【怖い話】さしかけ怪談

色白ゆうじろう

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仮眠室の明かり

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鉄道職員のAさんの話

Aさんは運転士や駅員ではなく、信号を扱う部門に勤めている。
昼に仕事がある場合もあるが、深夜勤務の日もある。

その場合は、休憩としてに仮眠時間が取り入れられている。
仮眠室が設けられ、備え付けのベッドで休むことになる。

とある駅では、その仮眠室に問題があった。
Aさんが赴任したての頃、先輩たちが
「電気を消して寝るな」
と言っていた。
Aさんが訳を聞くと、
「出るんだよ。突然足を掴まれたりするぞ」
と真面目な顔で先輩は言った。
Aさんは笑い飛ばし
「俺は暗い部屋じゃないと、仮眠できないんです」
と応じた。

結局、仮眠時間になり「知らないぞ」という先輩の忠告を聞き流した。
仮眠室は、エアコンが付いたベッドが置いてあるだけの狭い部屋だった。
Aさんは、なんとなく不安な気持ちになったが、仮眠室が殺風景だからだろうと思うことにした。
Aさんは電灯をさっさと消して、ベッドに入った。

寝ていたのだろうと思う。
突然Aさんは、強い圧迫感を首に感じて目を覚ました。

Aさんは驚いて叫んだ。
暗い人影が、自分に馬乗りになって首を抑えてきていた。
Aさんと目が合うと、暗い人影は離れて消えた。
暗い闇の中に同化したのだった。

Aさんは慌ててベッドを降りて電灯をつけた。
だれがこんなマネをしたのだろう。

パッと明かりがついて狭い仮眠室が照らされた。
狭い部屋ですぐに見渡せるが、だれもいなかった。
もちろん、ドアから誰かが出て行ったこともない。
ドアを開ける音すらしなかったし、廊下の明かりも入ってきていない。

怯えるAさんが先輩に報告すると、先輩は苦い顔をして言った。
「だから言ったろ。暗いとダメなんだ、出てくるんだよ」それから、Aさんにアイマスクを手渡した。「貸してやるよ。この駅の信号係は、仮眠室の明かりを消さないんだよ。覚えておくんだな」

Aさんは転勤になるまで、決して仮眠室の明かりを消さなかったそうだ。

【終わり】
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