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第三章・我校引線
4話 遅れた青春を取り戻せ★
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水曜日の朝、時墺は、紫陽花学校の自分のクラスの自分の席の上で驚愕していた。
「えーと、転校生を紹介する。ほら、名前を言って」
「入水絵里奈です。親の転勤で来ました。よろしくお願いします」
何故なら入水絵里奈の顔は、どう見ても昨日、自分が悩み事を相談しにいった探偵事務所の、主人である出水露沙の物だったからだ。
「はい!質問です!入水ちゃん可愛いけど、彼氏クンいるの~?」
後ろの男子が声を上げた。それに対して出水はこう答えた。
「いたけど別れたわ。今は傷心中」
「あ、えと、その、なんか…ごめんなさい」
男子はこれを聞いて申し訳なさそうに謝った。
こうして、水曜日の朝のホームルームは、なんとなく重い空気に包まれて終わった。
「来い」
昼休み、出水にそう言われ、時墺は植物園についていった。
「わかってると思うけど、私、出水露沙よ」
「はい。というか、なんでこの学校に?」
「そりゃあんたの調査のためだ。幸い鈴と私の年齢はあんまり離れてないし、そして、私は『綺麗』だしね」
出水はそう言って、自らのプロポーションの良さをアピールするが、はっきり言ってそんなことは時墺にとってどうでもよかった。
「よし、そんじゃ、これから私を人前で呼ぶ時は絵里奈と呼んで。それと…鈴、アンタは能力を持っている、と言ってたよな?その能力がなんなのか分かる?」
「いえ…全くわからないです」
「そうか…」
昨日聞き忘れたことを聞いたが、無駄に終わったようだ。『協力者の能力がわからない』のは不安だが…鈴に限っては大丈夫だと思う。出水はそう思い、取り敢えずこの話題は流した。
「よし。私は引き続き学校で調査をするから、鈴は校門の所で待ってる琵琶持についていってくれ」
「ということは…今日、尾行している人を捕まえる、というわけですか」
「あぁそうだ。能力が絡んだ案件はすぐに取り掛からないとヤバいから。…心配することはないのよ?琵琶持はああ見えて、めちゃ強いから」
時墺の不安を感じ取ったのか、出水はそう補足した。
「そ、そうですか。では、調査をよろしくお願いします」
そう出水にお願いした時、時墺の顔は尚も不安そうに燻っていた。
「さて…それじゃあ調査を再開しますかね…」
数時間ほどしか過ごさなかったが、出水は速くも紫陽花高校に、時墺の言った通りの違和感を感じ取っていた。皆、何かに怯えていて、その怯えの中心はいつも時墺だった。一応クラスメイトに、なんで時墺の事を恐れているのか、と聞いてみたが、全員、全く口を割らなかった。その『恐れ』がなんなのかを看破しない限り、この案件の攻略は不可能だろう。さて、どうするか…。
そんな事を考えながら学校の廊下を歩いていると、不意に、出水は背後からの視線に気づいた。そして気づいた瞬間、出水はすぐそばにある曲がり角に向かった。そして、少しだけ歩調を早め、曲がり角に身を隠すと、自分を追って角を曲がってきた尾行相手の首を、出水はいきなり掴んだ。
完全に不意をつかれた尾行者は、出水による首の締め上げに悶絶した。
「なんの用?」
「ゲホッ…ま、ず手、手をはなし、てくれ」
「ん…その顔、クラスメイトの浅雨有太…で合ってるかしら」
出水がパッと浅雨の首を解放すると、浅雨は咳き込んで床に転がった。
「ゲホッ、ゲホッ!合ってるよ。俺の名前は浅雨だ‼︎」
「それで浅雨君、なんの用?告白なら間に合ってるわよ」
「こ、告白じゃねーよ!入水!俺が言いたいのは忠告だ!」
「忠告ゥ?詳しく聞かせてもらいたいわね」
出水はここぞとばかりに浅雨に詰め寄った。この案件の突破口を逃すわけにはいかない。
「言うぞ、『時墺鈴には関わらない方がいい』。これだけだ」
「何それイジメ?私があの子と仲良くしたらお前もいじめるぞってか?」
「違う!」
浅雨は大きな声で否定した。そのあまりの声の大きさに、出水は面食らってしまった。
「俺はお前に親切心で言ってやってんだ‼︎」
浅雨は必死に身振り手振りを交えながら話を続ける。
「時墺に関わると、絶対にヤバい事になるんだ!詳しくは言えないけど、絶対に関わらない方がお前の身のためになるんだ!だから身を引いてくれ…頼む。もう…見たくないんだ…」
「おい」
出水は浅雨の胸ぐらを掴んだ。
「浅雨が見たいとか見たくないとかはね、どうでも良いの。私が知りたいのは君の感想じゃなくて、ヤバい事の方なのよ」
そう言った途端に、浅雨はガタガタと震え始めた。
「嫌だ…言わせないでくれ…!嫌だ…!」
「嫌ぁ?もっと具体的に話しなさいよ浅雨…」
「無理な物は!無理なんだ!」
馬鹿力で出水の手を振り解くと、浅雨はそう叫んだ。
「…大丈夫か?」
浅雨の顔は蒼白だ。
「ハーッ、ハーッ、ハーッ、ハーッ…兎に角、駄目なんだ。時墺は…!」
そう言うと、浅雨は弾かれたように入水から走り去ってしまった。走り去っている時に見えた、浅雨が着ていたシャツは、肌が透けて見えるほどにべっとりと汗に濡れていた。
「なんなんだ一体…」
出水はここで、始めて、恐怖を覚えた。
「えーと、転校生を紹介する。ほら、名前を言って」
「入水絵里奈です。親の転勤で来ました。よろしくお願いします」
何故なら入水絵里奈の顔は、どう見ても昨日、自分が悩み事を相談しにいった探偵事務所の、主人である出水露沙の物だったからだ。
「はい!質問です!入水ちゃん可愛いけど、彼氏クンいるの~?」
後ろの男子が声を上げた。それに対して出水はこう答えた。
「いたけど別れたわ。今は傷心中」
「あ、えと、その、なんか…ごめんなさい」
男子はこれを聞いて申し訳なさそうに謝った。
こうして、水曜日の朝のホームルームは、なんとなく重い空気に包まれて終わった。
「来い」
昼休み、出水にそう言われ、時墺は植物園についていった。
「わかってると思うけど、私、出水露沙よ」
「はい。というか、なんでこの学校に?」
「そりゃあんたの調査のためだ。幸い鈴と私の年齢はあんまり離れてないし、そして、私は『綺麗』だしね」
出水はそう言って、自らのプロポーションの良さをアピールするが、はっきり言ってそんなことは時墺にとってどうでもよかった。
「よし、そんじゃ、これから私を人前で呼ぶ時は絵里奈と呼んで。それと…鈴、アンタは能力を持っている、と言ってたよな?その能力がなんなのか分かる?」
「いえ…全くわからないです」
「そうか…」
昨日聞き忘れたことを聞いたが、無駄に終わったようだ。『協力者の能力がわからない』のは不安だが…鈴に限っては大丈夫だと思う。出水はそう思い、取り敢えずこの話題は流した。
「よし。私は引き続き学校で調査をするから、鈴は校門の所で待ってる琵琶持についていってくれ」
「ということは…今日、尾行している人を捕まえる、というわけですか」
「あぁそうだ。能力が絡んだ案件はすぐに取り掛からないとヤバいから。…心配することはないのよ?琵琶持はああ見えて、めちゃ強いから」
時墺の不安を感じ取ったのか、出水はそう補足した。
「そ、そうですか。では、調査をよろしくお願いします」
そう出水にお願いした時、時墺の顔は尚も不安そうに燻っていた。
「さて…それじゃあ調査を再開しますかね…」
数時間ほどしか過ごさなかったが、出水は速くも紫陽花高校に、時墺の言った通りの違和感を感じ取っていた。皆、何かに怯えていて、その怯えの中心はいつも時墺だった。一応クラスメイトに、なんで時墺の事を恐れているのか、と聞いてみたが、全員、全く口を割らなかった。その『恐れ』がなんなのかを看破しない限り、この案件の攻略は不可能だろう。さて、どうするか…。
そんな事を考えながら学校の廊下を歩いていると、不意に、出水は背後からの視線に気づいた。そして気づいた瞬間、出水はすぐそばにある曲がり角に向かった。そして、少しだけ歩調を早め、曲がり角に身を隠すと、自分を追って角を曲がってきた尾行相手の首を、出水はいきなり掴んだ。
完全に不意をつかれた尾行者は、出水による首の締め上げに悶絶した。
「なんの用?」
「ゲホッ…ま、ず手、手をはなし、てくれ」
「ん…その顔、クラスメイトの浅雨有太…で合ってるかしら」
出水がパッと浅雨の首を解放すると、浅雨は咳き込んで床に転がった。
「ゲホッ、ゲホッ!合ってるよ。俺の名前は浅雨だ‼︎」
「それで浅雨君、なんの用?告白なら間に合ってるわよ」
「こ、告白じゃねーよ!入水!俺が言いたいのは忠告だ!」
「忠告ゥ?詳しく聞かせてもらいたいわね」
出水はここぞとばかりに浅雨に詰め寄った。この案件の突破口を逃すわけにはいかない。
「言うぞ、『時墺鈴には関わらない方がいい』。これだけだ」
「何それイジメ?私があの子と仲良くしたらお前もいじめるぞってか?」
「違う!」
浅雨は大きな声で否定した。そのあまりの声の大きさに、出水は面食らってしまった。
「俺はお前に親切心で言ってやってんだ‼︎」
浅雨は必死に身振り手振りを交えながら話を続ける。
「時墺に関わると、絶対にヤバい事になるんだ!詳しくは言えないけど、絶対に関わらない方がお前の身のためになるんだ!だから身を引いてくれ…頼む。もう…見たくないんだ…」
「おい」
出水は浅雨の胸ぐらを掴んだ。
「浅雨が見たいとか見たくないとかはね、どうでも良いの。私が知りたいのは君の感想じゃなくて、ヤバい事の方なのよ」
そう言った途端に、浅雨はガタガタと震え始めた。
「嫌だ…言わせないでくれ…!嫌だ…!」
「嫌ぁ?もっと具体的に話しなさいよ浅雨…」
「無理な物は!無理なんだ!」
馬鹿力で出水の手を振り解くと、浅雨はそう叫んだ。
「…大丈夫か?」
浅雨の顔は蒼白だ。
「ハーッ、ハーッ、ハーッ、ハーッ…兎に角、駄目なんだ。時墺は…!」
そう言うと、浅雨は弾かれたように入水から走り去ってしまった。走り去っている時に見えた、浅雨が着ていたシャツは、肌が透けて見えるほどにべっとりと汗に濡れていた。
「なんなんだ一体…」
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