22 / 104
石棺
しおりを挟む
Tさんが子どもの頃、近所には遺跡群があった。
弥生時代のものらしく、町一帯に遺跡は点在していた。
住居の跡や、有力者の墓もあった。
動物の骨や木の実の殻などを捨てた食べかす、土器なども出土した。
遺跡の周辺は公園になっているところもあり、近所の子ども達もよく遊んだ。
Tさんは、小高い丘のようになっている古墳でそり遊びをしていたが、ある時怖くなって友達に聞いた。
「古墳ってお墓だよね?そりなんてして、お墓にいる人が怒らないかな」
友人は笑って言った。
「大丈夫だよ。遺跡は沢山あるけど、遊んだからって、怖い目に遭った子はいないよ。きっと、埋まってる人たちは優しいんだよ」
その言葉でTさんは安心した。
ある日、学習塾の帰り、暗い町の中をTさんは一人で帰宅していた。
Tさんはある遺跡の前を通りがかった。
その遺跡は石でできた棺のような四角い箱状のものだった。
暗い中、石棺のようなものがぼんやりと街灯に照らされ、不気味だった。
周囲はフェンスで囲んであり、石棺に関する説明文が書かれた掲示物がある。
Tさんはいつも通りがかる時、石棺から何かが出てくるんじゃないかと怯えていた。
だが、友人の「遺跡の人は優しい」という言葉で勇気づけられていた。
試しに、近くで見てみることにした。
Tさんはおそるおそる近づく。
その石の陰に何かがいた。
赤黒い色をしたぼんやりとした人影だった。
もやのように輪郭はあいまいで、石の棺のそばに膝を抱えるように座っている。
その表情はよく見えないが、無表情を思わせるまなざしでTさんを見ていた。
Tさんは驚愕し、一目散に逃げかえった。
翌日、Tさんはその事情を友人に話した。
「…そんなことがあってね。」Tさんは頭をかいて恥ずかしそうにした「でも、僕怖がることなかったな…。この遺跡一帯の人たちって優しい人って話だもんね」
友人は怪訝な顔をして答えた。
「確かに、遺跡の人たちは優しいって噂はあるけどさ…。Tくんが言ってる石棺は…鏡とか、剣とか、ツボみたいな出土品が入っていただけだよ。墓じゃないんだ。だれも埋まっていないはずだよ」
それ以来、Tさんはその石棺を避けるように回り道していたという。
【おわり】
弥生時代のものらしく、町一帯に遺跡は点在していた。
住居の跡や、有力者の墓もあった。
動物の骨や木の実の殻などを捨てた食べかす、土器なども出土した。
遺跡の周辺は公園になっているところもあり、近所の子ども達もよく遊んだ。
Tさんは、小高い丘のようになっている古墳でそり遊びをしていたが、ある時怖くなって友達に聞いた。
「古墳ってお墓だよね?そりなんてして、お墓にいる人が怒らないかな」
友人は笑って言った。
「大丈夫だよ。遺跡は沢山あるけど、遊んだからって、怖い目に遭った子はいないよ。きっと、埋まってる人たちは優しいんだよ」
その言葉でTさんは安心した。
ある日、学習塾の帰り、暗い町の中をTさんは一人で帰宅していた。
Tさんはある遺跡の前を通りがかった。
その遺跡は石でできた棺のような四角い箱状のものだった。
暗い中、石棺のようなものがぼんやりと街灯に照らされ、不気味だった。
周囲はフェンスで囲んであり、石棺に関する説明文が書かれた掲示物がある。
Tさんはいつも通りがかる時、石棺から何かが出てくるんじゃないかと怯えていた。
だが、友人の「遺跡の人は優しい」という言葉で勇気づけられていた。
試しに、近くで見てみることにした。
Tさんはおそるおそる近づく。
その石の陰に何かがいた。
赤黒い色をしたぼんやりとした人影だった。
もやのように輪郭はあいまいで、石の棺のそばに膝を抱えるように座っている。
その表情はよく見えないが、無表情を思わせるまなざしでTさんを見ていた。
Tさんは驚愕し、一目散に逃げかえった。
翌日、Tさんはその事情を友人に話した。
「…そんなことがあってね。」Tさんは頭をかいて恥ずかしそうにした「でも、僕怖がることなかったな…。この遺跡一帯の人たちって優しい人って話だもんね」
友人は怪訝な顔をして答えた。
「確かに、遺跡の人たちは優しいって噂はあるけどさ…。Tくんが言ってる石棺は…鏡とか、剣とか、ツボみたいな出土品が入っていただけだよ。墓じゃないんだ。だれも埋まっていないはずだよ」
それ以来、Tさんはその石棺を避けるように回り道していたという。
【おわり】
11
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる