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EPISODE55

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そして、勢いよく俺に抱きついてきた。体制を崩し、その場に座り込むが、実莉は俺を離さない。
実莉の目からは涙が零れ落ちている。
「え?え?なに?」
俺はまだ状況が完全に把握出来ていない。だが、実莉はそんなのお構い無しに言葉を紡ぐ。
「ごめん、私のせいで・・・・そして、ありがとう。守ってくれて・・・」
俺はまだ何が起こってるのか分からないが、実莉の言葉に返すぐらいはできる。
「俺はお兄ちゃんだ。別に妹を守るぐらい普通だよ」
実莉の頭を優しく撫でる。
俺はここにいる、死んでなんかないと分からせるように。
「私・・・私・・・怖かったんだよ。修が死んじゃうんじゃないかって」
「俺はそんなヤワじゃない。4月に海で泳いでも風邪引かないレベルにまでは強い!ってか、そろそろ離れてくれ、恥ずかしい」
そう言うが、実莉は首を横に振る。嫌だ、ということだろう。
本当なら今すぐに引き離したいところではあるが、こいつが誰よりも俺のことを心配してくれていたんだろう。だから、今日だけは甘んじてやることにしよう。
ヤヒテシケトキナと、俺のスマホから音が鳴る。電話だ。誰からだろう?てか、マジで離れないな。
スマホの画面を見ると早美怜だった。
「なんだ?」
「退院おめでとう!」
「んで、要件は?」
「別に退院おめでとうって言おうとしただけだよ」
「なら、切るぞ。こっちは色々とお取り込み中なんだ」
「あぁー、待って待って!いい情報が手に入ったの」
「んだよ?」
「今度は細見先輩が牡蠣食べて、食中毒で入院した」
「マジで呪い、あるんじゃね?」
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