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第一章.鬼神子出郷騒動
第四話「影ノ船出」
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鬼族の住まう島、鬼ヶ島には月輪湖と呼ばれる奇麗な円形の巨大な湖がある。
そして月輪湖の周囲を鬼族の街ぐるりと囲んでいるような形で鬼族の郷は形成されている。
そして、鬼族の王たる鬼神の御殿は月輪湖の中心にある小島に建っており、そこから東西南北に伸びる大橋と北西北東南西南東に伸びる中橋で郷と繋がっており鬼神の御殿は郷の住民達の重要な中継地点となっている。
そのため御殿は極端な高床式になっており床下に当たる部分は住民達の通路になっている。
日中は大勢の住民達が行き交い喧騒に包まれる。
「相変わらず、ここは喧しい」
御殿の北に伸びる大橋のたもとの木陰にユラは立っていた。
「さて……空、いますか」
ユラがそう呟くと背後に一人の鬼族の少女が現れた。
「……ユラ様、お呼びでしょうか」
「父上よりシュラの捕縛及び連行の命を受けました。ですが 私一人であの子を連れて帰るのは些か難航するでしょう、貴方の力を貸してください」
「――承知致しました」
「それでは、参りましょう」
そうして影神子と従者は鬼神子を連れ戻す旅に出た。
﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏
「して、ユラ様。シュラ様達の行方は掴めておるのですか」
「えぇ。私の糸が昨夜、シュラと玉梓の反応を感知しております。場所は郷より北東の端砂山の麓の入江にある船着場です」
「端砂の船場……確かあそこはもう使われていないはず……」
「既に閉じられた船場だからこそ人目に触れる事無く、出奔を許してしまったのでしょうね」
「確かに、あの辺りは関所もありませんしね」
「というわけで、私達もシュラと同じ道程を辿り追いましょう」
暫く山道を進み、件の端砂山の麓に到着した。
入江の船着場の繋船柱には少し前まで縄が括られていた様な跡が残っていた。
「やはり、ここから船を出したのでしょうね」
「その様ですね、では我々も船を出しますか」
「えぇ、櫂は頼みますよ、空」
「お任せ下さい」
「シュラとの距離がある程度近付けば、後は私の力を行使すれば正確な位置が分かります。行きましょう」
﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏
出航して暫く、鬼ヶ島が遠くぼやけて見えるようになった頃。
ユラは手に持っていた糸玉を掌でころころと遊ばせながら、じっと船の進行方向に目を向けていた。
「さて、そろそろやりましょう。空、手を止めなさい」
「御意」
主の命により船を止める。
「空、貴方も座っていなさい。糸が絡まると大変ですから」
「承知致しました」
空は遠慮がちにゆっくりと腰を下ろした。
それを横目に確認したユラは手に持っていた糸玉を思い切り空に放り投げた。
そしてすかさず両手の指を絡め印を結んだ。
「 絵図白絲」
そう唱えたと同時、投げ上げられた糸玉から白い筋が四方八方に伸びていく。
「久方振りに見ましたが相変わらず圧巻ですな」
その光景を見ながら空はそう零した。
「この術はここからが本番です」
そう言ってユラは再び自身の掌に視線を落とす。
すると掌の上に自身等を中心とした周辺の海図が展開されていく。
「ユラ様、シュラ様達の足跡は見つかりそうでしょうか」
「……一つ、見つけました」
「なんと!どの様な?」
空の問にユラは掌の絵図を指差した。
「この小島、ここから真っ直ぐ進めば着くはずです。ここに何やら違和感を覚えました、もしかしたらシュラ達はここに停泊した可能性があります」
「つまり、そこに向かうのですね?」
「えぇ、行きましょう」
再び船は進む、目指すは出奔の鬼神子の元へ。
そして月輪湖の周囲を鬼族の街ぐるりと囲んでいるような形で鬼族の郷は形成されている。
そして、鬼族の王たる鬼神の御殿は月輪湖の中心にある小島に建っており、そこから東西南北に伸びる大橋と北西北東南西南東に伸びる中橋で郷と繋がっており鬼神の御殿は郷の住民達の重要な中継地点となっている。
そのため御殿は極端な高床式になっており床下に当たる部分は住民達の通路になっている。
日中は大勢の住民達が行き交い喧騒に包まれる。
「相変わらず、ここは喧しい」
御殿の北に伸びる大橋のたもとの木陰にユラは立っていた。
「さて……空、いますか」
ユラがそう呟くと背後に一人の鬼族の少女が現れた。
「……ユラ様、お呼びでしょうか」
「父上よりシュラの捕縛及び連行の命を受けました。ですが 私一人であの子を連れて帰るのは些か難航するでしょう、貴方の力を貸してください」
「――承知致しました」
「それでは、参りましょう」
そうして影神子と従者は鬼神子を連れ戻す旅に出た。
﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏
「して、ユラ様。シュラ様達の行方は掴めておるのですか」
「えぇ。私の糸が昨夜、シュラと玉梓の反応を感知しております。場所は郷より北東の端砂山の麓の入江にある船着場です」
「端砂の船場……確かあそこはもう使われていないはず……」
「既に閉じられた船場だからこそ人目に触れる事無く、出奔を許してしまったのでしょうね」
「確かに、あの辺りは関所もありませんしね」
「というわけで、私達もシュラと同じ道程を辿り追いましょう」
暫く山道を進み、件の端砂山の麓に到着した。
入江の船着場の繋船柱には少し前まで縄が括られていた様な跡が残っていた。
「やはり、ここから船を出したのでしょうね」
「その様ですね、では我々も船を出しますか」
「えぇ、櫂は頼みますよ、空」
「お任せ下さい」
「シュラとの距離がある程度近付けば、後は私の力を行使すれば正確な位置が分かります。行きましょう」
﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏﹏
出航して暫く、鬼ヶ島が遠くぼやけて見えるようになった頃。
ユラは手に持っていた糸玉を掌でころころと遊ばせながら、じっと船の進行方向に目を向けていた。
「さて、そろそろやりましょう。空、手を止めなさい」
「御意」
主の命により船を止める。
「空、貴方も座っていなさい。糸が絡まると大変ですから」
「承知致しました」
空は遠慮がちにゆっくりと腰を下ろした。
それを横目に確認したユラは手に持っていた糸玉を思い切り空に放り投げた。
そしてすかさず両手の指を絡め印を結んだ。
「 絵図白絲」
そう唱えたと同時、投げ上げられた糸玉から白い筋が四方八方に伸びていく。
「久方振りに見ましたが相変わらず圧巻ですな」
その光景を見ながら空はそう零した。
「この術はここからが本番です」
そう言ってユラは再び自身の掌に視線を落とす。
すると掌の上に自身等を中心とした周辺の海図が展開されていく。
「ユラ様、シュラ様達の足跡は見つかりそうでしょうか」
「……一つ、見つけました」
「なんと!どの様な?」
空の問にユラは掌の絵図を指差した。
「この小島、ここから真っ直ぐ進めば着くはずです。ここに何やら違和感を覚えました、もしかしたらシュラ達はここに停泊した可能性があります」
「つまり、そこに向かうのですね?」
「えぇ、行きましょう」
再び船は進む、目指すは出奔の鬼神子の元へ。
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