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小学生が釣り上げたもの
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Bさんが小学生の頃の話。
Bさんの通っていた小学校の近くにため池があった。
雑木林の中にあり、暗く、ハスの葉が浮いているため池だった。
噂ではブラックバスが釣れるということで、大人の釣り人を見かけたりもした。
一方小学校では、ため池での遊びが一切禁止されていた。
かつて、ため池で遊んでいた子供に事故が起きたからに他ならない。
それでもBさんは、仲間の悪ガキたちと一緒にため池へ釣りに出かけた。
Bさん達悪ガキ男子連は、学校の決まりを守ろうという遵法精神は持ち合わせていなかった。
昼間なのに雑木林に囲まれ、薄暗かった。
辺りはひんやりとして、虫の声も木々のさざめきもなく静かだった。
若干不気味に思ったが、Bさん一行は釣りを始めた。
面白いように釣れた。
ブルーギルはもちろん、ブラックバス、スモールマウスバスと外来魚が沢山釣れる。
Bさん達は夢中になって釣りに没頭した。
気付けば夕刻になり、辺りは暗くなり始めていた。
「あともう一投して帰ろうか」
Bさん達は最後にキャスティングした。
水音もせず、すっと水面にルアーは沈んでいく。
Bさんは何か手ごたえを感じた。
竿を引いてみる。
糸はピンと張り、ルアーは動かない。
「ちぇ、根がかりだ」
底の石や木の根に引っかかったのだろう。
Bさんは左右に竿を振り、引っ張った。
突然、手ごたえがなくなり、竿が引けるようになった。
リールを巻く。
残念ながら魚ではなかった。
Bさんが釣り上げたものは、スニーカーだった。
それも、ほぼBさんと同じくらいのサイズである。
土がべっとりとつき、コケも付着していた。
Bさんは気味が悪くなり、スニーカーを池のほとりに降ろして針を外した。
隣の友達が叫んだ。
「うわ!これ見て」
友人は小学校の指定帽子を吊り上げていた。
これも泥だらけで、コケが生えている。
「学校の帽子じゃん……ひょっとして……」友達がそうつぶやいたとき、Bさんは刺すような視線を池の方から感じた。
Bさんは目を凝らして、池の中央を見る。
水面に浮かぶハスの間に、頭が浮かんでいた。
黒々とした泥が混じった髪をして、白い肌に無表情な目が水面から突き出ている。
その眼は光なく、池の水面のように暗い。
友達は釣り上げた帽子を釣り具ごと放って逃げた。
Bさんも釣り道具や、釣果の魚を放って逃げ帰った。
後日、親に同行してもらい、ため池に釣り具を取りに戻った。
池は何事もなかったように凪いでいた。
釣り具はなくなることなく、一色揃っていた。
だが、釣り上げたはずのスニーカーと小学校の指定帽子は、池のほとりからなくなっていたという。
【おわり】
Bさんの通っていた小学校の近くにため池があった。
雑木林の中にあり、暗く、ハスの葉が浮いているため池だった。
噂ではブラックバスが釣れるということで、大人の釣り人を見かけたりもした。
一方小学校では、ため池での遊びが一切禁止されていた。
かつて、ため池で遊んでいた子供に事故が起きたからに他ならない。
それでもBさんは、仲間の悪ガキたちと一緒にため池へ釣りに出かけた。
Bさん達悪ガキ男子連は、学校の決まりを守ろうという遵法精神は持ち合わせていなかった。
昼間なのに雑木林に囲まれ、薄暗かった。
辺りはひんやりとして、虫の声も木々のさざめきもなく静かだった。
若干不気味に思ったが、Bさん一行は釣りを始めた。
面白いように釣れた。
ブルーギルはもちろん、ブラックバス、スモールマウスバスと外来魚が沢山釣れる。
Bさん達は夢中になって釣りに没頭した。
気付けば夕刻になり、辺りは暗くなり始めていた。
「あともう一投して帰ろうか」
Bさん達は最後にキャスティングした。
水音もせず、すっと水面にルアーは沈んでいく。
Bさんは何か手ごたえを感じた。
竿を引いてみる。
糸はピンと張り、ルアーは動かない。
「ちぇ、根がかりだ」
底の石や木の根に引っかかったのだろう。
Bさんは左右に竿を振り、引っ張った。
突然、手ごたえがなくなり、竿が引けるようになった。
リールを巻く。
残念ながら魚ではなかった。
Bさんが釣り上げたものは、スニーカーだった。
それも、ほぼBさんと同じくらいのサイズである。
土がべっとりとつき、コケも付着していた。
Bさんは気味が悪くなり、スニーカーを池のほとりに降ろして針を外した。
隣の友達が叫んだ。
「うわ!これ見て」
友人は小学校の指定帽子を吊り上げていた。
これも泥だらけで、コケが生えている。
「学校の帽子じゃん……ひょっとして……」友達がそうつぶやいたとき、Bさんは刺すような視線を池の方から感じた。
Bさんは目を凝らして、池の中央を見る。
水面に浮かぶハスの間に、頭が浮かんでいた。
黒々とした泥が混じった髪をして、白い肌に無表情な目が水面から突き出ている。
その眼は光なく、池の水面のように暗い。
友達は釣り上げた帽子を釣り具ごと放って逃げた。
Bさんも釣り道具や、釣果の魚を放って逃げ帰った。
後日、親に同行してもらい、ため池に釣り具を取りに戻った。
池は何事もなかったように凪いでいた。
釣り具はなくなることなく、一色揃っていた。
だが、釣り上げたはずのスニーカーと小学校の指定帽子は、池のほとりからなくなっていたという。
【おわり】
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