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第1話 追放
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「優斗、お前はクビだ。このパーティから出ていけ」
親友が放った言葉に俺の背筋は凍り付いた。
ここは新宿ダンジョンのすぐそばに建てられた東京都探索者協会第7支部のロビーだ。時刻は午後11時を過ぎており、俺たち四人の他に人気は無い。日中はカウンターの向こうに座っているギルド嬢たちもすでに退勤しているようだ。
俺、加賀優斗は親友であり今までパーティを組んできた木場洋輔に思わぬ言葉をかけられた。心臓が短距離走を終えた後のように鼓動を速めていく。
「う、嘘だよな……?」
「俺たちが上にいけないのはクソ弱いお前のせいだ。昔のよしみで今まで我慢してきたがもう無理だ」
洋輔は射抜くような鋭い視線をこちらに向けてくる。容赦のない言葉が突き刺さって来るが俺は何とか説得を試みる。
「頼む! それだけはやめてくれ。お前も知ってるだろ。俺の妹のことを!」
妹は十三歳にして国指定の難病に侵されており、もう2年以上入院している。最近は身体を起こすことも苦しいようでずっと寝たきりだ。
この病を治すためにはダンジョン内でのみ入手できる薬「エリクサー」を手に入れるしかなかった。
「知っているが、それとこれとは別問題だ。うちのパーティは慈善活動でやってるわけじゃないんだ! お荷物をいつまでも置いておくわけには行かない」
洋輔は氷のように冷たい表情を浮かべている。五年間そばで見てきたがこんな顔は初めて見た。
「洋輔……、頼むよ。今このパーティから抜けるわけには行かないんだ。せめて、妹を助けるまではいさせてくれ! この通りだ」
俺は跪くと埃や泥で汚れた床に額を擦り付け必死に頼み込む。
「あっはっは! 土下座とか初めて見た! まじウケる!! キモー」
「みっともない! こんな奴と同じパーティにいたなんて思われたくないわ! あー。だっさ!」
一か月前にパーティに加入してきた女子、工藤晴美と曽根美香から嘲笑と侮蔑の声が耳に届く。顔から火が出るほど恥ずかしいが、今の俺にはこれ以外できることがない。
「頼むよ洋輔! 妹さえ救えるなら、俺はこれから先、ずっと給料をもらえなくても構わない。一生無給でこのパーティのために尽くすよ! だから、もうしばらくの間、このパーティにいさせてくれ!」
「これ以上、情けねぇ姿を晒すな!!」
「洋輔……」
俺は頭を上げた。三人の侮蔑の表情が心に突き刺さる。悔しくて仕方がないが涙がこみあげてきてしまう。
だめだ。まるで聞いちゃくれない。こいつを親友だと思っていた自分が馬鹿みたいだ。
「ねぇー、こんな奴ほっといて早くお店行こうよ!」
工藤は猫なで声を上げながら陽介の右腕に自らの両腕を回し胸を押し付けている。
「そうだよ。時間がもったいないよ。もう夜も遅いんだしさぁー」
曽根は甘えるような声を上げながら、洋輔の左手を掴んで引っ張って行こうとしている
「そうだな……」
洋輔は俺を一瞥すると、
「これに懲りたら身の丈にあった場所で生きて行くんだな」
と言い残し、ギルドを出て行ってしまった。俺は、誰もいなくなっただだっ広いロビーで一人呆然とするしかなかった。
洋輔とは十五の時からの付き合いだ。当時は二人ともEランク探索者だった。奴が俺を誘ってくれて俺たちのパーティ【レガリス】が結成されたのだが、まさか俺が追放されるとは思っていなかった。
俺は周りの能力者よりも使える魔法の数が多い。通常は2、3種類の魔法しか使えないのだが、俺は9種類の魔法が使える。特にモンスターとの戦闘で重宝される攻撃魔法の魔法は『火』『水』『雷』『風』『土』『爆』の6種類も使うことができた。
しかし、俺はいわゆる器用貧乏というやつで、さまざまな魔法が使える代わりにオーラの総量が90万しかなかった。これはB級能力者の中では平均的な数字だがA級パーティの仲間に比べたら遥かに低いものだった。
いい魔法を持っていたとしてもオーラが足りなければその価値を活かすことはできない。俺は周りの冒険者たちから『宝の持ち腐れ』『器用貧乏の極み』などと声をかけられてきた。
そんな俺に対して洋輔が不満を抱いていることは以前から気付いてはいた。だから、罠の察知能力を高め、モンスター知識を増やし、テントの設営や焚き火の準備、食後の片付けなどの汚れ仕事は全て引き受けてきた。。パーティのためにできることは何でもやってきたつもりだった。
しかし、その努力も無駄だったようだ。
情けなくて、悔しくて、俺は流れ落ちる涙を止めることが出来なかった。薄暗いロビーでしばらくの間一人うずくまっていた。
「落ち込んでいる場合じゃないよな……」
涙を服の袖で拭うと俺は起き上がった。決まったことはもう仕方がない、大事なのはこれからどうするかだ。
実力が無い者がパーティから追い出されるのはよくある話だ。洋輔にとっても昔馴染みの俺を追放することは苦渋の結論だったのだろう。
悔しくてしかたなかったが、それでも洋輔を恨む気持ちは不思議と湧いてこなかった。
俺はなんとか気持ちを切り替え、足早にギルドを出ていった。
外は弱い雨が降っていた。午後11時過ぎだと言うのにこの町は少しも眠ろうとしない。まばゆいネオンの明かりが通りを歩く大勢を照らしている。
俺はギルドから距離が近く探索者たちに人気のバーに向かった。洋輔たちは別に行きつけの店があるためそこで鉢合わせになる心配はない。
(何としてもAランクパーティに移籍するぞ。Bじゃだめだ。)
雨の中を歩きながら俺は決意を固めた。
別に俺一人が生きていくだけなら、高いレベルのパーティに入る必要なんてない。しかし、妹のことを考えるとどうしても給料が高いA級パーティに入る必要があった。
エリクサーを入手するためには莫大な額の金が必要になる。ダンジョンを完全攻略して、攻略報酬としてエリクサーを手に入れる道もあるのだがそれはかなり厳しい道だ。
一番難易度が低いレベルⅠのダンジョンでも全員がS級探索者のパーティでないと攻略できないレベルとされている。
ただのB級探索者である俺にとってダンジョンを攻略するなんてできっこない。
それよりも、たまにオークションに出されるエリクサーを狙っていった方がはるかに確率は高い。
エリクサーの平均落札価格は2億円だ。
簡単に払える額ではないが、妹の命がかかってるんだ。絶対に貯めてやる。
もっとも、B級能力者である俺が、一つ上のランクのA級パーティに加入することは簡単ではない。
なにか階級差を覆すような武器がなければ、それは不可能だろう。しかし、俺には今のパーティで生き残るために磨いてきた探知スキルと調理スキル、そして鑑定スキルがあった。
これらのスキルはあまり戦闘には役に立つ物ではないが、ダンジョンを探索していくうえで非常に重要なスキルだ。これらのスキルのクオリティは他の探索者たちに負けないという自負はあった。
俺は探索者たちが行きつけのバー『センチュリー』の前に到着した。地下に続く階段を降りていくと扉を開いた。
この店には広い店内にダーツやビリヤードやスロットなどが設置されている。客は酒を飲みながらそれらを楽しんでいた。
俺は早速、顔馴染みの探索者を探し始めた。
親友が放った言葉に俺の背筋は凍り付いた。
ここは新宿ダンジョンのすぐそばに建てられた東京都探索者協会第7支部のロビーだ。時刻は午後11時を過ぎており、俺たち四人の他に人気は無い。日中はカウンターの向こうに座っているギルド嬢たちもすでに退勤しているようだ。
俺、加賀優斗は親友であり今までパーティを組んできた木場洋輔に思わぬ言葉をかけられた。心臓が短距離走を終えた後のように鼓動を速めていく。
「う、嘘だよな……?」
「俺たちが上にいけないのはクソ弱いお前のせいだ。昔のよしみで今まで我慢してきたがもう無理だ」
洋輔は射抜くような鋭い視線をこちらに向けてくる。容赦のない言葉が突き刺さって来るが俺は何とか説得を試みる。
「頼む! それだけはやめてくれ。お前も知ってるだろ。俺の妹のことを!」
妹は十三歳にして国指定の難病に侵されており、もう2年以上入院している。最近は身体を起こすことも苦しいようでずっと寝たきりだ。
この病を治すためにはダンジョン内でのみ入手できる薬「エリクサー」を手に入れるしかなかった。
「知っているが、それとこれとは別問題だ。うちのパーティは慈善活動でやってるわけじゃないんだ! お荷物をいつまでも置いておくわけには行かない」
洋輔は氷のように冷たい表情を浮かべている。五年間そばで見てきたがこんな顔は初めて見た。
「洋輔……、頼むよ。今このパーティから抜けるわけには行かないんだ。せめて、妹を助けるまではいさせてくれ! この通りだ」
俺は跪くと埃や泥で汚れた床に額を擦り付け必死に頼み込む。
「あっはっは! 土下座とか初めて見た! まじウケる!! キモー」
「みっともない! こんな奴と同じパーティにいたなんて思われたくないわ! あー。だっさ!」
一か月前にパーティに加入してきた女子、工藤晴美と曽根美香から嘲笑と侮蔑の声が耳に届く。顔から火が出るほど恥ずかしいが、今の俺にはこれ以外できることがない。
「頼むよ洋輔! 妹さえ救えるなら、俺はこれから先、ずっと給料をもらえなくても構わない。一生無給でこのパーティのために尽くすよ! だから、もうしばらくの間、このパーティにいさせてくれ!」
「これ以上、情けねぇ姿を晒すな!!」
「洋輔……」
俺は頭を上げた。三人の侮蔑の表情が心に突き刺さる。悔しくて仕方がないが涙がこみあげてきてしまう。
だめだ。まるで聞いちゃくれない。こいつを親友だと思っていた自分が馬鹿みたいだ。
「ねぇー、こんな奴ほっといて早くお店行こうよ!」
工藤は猫なで声を上げながら陽介の右腕に自らの両腕を回し胸を押し付けている。
「そうだよ。時間がもったいないよ。もう夜も遅いんだしさぁー」
曽根は甘えるような声を上げながら、洋輔の左手を掴んで引っ張って行こうとしている
「そうだな……」
洋輔は俺を一瞥すると、
「これに懲りたら身の丈にあった場所で生きて行くんだな」
と言い残し、ギルドを出て行ってしまった。俺は、誰もいなくなっただだっ広いロビーで一人呆然とするしかなかった。
洋輔とは十五の時からの付き合いだ。当時は二人ともEランク探索者だった。奴が俺を誘ってくれて俺たちのパーティ【レガリス】が結成されたのだが、まさか俺が追放されるとは思っていなかった。
俺は周りの能力者よりも使える魔法の数が多い。通常は2、3種類の魔法しか使えないのだが、俺は9種類の魔法が使える。特にモンスターとの戦闘で重宝される攻撃魔法の魔法は『火』『水』『雷』『風』『土』『爆』の6種類も使うことができた。
しかし、俺はいわゆる器用貧乏というやつで、さまざまな魔法が使える代わりにオーラの総量が90万しかなかった。これはB級能力者の中では平均的な数字だがA級パーティの仲間に比べたら遥かに低いものだった。
いい魔法を持っていたとしてもオーラが足りなければその価値を活かすことはできない。俺は周りの冒険者たちから『宝の持ち腐れ』『器用貧乏の極み』などと声をかけられてきた。
そんな俺に対して洋輔が不満を抱いていることは以前から気付いてはいた。だから、罠の察知能力を高め、モンスター知識を増やし、テントの設営や焚き火の準備、食後の片付けなどの汚れ仕事は全て引き受けてきた。。パーティのためにできることは何でもやってきたつもりだった。
しかし、その努力も無駄だったようだ。
情けなくて、悔しくて、俺は流れ落ちる涙を止めることが出来なかった。薄暗いロビーでしばらくの間一人うずくまっていた。
「落ち込んでいる場合じゃないよな……」
涙を服の袖で拭うと俺は起き上がった。決まったことはもう仕方がない、大事なのはこれからどうするかだ。
実力が無い者がパーティから追い出されるのはよくある話だ。洋輔にとっても昔馴染みの俺を追放することは苦渋の結論だったのだろう。
悔しくてしかたなかったが、それでも洋輔を恨む気持ちは不思議と湧いてこなかった。
俺はなんとか気持ちを切り替え、足早にギルドを出ていった。
外は弱い雨が降っていた。午後11時過ぎだと言うのにこの町は少しも眠ろうとしない。まばゆいネオンの明かりが通りを歩く大勢を照らしている。
俺はギルドから距離が近く探索者たちに人気のバーに向かった。洋輔たちは別に行きつけの店があるためそこで鉢合わせになる心配はない。
(何としてもAランクパーティに移籍するぞ。Bじゃだめだ。)
雨の中を歩きながら俺は決意を固めた。
別に俺一人が生きていくだけなら、高いレベルのパーティに入る必要なんてない。しかし、妹のことを考えるとどうしても給料が高いA級パーティに入る必要があった。
エリクサーを入手するためには莫大な額の金が必要になる。ダンジョンを完全攻略して、攻略報酬としてエリクサーを手に入れる道もあるのだがそれはかなり厳しい道だ。
一番難易度が低いレベルⅠのダンジョンでも全員がS級探索者のパーティでないと攻略できないレベルとされている。
ただのB級探索者である俺にとってダンジョンを攻略するなんてできっこない。
それよりも、たまにオークションに出されるエリクサーを狙っていった方がはるかに確率は高い。
エリクサーの平均落札価格は2億円だ。
簡単に払える額ではないが、妹の命がかかってるんだ。絶対に貯めてやる。
もっとも、B級能力者である俺が、一つ上のランクのA級パーティに加入することは簡単ではない。
なにか階級差を覆すような武器がなければ、それは不可能だろう。しかし、俺には今のパーティで生き残るために磨いてきた探知スキルと調理スキル、そして鑑定スキルがあった。
これらのスキルはあまり戦闘には役に立つ物ではないが、ダンジョンを探索していくうえで非常に重要なスキルだ。これらのスキルのクオリティは他の探索者たちに負けないという自負はあった。
俺は探索者たちが行きつけのバー『センチュリー』の前に到着した。地下に続く階段を降りていくと扉を開いた。
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