世界を守る。ふたりの君に恋をする。

彼方

文字の大きさ
21 / 24

第21話 母親 

しおりを挟む
「あとさ、部活はどうするの?」

「入らないよ。うちの神社、見ての通りかなり寂れててさ、経営も結構危ないんだよね。だから私たちでサポートしようかなって思ってる」

「そっか」

 確かにここの神社は色々と経年劣化が激しい。何か特別な理由でもない限りは人が集まらないだろう。本殿の近くの売店でお守りや御朱印の販売はしているようだけど先程みた限りでは栄えてるようには見えなかった。

 二人が暮らしているこの家もかなり築年数が言っているのだろう。廊下を歩いたとき、床が軋んでいた。個人的にこう言う古びた建物の雰囲気は好きなのだが、この家が全体的にお金がない印象は受けていた。

 話をしていると玄関が開いた音がした。

「あっ、お母さん帰ってきた! 今呼んでくるね!」

 風花は立ち上がると部屋を出ていってしまった。

(お、おお。こんないきなり対面するのか!)

 なんか思っても見なかったほど軽いテンションで驚いてしまう。

「うちのお母さん、副業で人相占いをやってるのよ。神社の経営は厳しいけれど、そっちは結構評判なんだよね。よく当たるらしいわ!」

「そ、そうなんだ!」

「緊張しなくて大丈夫よ。普段は優しいお母さんだから」

 親を彼氏に合わせると言うのに凛花もすごく落ち着いている。

(普通もっと改まった空気感の中で対面するものじゃないのか?)

 まるでペットの犬にでも合わせるかのような軽いノリに少し戸惑ってしまう。

  やがて、引き戸が空いて、風花とお母さんが入ってきた。昨晩と同様にジーパンに白いTシャツといったシンプルな服を着ている。

 俺はすぐに立ち上がり、頭を下げた。

「初めまして。伊庭遥斗と言います」

「初めまして、二人の母の千景です。そんなに改まらなくて大丈夫ですよ。座ってください」

 お母さんからは物腰は柔らかいが芯が通っている印象を受けた。

「遥斗さん、お会いできてうれしいわ。毎日あなたの話は娘たちから聞いていましたから。大体の事情は娘たちから聞きました。凛花と風花の二人と付き合うことになったんですよね」

 お母さんは穏やかな微笑を浮かべているが、その瞳からは心の中まで覗いてくるような鋭い視線が感じられた。

「はい」

「交際にいたる経緯は二人から聞きましたが、今回の場合は仕方ないでしょう。私は遥斗さんが2人を大切にしてくれるなら付き合うことに何か言うつもりはありません」

「ありがとうございます」

「確認ですが、遥斗さんは凛花のことも、風花のこともどちらも好きなんですよね?」

「はい。大好きです。心の底から」

「そうですか。なら何も心配いりませんね。2人のことをしっかり幸せにしてあげてください」

「分かりました」

「私は普段占いをやっているので、相手の人相を見れば大体の人となりが分かるんです」

 俺の目をじっと見つめてきていたお母さんの瞳が、急に柔らかいものになるのを感じた。

「ふふ、あなたはとても優しい目をしていますね。それでいて誠実さと、真面目さ、そして熱い心を持っている。とても素晴らしい相をしていますよ」

「あ、ありがとうございます!」

「まだ先の話かもしれませんが、遥斗さんは二人との結婚は考えていますか?」

「当然考えています。大好きなので!」

 俺の言葉を聞いた二人が少し照れているのがわかった。こうした質問に対しては変に濁さないでまっすぐに答えるようにしていた。

「そうですか。なら一つアドバイスをさせて下さい。将来は800万は頑張って稼ぐようにしてください。結婚する相手が一人ならそこまでいらないかも知れませんが、二人と生まれてくる子供たちを幸せにしていくためには最低限、それぐらいのお金は必要です!」

「お母さん、そんなリアルな話なんてしないでよ! まだ付き合ったばかりだよ!?」

「そうだよ!!」

 風花と凛花が不満を漏らした。

「ごめんなさい。遥斗さんが思った以上にいい子だったから、これは本当に将来の相手になるかと思って、つい話しちゃいました。でもね。やっぱり生きていく上でお金は大切なのよ?」

「それはそうだけどさー、そんなこと言われても、遥斗くんがびっくりしちゃうじゃん! ただでさえ相手の家って緊張するのに。ごめんね! 遥斗くん!」

 風花が申し訳なさそうな表情を向けてくる。

「全然大丈夫だよ! 生きていく上でお金は大切だと思うし……。二人ともし結婚できるならお金で苦労をかけないようにするよ」

「「ありがとう」」

 俺の言葉を聞いて凛花も風花も嬉しいような恥ずかしいような表情を浮かべていた。お母さんもにっこりとしている。

 二人の軽いテンションに比べて、お母さんはかなり真面目なトーンだった。でも、考えて見ればそれが当たり前だとも思う。

(そりゃあ。大事に育ててきた二人の娘の彼氏だもんな。心配するのが当然だよ……。彼氏がもしいい加減な奴だったら娘二人を不幸にされてしまうかもしれないんだから……。むしろ、しっかりしたいいお母さんだな)

