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白衣の天使編
人工呼吸……? 1
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「……ねぇ」
防波堤の上から消波ブロックの隙間を覗き込み、舞は声を掛けた。
「……ちょっと」
返事はない。
雛子の姿も目視で確認することが出来ない。
「もう良いからっ! 早く戻ってきなさいよっ!!」
大声で呼びかけても、雛子が戻ってこない。
まずいことになった。
額に冷や汗が滲む。
「だ、誰かっ……」
もつれそうになる足を必死に動かし、元来た防波堤を全力で走る。
(どうしようっ……!!)
母の形見だなんて大嘘もいいところだ。
ちょっとした憂さ晴らしのつもりだった。
昨日恭平と親密そうにしているのを目の当たりにして、雛子の事を疎ましいと思う気持ちが尚更強くなったからだ。
少し痛い目に合わせてやろう。
それもせいぜい、今日着て帰るはずの服がびしょ濡れになったとか、そのくらいで良かったはずだった。
「た、助けてっ!! 早く来てっ!!」
相変わらずビーチで遊んでいる面々に、舞は必死で叫ぶ。息を切らす舞の姿に、皆不思議そうな顔を向ける。
「どうしました? 雛子は?」
夏帆が訊ねる。
「お、落ちてっ……海にっ……」
「え?」
口がカラカラで上手く喋る事も出来ない。
「落ち着いて、篠原さん。どうしたの?」
真理亜が舞の背を擦りながら顔を覗き込む。
「だからっ! あの子が海に落ちたの! 全然上がってこないのよっ!!」
舞が叫ぶ。皆の顔色が一斉に変わった。
「どこだ」
「あっち、防波堤の」
「早く案内しろっ!!!!」
恭平の怒声に一瞬びくりとするも、すぐ雛子の降りた地点へとまた走り出す。
舞を先頭に、恭平と鷹峯、その他皆が着いてくる。
「ここ、ここから中に入って、戻ってこないっ……」
舞はボロボロと泣きながら消波ブロックの隙間を指差す。
恭平が躊躇うことなくその中へ飛び込む。
「ちょっと恭平っ……!! あなたまで巻き込まれたらどうするのよ!?」
恭平の行動に真理亜がギョッとして声を上げる。
「言ってる場合かっ!!」
恭平が消波ブロックの下から怒鳴り返す。
「雨宮!! いるか!! 返事しろっ!!!!」
中は複雑に入り組んでおり、その上足場も悪い。
(あいつ何でこんな所にっ……!)
足を取られないよう気を付けながら、恭平は進んでいく。
「雨宮っ!!!!」
程なくして、隙間のひとつに揺蕩う人影を見つけた。
まるで打ち捨てられた人形のようにうつ伏せで揺らめくその姿に、心の底からゾッとした。
「おいっ!! しっかりしろっ!!雨宮っ!!!!」
脇に手を差し込み力の限り引き上げる。表を向いたその顔は、信じられないほど真っ白で生気がない。
「クソッ……!! 起きろ、雨宮っ!!!!」
足が何かに挟まれている。このまま無理矢理引き抜けば折れるかもしれない。頭では分かっていたが、それよりも救助する事が先決だ。
「おい……!! 起きろって……!!」
このままここにいれば自分も巻き込まれる。そうなる前に戻らなければならない。
恭平はありったけの力で、完全に脱力した雛子の身体を引っ張る。
「ッ……! 抜けたっ!!」
そのまま意識のない雛子を引き摺り、最初にブロックを降りた場所まで戻る。
「救助用ロープありました!!」
「桜井君! これを!!」
上から鷹峯と悠貴、夏帆が救助用ロープを降ろす。恭平は雛子にロープを括り付け、皆が雛子を引き上げている間に自身はブロックに足を掛けて器用に上までかけ登る。
「しっかりしろっ!! おいっ!!!!」
紫色に変色した唇に、恭平は自身の唇を押し当て息を吹き込む。
防波堤の上から消波ブロックの隙間を覗き込み、舞は声を掛けた。
「……ちょっと」
返事はない。
雛子の姿も目視で確認することが出来ない。
「もう良いからっ! 早く戻ってきなさいよっ!!」
大声で呼びかけても、雛子が戻ってこない。
まずいことになった。
額に冷や汗が滲む。
「だ、誰かっ……」
もつれそうになる足を必死に動かし、元来た防波堤を全力で走る。
(どうしようっ……!!)
母の形見だなんて大嘘もいいところだ。
ちょっとした憂さ晴らしのつもりだった。
昨日恭平と親密そうにしているのを目の当たりにして、雛子の事を疎ましいと思う気持ちが尚更強くなったからだ。
少し痛い目に合わせてやろう。
それもせいぜい、今日着て帰るはずの服がびしょ濡れになったとか、そのくらいで良かったはずだった。
「た、助けてっ!! 早く来てっ!!」
相変わらずビーチで遊んでいる面々に、舞は必死で叫ぶ。息を切らす舞の姿に、皆不思議そうな顔を向ける。
「どうしました? 雛子は?」
夏帆が訊ねる。
「お、落ちてっ……海にっ……」
「え?」
口がカラカラで上手く喋る事も出来ない。
「落ち着いて、篠原さん。どうしたの?」
真理亜が舞の背を擦りながら顔を覗き込む。
「だからっ! あの子が海に落ちたの! 全然上がってこないのよっ!!」
舞が叫ぶ。皆の顔色が一斉に変わった。
「どこだ」
「あっち、防波堤の」
「早く案内しろっ!!!!」
恭平の怒声に一瞬びくりとするも、すぐ雛子の降りた地点へとまた走り出す。
舞を先頭に、恭平と鷹峯、その他皆が着いてくる。
「ここ、ここから中に入って、戻ってこないっ……」
舞はボロボロと泣きながら消波ブロックの隙間を指差す。
恭平が躊躇うことなくその中へ飛び込む。
「ちょっと恭平っ……!! あなたまで巻き込まれたらどうするのよ!?」
恭平の行動に真理亜がギョッとして声を上げる。
「言ってる場合かっ!!」
恭平が消波ブロックの下から怒鳴り返す。
「雨宮!! いるか!! 返事しろっ!!!!」
中は複雑に入り組んでおり、その上足場も悪い。
(あいつ何でこんな所にっ……!)
足を取られないよう気を付けながら、恭平は進んでいく。
「雨宮っ!!!!」
程なくして、隙間のひとつに揺蕩う人影を見つけた。
まるで打ち捨てられた人形のようにうつ伏せで揺らめくその姿に、心の底からゾッとした。
「おいっ!! しっかりしろっ!!雨宮っ!!!!」
脇に手を差し込み力の限り引き上げる。表を向いたその顔は、信じられないほど真っ白で生気がない。
「クソッ……!! 起きろ、雨宮っ!!!!」
足が何かに挟まれている。このまま無理矢理引き抜けば折れるかもしれない。頭では分かっていたが、それよりも救助する事が先決だ。
「おい……!! 起きろって……!!」
このままここにいれば自分も巻き込まれる。そうなる前に戻らなければならない。
恭平はありったけの力で、完全に脱力した雛子の身体を引っ張る。
「ッ……! 抜けたっ!!」
そのまま意識のない雛子を引き摺り、最初にブロックを降りた場所まで戻る。
「救助用ロープありました!!」
「桜井君! これを!!」
上から鷹峯と悠貴、夏帆が救助用ロープを降ろす。恭平は雛子にロープを括り付け、皆が雛子を引き上げている間に自身はブロックに足を掛けて器用に上までかけ登る。
「しっかりしろっ!! おいっ!!!!」
紫色に変色した唇に、恭平は自身の唇を押し当て息を吹き込む。
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