転校先で知り合った優等生腐男子と、何でか付き合うようになりました

あきら

文字の大きさ
20 / 21

気に入らない結末を、一つだけ変える権限

しおりを挟む
 『ちょーっと、待ったぁ!あんたこんな結末で、本当にいいと思ってるの!?』

 うおっ!ビックリしたぁ!ビックリしすきて、挨拶するのも忘れてたわ。
 みなさん、こんばんは。一ノ瀬蒼12歳、ホモです。東京の自宅に帰って、久々の自室でゆっくりと休んでいたんだ。
 何せ群馬での数ヶ月間、ちょっと一言では語り尽くせない濃厚な体験ばかりだったからな。案の定親父はいないんで、晩飯は適当に出前取って食って。風呂入って、ベッドに横たわって…。そのまま、死んだみたいに寝てた。そしたら突然、夜中に強い光を感じて目が覚めたんだ。
 うおっ、まぶしっ。何の光ぃ!?…と、戸惑っている暇もなく…。部屋の中を、真っ白に光る鳥さんたちが飛び交っている光景を見た。何を言っているか分からねぇと思うが、おれ自身にも何が起こっているか理解出来なかったぜ。
 ただ、光の出どころは確認出来た。学習机の上に置いていた、由香里姉ちゃんの「遺書」からだ。一文字一文字が真っ白に光り、くるくると回転する。気付けば、それらの文字が白い鳥さんへと変化して…。さらに鳥さんたちが集まって、一人の少女へと姿を変えていた。
 少女は白いワンピースを、風ではためかせながら静かに微笑んでいる。またいつの間にか、背景もおれの部屋から海岸へと変わっていた。少女の名前?賢明なる読者さんなら、もう察しはついているよね。



 『あたしよ。あお君、こうやって話すのはお久しぶりね』
 「由香里姉ちゃん、パンツ!それ以上スカートはためかせたら、パンツが見えてやべーぞ!って言うかもしかして、履いてな…?」
 『あたしのパンツとかは、どうでもいい事よ!どうせ、あんたにしか姿が見えないんだからね』
 由香里姉ちゃん…マテリアルが実体した姿?の姉ちゃんが、そう答えた。おれやっぱ、雪兎と同じ能力を持っていた訳?いや違う、そうじゃないと言う確信があった。能力の持ち主は、あくまで由香里姉ちゃんだ。この白い鳥さんたちも、姉ちゃんのマテリアルとして変化したもの。
 姉ちゃんが、亡くなって…。その「心」みたいなものは、本当におれの中で行き続けていたのか?そして自身の能力でマテリアルを使役し、自分の姿へと実体化させた…。何だか、鶏がさきか卵がさきかみてぇな話だな。
 『せっかく姉との感動の再会なのに、何を一人でウダウダ悩んでんのよ。あんたみたいなバカが、いくら考えてても時間の無駄なんだからね』
 「あのさぁ、由香里姉ちゃん。何だか、ちょっとだけ…キャラ変わった?前は、もっとおしとやかだったと思うんだけど」
 『ほほほ。死んだりとか、色々あったのよ。ってか、あたしの事はどうだっていいわ。今は、あんたの事を話してんの。あんた、愛しの雪兎くんに存在を忘れられてめでたしめでたしみたいな結末で本当に満足な訳?』
 「えぇー…。今このタイミングで、そんな事言っちゃう?だってさぁ、仕方ないじゃん…。おれには、サッカーの夢があるし。雪兎にも、雪兎の人生があるんだ」
 『黙らっしゃい!何を、日和ってんのよ!遺書にも、書いてやったでしょう。これからは、自分の幸せだけを考えろって!あんた、サッカーと雪兎くんとどっちが大切なの?』
 「何だよ突然、面倒くせぇ彼女みてぇな。そんなの…どっちも大切、に決まってんじゃん。選べないよ。サッカーも雪兎も、どっちも大好き。おれの一部であって、切り離せるものじゃないんだ…」
 『よく言ったわ!それじゃ早速、この下らない結局にぶち破って新しい展開へと切り替えましょう』
 「な…何だよ、新しい展開って。話が見えねぇ。姉ちゃん、一体何を始める気なんだ?」
 混乱する頭の中、やっとの事でそう尋ねると由香里姉ちゃんは笑いながら答えた。その口の中には、燦然と光る八重歯があったようななかったような。
 「あたしにはね。気に入らない結末を、一つだけ変える権限があるのよ!さぁ、行くわよ。ここから先は、あんた一人の力で何とかなさい」
 そう言うと、鳥さんたちがさらに激しく周りを飛び交って…!おれは何も考えられず、めのまえがまっしろになった。何だってんだよ、本当に。でも、いいかな。これはこれで。自分が本当に求める結末ってやつが、この先に待ち受けている気がする。
 
 …今度こそこの手で、あいつを迎えに行く。おれの事を覚えてるかどうかなんて、もはやどうでもいい話だ。だから、ケツを…。じゃなくて、首を洗って待ってろよ。雪兎!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる

七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。 だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。 そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。 唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。 優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。 穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。 ――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。

前世が教師だった少年は辺境で愛される

結衣可
BL
雪深い帝国北端の地で、傷つき行き倒れていた少年ミカを拾ったのは、寡黙な辺境伯ダリウスだった。妻を亡くし、幼い息子リアムと静かに暮らしていた彼は、ミカの知識と優しさに驚きつつも、次第にその穏やかな笑顔に心を癒されていく。 ミカは実は異世界からの転生者。前世の記憶を抱え、この世界でどう生きるべきか迷っていたが、リアムの教育係として過ごすうちに、“誰かに必要とされる”温もりを思い出していく。 雪の館で共に過ごす日々は、やがてお互いにとってかけがえのない時間となり、新しい日々へと続いていく――。

僕は今日、謳う

ゆい
BL
紅葉と海を観に行きたいと、僕は彼に我儘を言った。 彼はこのクリスマスに彼女と結婚する。 彼との最後の思い出が欲しかったから。 彼は少し困り顔をしながらも、付き合ってくれた。 本当にありがとう。親友として、男として、一人の人間として、本当に愛しているよ。 終始セリフばかりです。 話中の曲は、globe 『Wanderin' Destiny』です。 名前が出てこない短編part4です。 誤字脱字がないか確認はしておりますが、ありましたら報告をいただけたら嬉しいです。 途中手直しついでに加筆もするかもです。 感想もお待ちしています。 片付けしていたら、昔懐かしの3.5㌅FDが出てきまして。内容を確認したら、若かりし頃の黒歴史が! あらすじ自体は悪くはないと思ったので、大幅に修正して投稿しました。 私の黒歴史供養のために、お付き合いくださいませ。

人生はままならない

野埜乃のの
BL
「おまえとは番にならない」 結婚して迎えた初夜。彼はそう僕にそう告げた。 異世界オメガバース ツイノベです

バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?

cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき) ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。 「そうだ、バイトをしよう!」 一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。 教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった! なんで元カレがここにいるんだよ! 俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。 「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」 「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」 なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ! もう一度期待したら、また傷つく? あの時、俺たちが別れた本当の理由は──? 「そろそろ我慢の限界かも」

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! できるかぎり毎日? お話の予告と皆の裏話? のあがるインスタとYouTube インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

処理中です...