出水探偵事務所の受難

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第三章・我校引線

6話 ストーキング、ダメ、絶対

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「うわっ‼︎」
 男は自らの体に走った冷たい感触に飛び起きた。
「よし。起きました」
「わかった。あー、もしもし、日本語わかる?」
「お前ら…は?」
 男は目の前にいる2人を見上げた。
「私は出水。こっちは琵琶持よ。ねぇアンタ。なんで時墺をつけてたわけ?それと、アンタの名前とか色々教えて欲しい」
「お前ら…時墺の仲間なのか?だったらやめといたほうがいい奴は」
 出水は、男の言葉を側の椅子を蹴り飛ばすことで遮った。
「聞かれた質問にだけ答えればいいのよ。貴方は」
「…俺の名前は幸田咲也。賞金稼ぎから足を洗った一般人だ」
「そう。で?」
 幸田は生唾を飲み込んだ。
「俺は、昔から好奇心旺盛でね、何かわからないことがあると追いかけてみたくなっちまう。そんな欲求を持て余して賞金稼ぎから足を洗って、都市伝説系の雑誌の出版社に勤めてたんだ。そんな時だった。昔の仲間の口から『時墺鈴』の名前を聞いたのはな」
 幸田は、自分の過去を交えて、『時墺鈴』について語り始めた。
「そいつが言うには、その女子の周りの奴らがどんどんと姿を消しているらしい。俺はそれを聞いて好奇心を刺激されちまったんだ。だがな、『時墺鈴』は、どこからどう見ても普通の女子高校生だったんだ。確かに、同じクラスメイトの不良学生が何人か姿を消しているが、ただの偶然にしか思えない。それ程に、なんの変哲もない女子だった。だが、忘れもしない7月1日!それは起こった」
 幸田の汗が床に垂れる。
「俺はその時、紫陽花高校の近くの、ビルの一室を借りて、超望遠レンズで時墺の教室を見ていた。もうこれ以上時墺を追っかけてると俺はただの変態になっちまう。そう思って一週間にわたる調査を打ち切ろうと思っていたその時、教室内の生徒の1人が、『崩れた』んだ。文字通りにな」
 体をブルブルと恐怖に震わせながら、幸田はさらに話を続ける。
「生徒の体に、レゴブロックみたいな『境目』が見えたその次の瞬間には、そいつはバラバラになって崩れたんだ。俺は心底恐ろしかった。確実に能力が絡んでる死に方だっただけに、この件に首を突っ込んだら俺もああなる、そう感じちまった‼︎」
「それだけに、首を突っ込みたくなった。そうですか?」
 琵琶持がそう言うと、幸田の表情は気色が悪い笑顔へと変貌した。
「あぁ、そうさ!俺はこんなスリルが欲しかった!    だから首を突っ込み続けて、最終的に職を失い、財産も失った!出水!琵琶持!これが俺の全てだ‼︎文句あるか‼︎」
 出水は幸田の話を聞き終わると、ため息をたっぷりと吐き出した。
「はーっ…マジでそれで全てなのか?」
 この時、出水はいつまで経っても集まらない情報にイライラを募らせていた。 
「おいおい。まだ俺は情報を持ってるぞ?」
「…マジ?」
「マジだ。俺ぁな、拷問中に全部の情報を話すフニャチン野郎じゃねぇんだわ」
 幸田はニヤニヤとしている。
「あーあ。あんな言い方されちゃったら言いたくなくなっちゃったなー俺の情報」
 幸田は出水をここぞとばかりに挑発した。が、出水は真顔であった。
「言えよ。その情報を。条件はなんだ?」
「俺を仲間に入れろ!」
「え?」
「お前ら見たところ、時墺のことを調べてるんだろ⁈俺も入れろ!」
 体でも要求してくるのかと思ってたが、幸田…この男、何処までも自分の好奇心に忠実な男だ。
「それくらいなら良いわ。よろしく。幸田」
「よろしく!」
「あの~終わりましたか?」
その時、部屋のドアを開けて入ってきたのは時墺本人だった。
「おい、入ってくるなとあれほど…!」
 幸田は自分が調べていた本人の来訪に口をあんぐりと開けぽかんとしていた。
「じ、時墺鈴が…ここに⁈なんで俺に情報を聞く必要があったんだ!本人様に聞けば良い話だろ!」
「おい、落ち着け幸田!実はだな…」
 出水は、時墺の記憶が鏡の柱に改竄されていることを幸田に話した。
「記憶喪失ゥ⁈」
 またもや幸田は口をあんぐりと開けた。
「あぁ。それで、私たちは時墺の記憶を元に戻すことが目的なのよ」
「へー…」
 急な情報に、幸田は只々呆然としていた。
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