36 / 104
雲梯(うんてい)と青年
しおりを挟む
老紳士Sさんは、ふと思いついて、近所の公園で雲梯を始めた。
ぶら下がり、腕と背中に力を入れ、可能な限り往復をした。
筋肉痛になるが健康になれる気がした。
そんな中、朝からスーツを着たまま、公園のベンチに座って缶ビールを飲む青年を見つけた。
青年はSさんのように毎日公園に来る。
だが、彼は日に日にスーツが乱れ、髪はボサボサになり、酒の量が増えていった。
心配になったSさんは、ある日思い切って声をかけた。
青年は驚き、拒絶を示したが、次第に心を許し話をはじめた。
仕事がうまく行かず、クビになり、それを家族に話せない。だから公園で酒を飲んで夕方に帰っている…とのことだった。
Sさんはちょっとした親心か
「君、一緒に雲梯でもして体を動かしませんか。ぶら下がれば、気が晴れるかもしれない」
と言った。
青年は笑った。
「お気持ちはありがたいですが、間に合ってますよ。僕が先でしたから。」
青年は乱れたネクタイと襟を外した。
その首には、紐状のもので強く締められた凹みがあり、黒紫に変色していた。
Sさんはギョッとして、腰を抜かした。
すぐに顔を上げると…青年は消えていた。
後日、Sさんが近所の人に聞いた所によると、かつてそのような青年が公園にたむろしていた。
だが、結局は雲梯にネクタイを結びつけ、自ら命を断った…そんな事があったそうだ。
【おわり】
ぶら下がり、腕と背中に力を入れ、可能な限り往復をした。
筋肉痛になるが健康になれる気がした。
そんな中、朝からスーツを着たまま、公園のベンチに座って缶ビールを飲む青年を見つけた。
青年はSさんのように毎日公園に来る。
だが、彼は日に日にスーツが乱れ、髪はボサボサになり、酒の量が増えていった。
心配になったSさんは、ある日思い切って声をかけた。
青年は驚き、拒絶を示したが、次第に心を許し話をはじめた。
仕事がうまく行かず、クビになり、それを家族に話せない。だから公園で酒を飲んで夕方に帰っている…とのことだった。
Sさんはちょっとした親心か
「君、一緒に雲梯でもして体を動かしませんか。ぶら下がれば、気が晴れるかもしれない」
と言った。
青年は笑った。
「お気持ちはありがたいですが、間に合ってますよ。僕が先でしたから。」
青年は乱れたネクタイと襟を外した。
その首には、紐状のもので強く締められた凹みがあり、黒紫に変色していた。
Sさんはギョッとして、腰を抜かした。
すぐに顔を上げると…青年は消えていた。
後日、Sさんが近所の人に聞いた所によると、かつてそのような青年が公園にたむろしていた。
だが、結局は雲梯にネクタイを結びつけ、自ら命を断った…そんな事があったそうだ。
【おわり】
10
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる