちぐち悩みます
第二巻「夏は、夜」の改定版が完結いたしました。
この後、第三巻へ続くかはわかりませんが、万が一開始したときのために、「お気に入り」登録すると忘れたころに始まって、通知が意外とウザいと思われます。
表紙イラストはAI作成です。
(セミロング女性アイドルが彼氏の腕を抱く 茶色ブレザー制服 アニメ)
題名が「(同級生+アイドル÷未成年)×オッサン≠いちゃらぶ」から変更されております
恋とキスは背伸びして
葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員
成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長
年齢差 9歳
身長差 22㎝
役職 雲泥の差
この違い、恋愛には大きな壁?
そして同期の卓の存在
異性の親友は成立する?
数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの
二人の恋の物語
明日のために、昨日にサヨナラ(goodbye,hello)
松田丹子(まつだにこ)
恋愛
スパダリな父、優しい長兄、愛想のいい次兄、チャラい従兄に囲まれて、男に抱く理想が高くなってしまった女子高生、橘礼奈。
平凡な自分に見合うフツーな高校生活をエンジョイしようと…思っているはずなのに、幼い頃から抱いていた淡い想いを自覚せざるを得なくなり……
恋愛、家族愛、友情、部活に進路……
緩やかでほんのり甘い青春模様。
*関連作品は下記の通りです。単体でお読みいただけるようにしているつもりです(が、ひたすらキャラクターが多いのであまりオススメできません…)
★展開の都合上、礼奈の誕生日は親世代の作品と齟齬があります。一種のパラレルワールドとしてご了承いただければ幸いです。
*関連作品
『神崎くんは残念なイケメン』(香子視点)
『モテ男とデキ女の奥手な恋』(政人視点)
上記二作を読めばキャラクターは押さえられると思います。
(以降、時系列順『物狂ほしや色と情』、『期待ハズレな吉田さん、自由人な前田くん』、『さくやこの』、『爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい』、『色ハくれなゐ 情ハ愛』、『初恋旅行に出かけます』)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる