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乳デカい故に、貴からず

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 『携帯の機種変更の件、了承しました。未成年では手続きが出来ないでしょうから、同意書と身分証明書の画像データを添付します。こちらを印刷し、店舗に提出してください。印刷環境がなければ、追ってコピーを郵送します。父より』
 スマホに機種変更したいって希望を親父に伝えた所、送られてきた返事がこれだよ。携帯の方じゃなくて、パソコンのEメールで受信したやつ。おれだって、ノートパソコンの一つくらい持ってるんだ。普段、めったに使ってないけどね。
 最近ではコンビニの印刷機でプリントアウト出来るから、後で画像データを持って行くけど…。そう言う問題でもなくてさ。これが、離れて暮らす息子に対して久々に送る文章かって話。事務的って言うのか、得意先に送るビジネスメールかよ。
 そう言う所やぞ、そう言う所。

 ひらはん、ほんひひは…。失礼、みなさんこんにちは。一ノ瀬蒼12歳、逃げも隠れもしないホモです。今ちょっと、取り込み中で忙しいんですよ。
 え?一体、何をしてたかって?決まってるじゃないですか。この度めでたく彼氏となった雪兎の、おっぱい吸うのにです…。って、突然言われても訳が分からないですよね。最初から、順を追って説明します。
 まず、本日は日曜日。冒頭でも述べたとおり、携帯の機種変更をしにショップへとやって来ました。親父の同意書があるから、おれたちだけでも手続きは出来たんだけど…。伊勢嶋家の次男である、「蛍兄さん」に付き添ってもらったんですよ。だから、スムーズに店員とのやり取りが出来ました。
 蛍兄さんは、今年20歳で某有名医大の二回生。偏差値クッソ高いらしいけど、全然気取らない感じのいい人です。スポーツマンだそうだから、おれとも気の合う部分があったのかな。だけど何だか、向こうからは妙に気に入られすぎたと言うのか…。
 「この年頃の、少年の…。不自然なまでに長く伸びた手足って、いいよね。自分では、この美しさに気づいていないんだ…。フフフ…」
 とか何とか言って、ベタベタ身体を触って来やがった。賭けてもいいが、ガチのショタコンだな。この人は。前いたサッカーチームでも、こんな感じのコーチがいたよ。将来は医者になるんだろうけど、小児科医にだけはならない方が世のため人のためだと思います。
 さて、問題なく機種変更も完了しました。これでおれも、めでたくスマホ童貞卒業!ついでに、本来の意味での童貞も雪兎で卒ぎょ…。いや、何でもない。蛍兄さんと別れた後は、雪兎と二人でそこら辺をぶらついたんだ。欲しい本があるとか言ってたから、本屋か図書館にでも行くのかと思いきや…。
 「あぁぁぁ!如月ふゆ先生の、新刊が出てる!『クロスブリード・パーク』。イケメン擬人化した獣たちが組んずほぐれつ交尾する、全国百万人のケモナー垂涎の一冊じゃないですかぁ!だけどね、いわゆるオメガバースものとはまた趣が違って…」
 うん。駅前のアヌメイトで、BL漫画を買いに来た訳やね。ちょっと、予想しないでもなかったわ。ってかどう見てもR-18ぽいけど、小学生が買って大丈夫なんですかその本…?おれも、付き合いで無難そうな漫画を一冊だけ買ったよ。どんな内容の本だっかは、内緒。
 ちなみに漫画のセリフでは文字が「マテリアル」には変身しても、物語の実体化までに至らないらしいよ。例の、「物語性」の問題かな。境目が、やっぱりよく分からない。ってか実際に、試そうとはしてたのね。
 そんなこんなでお互いの戦利品を拝むため、近くのネカフェにやって来た訳だけど…。最近のネカフェって、中が個室になってるのね。いや、昔も今も入った事ないですけど。噂には、ちょっと聞いていた。