 夜中会ったときも感じたがこのお母さんはかなりちゃんとした人だと思う。俺の中でのお母さんの評価とても高かった。

(お母さんに心配かけないように誠実に付き合って行こう。お金の条件は問題なくクリアできるだろうしな。後は俺がどれだけ二人を大切にできるかだ……)

「さて、じゃあそろそろ、お昼ご飯にしようかしら。良さそうなメロンも買ってきたので、食後にみんなで食べましょう」

「えー、メロン好き!!」

 嬉しそうに風花が呟いた。

「じゃあ、凛花と風花はメロンを切るのを手伝ってちょうだい! 遥斗さん、テレビでもつけて少しだけ待っていて下さいね」

「ありがとうございます!!」

 3人は部屋を出ていった。

♢      ♢      ♢

「で、どうだった? お母さんのことだから、さっき占ったんでしょ!?」

 凛花と風花は緊張の面持ちを浮かべながら母親である千景の言葉を待っている。

「すっっっっっごく良い子じゃない!!! びっくりしたわ!! 占ったけどさ、結果は最高だよ! 今まで占ってきた人の中で確実に1番だわ! まず、高校一年生とは思えないぐらいしっかりしてるし、すっごく爽やかだし、誠実だわ。第一、心からあなたたちのことが好きなことが伝わってきて、私までドキドキしちゃった!!」

「良かったぁーー!! お母さんにダメって言われたらと思ってそわそわしちゃったよ! 自信はめちゃくちゃあったけどさぁー」

風花はほっとした様子でそう口にした。

「本当それ! でも、いきなりお金の話とかやめてよね! 絶対遥斗くんびっくりしたと思うよ!!」

 凛花も同様に安心した表情を浮かべている。

「ごめんごめん、いい子すぎてさ、ひょっとしたら本当に結婚するかもと思っちゃってつい言っちゃった! でもすごいのよ。遥斗くん。話す言葉に全く嘘や迷いや澱みがないの。全て心のままを言ってたわ! めちゃくちゃ素直な子ね。多分本当にあなたたちのことが好きなんだと思う!」

 千景は興奮した様子でそう口にすると、冷蔵庫から麦茶を取り出し、コップにいれ一口飲んだ。

「あの子なら大賛成よ。なんか……すごく大物になりそうな予感がするわ! 物腰は柔らかいけど、凄く熱いものを持ってると思う! 精神年齢もかなり高いわね」

「でも、遥斗くん。少し、体が弱いみたいなの。前も言ったけど、よく学校休んだり、早退したりしてるわ」

 凛花が心配そうに口にした。

「それは変ね……。私の感覚が狂ったのかしら。見たところ、健康そのものだし、むしろ生命力がめちゃくちゃ強いように思えたけど……」

「だといいんだけどさ……。でもお母さんに気に入ってもらえて良かったよ!」

 風花が呟いた。 

「ええ、あの子なら多分、あなたたちを不幸にすることはないと思うわ。我が娘ながらいい人を見つけたわね!」

 3人は楽しそうに会話をしながら昼食の支度をしていった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

素材ガチャで【合成マスター】スキルを獲得したので、世界最強の探索者を目指します。

名無し
ファンタジー
学園『ホライズン』でいじめられっ子の生徒、G級探索者の白石優也。いつものように不良たちに虐げられていたが、勇気を出してやり返すことに成功する。その勢いで、近隣に出没したモンスター討伐に立候補した優也。その選択が彼の運命を大きく変えていくことになるのであった。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【俺たちが飛ばされた魔物島には恐ろしいモンスターたちが棲みついていた――!?】 ・コミュ障主人公のレベリング無双ファンタジー! 十九歳の男子学生、柴木善は大学の入学式の最中突如として起こった大地震により気を失ってしまう。 そして柴木が目覚めた場所は見たことのないモンスターたちが跋扈する絶海の孤島だった。 その島ではレベルシステムが発現しており、倒したモンスターに応じて経験値を獲得できた。 さらに有用なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理が可能となっていた。 柴木以外の入学式に参加していた学生や教師たちもまたその島に飛ばされていて、恐ろしいモンスターたちを相手にしたサバイバル生活を強いられてしまう。 しかしそんな明日をも知れぬサバイバル生活の中、柴木だけは割と快適な日常を送っていた。 人と関わることが苦手な柴木はほかの学生たちとは距離を取り、一人でただひたすらにモンスターを狩っていたのだが、モンスターが落とすアイテムを上手く使いながら孤島の生活に順応していたのだ。 そしてそんな生活を一人で三ヶ月も続けていた柴木は、ほかの学生たちとは文字通りレベルが桁違いに上がっていて、自分でも気付かないうちに人間の限界を超えていたのだった。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

処理中です...