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13.住処が決まった

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 会食翌日の朝、陸軍の運動場から歩いて行ける距離にある社宅?の様な建物に案内してもらった。
 竈門かまどと、居間兼寝室が一つになっている、1Kみたいな造りの部屋だ。
 トイレは共用だそうでここにはない。お風呂は無く、基本的に清拭で済ますのだと、昨日スルスさんに聞いた。

「わあ! 思ってたより広い! ねえアキラ!」
「う、うん……」

 きゃっきゃとはしゃぐヒナに対し、私は歯切れ悪く返事をした。
 後ろではそんな私たちの様子を、ライアンさんが少し安堵した顔で見つめている。

 まだ婚約者ではないが想いを寄せている人と、急遽一つ屋根のしたで暮らす事になり、私が動揺していると思ったのだろう。

「アキラ、今度いい香油を持ってきてやろう」

 ひそひそ声で心から祝福する。と告げて、ライアンさんは私の肩を二度叩いた。
 
(香油……って、何だろ)

 曖昧に笑って、頷く。
 それからライアンさんは機嫌良く帰っていった。
 今日は荷解きに時間をくれるらしい。
 明日、陸軍の補給部隊と顔合わせをするそうだ。

 あのとき、クリストファー様がどう調整してくれたのかわからないけれど、狐セバスが会食後に部屋まで荷物を持ってきてくれた。
 ご結婚されていたのですね。と、納得の顔で言われたのは、会食前と後に同じ部屋に居たからだろう。
 そういう意図で一緒に居たわけではないけれど、結果的にうまいことまとまってラッキーだ。

 私と狐セバスが会話している間、隣で疑問符を浮かべながらも黙ってくれていたヒナ。
 会食の場であった事をかいつまんで話すと、はじめケラケラと笑っていた。

「え! アイツらの中でうちら結婚してんの? ヤバじゃん」
「ごめん……じゃないと、ヒナ他のこっちの人と勝手に結婚させられそうだったから……」
「は!? なにそれ! こわ!」

 すぐにゾゾっとしたのか、二の腕を摩っている。
 この世界で戸籍とかがどうなっているのかはわからないけれど、縁もゆかりも無い召喚者達を組み込むのにはいい手段だな。と、思った。
 相変わらずこちらの意思を無視してくれるところが癪に触るけれど。
 そしてふと、あの場に居なかった他の女の子の召喚者達は大丈夫かな。と、暗い気持ちになった。

「あ~……でもしょうがないよ……それぞれで頑張るしか……」
「うん、ただ、話を聞いちゃったから後味悪くて……」
「だよね……チャンスがあれば、そういう背景教えてあげよ。なんかに役立つかも」

 今はそう結論付けるしかない。
 二人で若干落ち込んで、でも荷解きをしようと気を取り直した。

 ちなみに狐セバスがくれた荷物というのは、この世界に召喚された人全員に渡す新生活応援セットみたいなものだ。
 麻袋の中からはシーツ数枚に石鹸がひとつ。手拭いと、茶色味の強い小麦などの少しの食料。それから銀貨が五枚ずつ。

 銀貨の価値がイマイチわからないけれど、この家には桶や柄杓、洗濯板となんかの棒、お鍋が大きいのと小さいのとで一つずつ備えられていたから、新生活応援セットと合わせればあまり追加で買う必要は無さそうだ。


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