 男同士、鍵付きの個室に二人きりでヤる事と言ったら一つじゃん?そうだよね、おっぱい吸うよね。ってな訳で個室に入るや否や、雪兎を力づくで床に押さえつけた。それから服をひっぺがして、さっきからずっと乳首を舐めたり吸ったり弄んだりしてた所だよ。
 おぉ、これは…。おれは今までずっと、おっぱいと言えば女の子の巨乳こそ全てだと思っていた。だけど違う、そうじゃない。乳デカいが故に、貴からずって言うもんな。こう、揉みやすさとか吸いやすさとか舌での転がしやすさとか色々あると思うんだ。
 その点この乳首は、そう言った要素をすべて兼ね備えている。時間が許す限り、いつまでだって味わっていたい。全くもって、男を駄目にするけしからん乳首だ。何ならちょっと、甘い味がしてきたような気もするぞ…?
 「もう、いい加減にして!そんな、味とかする訳がないでしょう!そこまでにしとかないと、大声出しますよ!」
 雪兎が叫んで、おれの顔を引き離した。残念。かなり強く、押さえつけてたつもりだけどな。お互い小学生だから、まだそこまでの筋力差がある訳でもないんだよ。もっと鍛えて、今度は完全に抵抗を抑えないと。
 「これだけ一生懸命吸ってりゃ、何か出てきてもおかしくないけどな。まぁ、いいや」
 そう言って、なおも愚痴る雪兎に唇を重ねて塞いでやった。戸惑ってたけど、今度は特に抵抗もしなくなったみたい。
 こないだの告白の時は、ギャラリーが多くてじっくり味わう事も出来なかったけど…。雪兎とのキスも、すっごい気持ちいいんだよな。唇の柔らかさが、マシュマロみたいで半端ない。よく休み時間とか、小まめにリップクリーム塗ってるもんな…。あの仕草がちょっと恥ずかしかったけど、おれもちゃんと手入れするべきだろうか。帰りに、ドラッグストアで銘柄とか教えてもらおう。
 「もう、あお君ったら…。本当に、えっちなんだから。って言うかキスも、結構慣れてるよね。やっぱり、こないだが初めてじゃなかったんだ…?」
 「うーん。まぁ、そうだな。ファーストキスは、姉ちゃんとだから」
 「はい?お姉さんて、確か亡くなられたって言う?その…『男の子と付き合った経験もないのが、不憫だったから』とか、そう言う?」
 「そんな、美しい?もんじゃねぇよ。でも、結果的にはそうなるのかな。お互い低学年くらいの時に、姉ちゃんが少女漫画にハマってたんだよ。ある日突然、『キスってどんなものかしら』とか言い出すからさ。優しい弟としては、付き合ってやった訳。母さんがそれ見てて、ブチ切れして来やがったんだよな。普通は、微笑ましいって思う所じゃん?」
 「何ともはや…。すごい人生、送ってるよね。今更だけど。でも言われてみればぼくも、実の兄とキスしてたような苦い記憶が…。ど、どっちみち家族とだからノーカン?ファーストキスは、ぼくって事になるのかな」
 「いや。その後も、ちょいちょい学校の女子から告白されてさ。全部お断りしてたんだけど、たまーに『付き合ってくれなくてもいいから、一度だけキスして』みたいな奴がいたんだ。おれも、ヤるだけヤって捨てられるならいいかなと思って」
 「言い方ぁ!最悪だ、この人!うぅ。付き合い始めたばかりだけど、もうすでに不安になってきた…」
 「大丈夫だって、平気平気!雪兎の事は、本気で愛してるもん。だからもう一回、乳首舐めさせて」
 「もう駄目ぇ!あんまりおっぱいばかり吸ってると、頭が馬鹿になっちゃいますよ!」
 そう言って、雪兎はふてくされてたけど…。何だかんだ、その後も抱き合ったりキスをしたり。二人きりでイチャイチャして、有意義な時間を過ごせました。あ、あと八重歯も思う存分舐めさせてもらったよ。どうも、ごちそうさま。

 え?オチ?ないですよ、そんなもん。今回は、BL回だもん。最初っから、ヤマもオチもイミもないって。
 それじゃ、今までのはBLじゃなかったのかって?そこを突かれると、痛いな。じ、児童書を模したファンタジー小説です…。
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