【怖い話】さしかけ怪談

色白ゆうじろう

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不良徒のゲーム

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元不良のNさんの話。

彼は若い頃、町の不良たちとつるんでいた。
ある日の夜中、廃業となったゲームセンターに忍び込み、不良仲間と１台のゲームを盗んできた。

それはパンチングゲームで、グローブをはめ、思い切り殴ってハイスコアを狙うというゲームであった。

さっそく、不良仲間とたまり場にしていた、いかがわしいバイク屋のガレージに設置し、好き放題遊んだ。

不良徒同士でパンチ力を競い合った。

仲間数人が、荒々しくパンチをしていく。

Nさんの番が来ると、切れのあるパンチを繰り出し、パンチング台をなぎ倒した。

不良仲間はどよめいた。
Nさんはボクシングを習っていたのだ。

「おい、だれかこいつに勝てるか」
不良仲間はそう騒ぎ出した。

一人悪ノリの好きなものが立ち上がり、金属バットを持ち出すと、パンチ台にフルスイングした。

当然、ハイスコアが出た。
不良たちははしゃいで盛り上がったそうだ。

次の日、最初に殴った者が、他校の不良と喧嘩になり、殴られた。

その次の日、二番目に殴った者が、段差に躓いて、顔面を街路樹にぶつけた。

また次の日、三番目に殴った者が、路上で転倒し、縁石に頭をぶつけた。

不良たちは戦慄した。
パンチングゲームで遊んだものが、もれなく災難に遭っている。

そのうえ、災難の威力は上がっていて…不良たち自身のパンチ力に比例しているようにも見えた。

Nさんは馬鹿馬鹿しいと思っていた。
だが、いよいよNさんの番になり、Nさんも犠牲になった。

車道を横断していると、車にはねられ、アゴの骨を折った。

Nさんは、自分のケガにも怯えたが、仲間の身を思うとさらに恐ろしくなった。

自分の後に殴った男は…金属バットで殴っていたのである。

Nさんの予感は的中した。

金属バットを持ち出した仲間は、バイクでパトカーにちょっかいを出し、追われていた。

逃走中、赤信号で交差点に進入し、交差道路を直進してきた４ｔトラックに撥ね飛ばされた。
撥ね飛ばされた先に、鉄でできた手すりがあったらしい。

その仲間は亡くなった。
葬式の時に遺体を見てみると、頭部には、手すりでできたのであろう…金属バットほどの太さの円筒状に、頭頂部が凹んでいたそうだ。

Nさんが後に聞いた話によると、廃墟になったゲームセンターは、金銭を巡る刃傷沙汰があって人が死んでいたらしい。
それが原因となって客が来なくなったのだとか…

結局、不良たちは、再び夜の闇に紛れてパンチングゲームを返却に行ったそうだ。

【おわり】

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