魔法と科学の境界線

北丘 淳士

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神の使い

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 リータの顔を見た瞬間、挨拶も忘れて旭は言った。「リータ……、ごめん。明日から5日会えない」
「5日も! ……どうしたの、アキラ」
 リータは不安げな顔で旭に迫る。
 旭は少し間を開けて、涙声を押し殺して答えた。
「僕の、僕の父さんが死んだんだ……」
 旭は泣くのを必死に堪えていたが、それを聞いたリータが先に泣き出してしまい、つられた形で我慢していた涙がとめどなく流れ出した。リータの前で泣くのは恥ずかしい、そう思っていたけど涙と声が止まらない。リータも自分のことのように顔を両手で覆い泣いていた。旭は暖房が稼動している廊下で正座し、リータと共に泣き続けた。
 しばらく二人は泣いていたが、泣き止むと自然と見つめ合っていた。
「アキラ、あなたには私がいるから……」
 恥ずかしげもなくそう言ってくれるリータに、旭は少し面映ゆい表情を見せた。
 服の袖で目を擦ったリータの眸は赤くなっている。
「ありがとう。良かった、リータに言って。泣かないと思っていたのに……、リータ、ありがとう」
「私、今日ほどあなたに触れたいと思った事はないわ……。あなたは私に色々と教えてくれたのに、私は何もして上げられない。……ごめんなさい」
 旭はリータの優しさに再び涙が込み上げてきたが、グッと堪えた。
「ううん、リータと一緒にいる時間は楽しいよ。父さんは神様の使いだとリータのことを言っていたけど、間違いじゃないと思う」
 リータは驚いた顔をして旭の顔を見つめた。
「私が神様の使いだなんてとんでもない!! 私はあなたが神の、神祖の民の子供だと思っているわ! こんなに……、こんなに色々と凄い話をしてくれて、そして優しくて……」
 緑色の眸に今だ涙を滲ませたリータの綺麗な顔が、旭のすぐ近くに迫る。同じ歳の女の子には感じない気持ちが胸の奥を叩く。
「ありがとう、リータ」
 旭はリータに手のひらを出し、リータもそれに自分の手を重ねる。二人ともお互い触れられないが、心の底で何かが通じ合ったような満たされた気持ちになった。
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