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EPISODE123

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そこからは普通に優香の要望に応えてやった。
動物園に行き、そこで昼食を取って、その後は優香のショッピングに付き合った。そして気づけば夜になっていた。
そして今・・・
「重ひ・・・・」 
優香の荷物を持ちながら住宅街を歩く。それは何故か?優香の荷物を優香の家まで運ぶためだ。俺は紳士だからな、夜道を後輩を1人で歩かせる訳にはいかない。
紳士修くんと呼んでくれ、そして女の子は俺に惚れてくれ。なんて冗談はここまでにしておこう。にしても荷物が重い。そのうち腕がちぎれそうだ。
「先輩は男の子なんですから頑張ってください」
「男女差別良くない・・・」
そう言うとぷくぅっと頬をふくらませた優香は小走りで俺の前に来て、体を翻す。
少し前かがみになり、上目遣いで一言
「先輩、おーねーがい♡」
あざとい? ぶりっ子? わざとらしい?
それでも可愛ければ男は簡単に落ちるんだよ!
「先輩に任せなさい!」
そうして俺たちはまた歩き出すのであった。



「やっと着いた」
優香の家の前まで来た所で俺は優香に荷物を渡す。
「おっと・・・」
不安定ながらちゃんと持ってることを確認し、俺は家の方向へ歩き出そうとすると、優香に声をかけられた。
「先輩、夜ご飯食べていきます?」
「いや、いいよ。急に家に上がるのは迷惑だろうし」
「別にいいのに・・・・それじゃ、渡しの買い物に付き合ってくれたご褒美をあげます! 目を瞑ってください」
言われるがまま目を瞑る。そして数秒後、俺の頬に何か分からない柔らかい感触が伝わってくる。
「おまっ・・・」
目を開けると視界の先には恥ずかしそうに手で口元を抑え、微笑を浮かべる優香の姿があった。
「キスって案外恥ずかしいんですね。それじゃ、今日1日ありがとうございました。キス以上の事をしたい時は私に言ってくださいね。先輩なら何時でもウェルカムなんで!」
「ちょ、おまっ!」
俺が言葉を発する隙も与えずに優香は家へと帰って行った。
俺は頬をポリポリと書きながら一言発する。
「これはファーストキスに入るのかな?」
その声は真っ暗な住宅街へと消えていくのであった。
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