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リング・ア・リング・オー・ローゼス
他ならぬ、自分だけの人生でしょ?
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バラの花輪だ 手を繋ごうよ
ポケットに 花束さして
ハックション!ハックション!
みぃんな ころぼ。
みなさんこんにちは。コリン・レノックスだよ。ここから少し、駆け足で話をさせて頂きたい。
ディコンと一緒に、秘密の花園の扉を開けた。本来の、彼の仕事?知るかそんなもん!僕は、この屋敷の正当なる次期頭首だぞ。彼の上司に直談判して、堂々と連れてきたわいな。元々見習いで、そんなに大した仕事もさせてもらっていなかったらしい。
中はそりゃあ、荒れ放題に荒れていたさ。でも不思議と、温かみと優しさを感じた。
「し・し・湿った大地の、新鮮な香りです。いい庭です…」
「手伝ってくれるかい?ディコンよ。この庭を、復活させる。伯父上…いや、父の傷ついた心を再生させるためにね」
そして願わくば、君の心をも再生させるため。あれから、少し吃音について調べた。医学については、ちんぷんかんぷんだったが…。どうにも幼児期に発症するものと、ストレスなどによって後天的に発症するものがあるらしいよ。
幼児期は活発に喋っていたそうだから、彼は明らかに後者の方だろう。であれば、その心的外傷を癒してやる事で症状が改善されるのでないかな。実際、初対面の時よりは彼の滑舌も随分と良くなってきた気がする。また、しばらく会話を続けている内に症状を感じさせない程すらすらと喋ってきたりする。
「僕は、君の話し方を『個性』と思っているよ。だけど今は、敢えて『症状』と呼ばせてもらおう。症状を、改善させたいと思わないのかい?仕事だって、円滑にこなせるだろうし。それに、君だって年頃の男性だろう。美しい女性と、愛を語り合いたいとか…」
それ以上は、言わせてもらえなかった。苦そうに笑いながら、ゆっくりと首を振って言う。
「お、おれは別にっ…!し・しご、しごっ」
いけない。あまり意識させては、逆効果かな。今のは、きっと『おれの仕事は植物を相手にする事なんで、人と話す必要なんてねぇです』とでも言いたかったのだろう。そうじゃなくて、君の能力を以てすればもっといい仕事が出来るんじゃって意味合いなんだけど…。
ところで僕も早口で噛みやすい方だから、彼の気持ちは分からないでもない。なぜか意識すればするほど、『おはよう』とか『ありがとう』とか簡単な言葉を発せなくなるんだよね。
「それに、坊ちゃまほど美しい方はこの世にいませんよ」
おい、そこは噛まずに言うんかい!相変わらず、歯の浮くような台詞だけはお得意な事で。でも、色んな意味でちょっと嬉しかったかな。
言葉を返せずにいると、彼の手から何かしらを渡された。これは…?
「き、球根でさ。こ・これを、庭園いっぱいに植えていきやしょう」
僕の人生で、花を植える機会なんてのはこれが初めてだ。周りには数え切れない死が取り巻いていたのに、何だか不思議な気分だな。でも土を掘り草を抜き、その球根を植えると…。暗い地下で球根が元気を出し、猛烈に働き出すような気がした。
「はーい坊っちゃま、いい表情ですよ!さぁ、もっと楽しそうに!」
本日は、何をしているかって?正解は、久々に「メアリー」の格好をして写真撮影をしているよ。女装の必要が無くなった時、こんな衣装は捨ててしまおうとも考えたが…。ヤケになって、燃えるゴミの日に出さず本当に良かったと思っている。どんな物でも使い道があるから大事にしろと、乳母のアーヤが言っていた通りだな。
撮影は、メイドのマーサにお願いした。例のブランコを修理してもらい、ディコンと一緒に並んで撮ったよ。これが、姉・メアリーに対して最後の供養だ。これ以降は、僕自身の幸せと恋のために生きて行きたいと思う。いいよね?
天国のメアリーが、こう答えた気がした。
『は?あたし最初っから、そんな事頼んでませんけど。いいからアンタは、アンタ自身のために生きなさい。他ならぬ、自分だけの人生でしょ?』
せっかくなので、女の子としてでなく本来の姿でも撮影をしてもらった。何だか、この辺りからマーサに変なスイッチが入ってしまったようで…。
「いいねぇ、お二人さん。もっともっと、密着して!お次は姫抱っこか~ら~の~、壁ドン行ってみようか!あ、目線こっちに下さい!」
何て事だ。まさか彼女が、後の世で言う腐女子であったとはね。目に変な光が宿った彼女を何とかなだめて、普通のポーズで撮影させてもらったよ。随分と片付いてきた庭園の中で、ディコンと二人並んで撮った。
この日の写真は、いつまでも色褪せない二人だけの宝物だ。
ポケットに 花束さして
ハックション!ハックション!
みぃんな ころぼ。
みなさんこんにちは。コリン・レノックスだよ。ここから少し、駆け足で話をさせて頂きたい。
ディコンと一緒に、秘密の花園の扉を開けた。本来の、彼の仕事?知るかそんなもん!僕は、この屋敷の正当なる次期頭首だぞ。彼の上司に直談判して、堂々と連れてきたわいな。元々見習いで、そんなに大した仕事もさせてもらっていなかったらしい。
中はそりゃあ、荒れ放題に荒れていたさ。でも不思議と、温かみと優しさを感じた。
「し・し・湿った大地の、新鮮な香りです。いい庭です…」
「手伝ってくれるかい?ディコンよ。この庭を、復活させる。伯父上…いや、父の傷ついた心を再生させるためにね」
そして願わくば、君の心をも再生させるため。あれから、少し吃音について調べた。医学については、ちんぷんかんぷんだったが…。どうにも幼児期に発症するものと、ストレスなどによって後天的に発症するものがあるらしいよ。
幼児期は活発に喋っていたそうだから、彼は明らかに後者の方だろう。であれば、その心的外傷を癒してやる事で症状が改善されるのでないかな。実際、初対面の時よりは彼の滑舌も随分と良くなってきた気がする。また、しばらく会話を続けている内に症状を感じさせない程すらすらと喋ってきたりする。
「僕は、君の話し方を『個性』と思っているよ。だけど今は、敢えて『症状』と呼ばせてもらおう。症状を、改善させたいと思わないのかい?仕事だって、円滑にこなせるだろうし。それに、君だって年頃の男性だろう。美しい女性と、愛を語り合いたいとか…」
それ以上は、言わせてもらえなかった。苦そうに笑いながら、ゆっくりと首を振って言う。
「お、おれは別にっ…!し・しご、しごっ」
いけない。あまり意識させては、逆効果かな。今のは、きっと『おれの仕事は植物を相手にする事なんで、人と話す必要なんてねぇです』とでも言いたかったのだろう。そうじゃなくて、君の能力を以てすればもっといい仕事が出来るんじゃって意味合いなんだけど…。
ところで僕も早口で噛みやすい方だから、彼の気持ちは分からないでもない。なぜか意識すればするほど、『おはよう』とか『ありがとう』とか簡単な言葉を発せなくなるんだよね。
「それに、坊ちゃまほど美しい方はこの世にいませんよ」
おい、そこは噛まずに言うんかい!相変わらず、歯の浮くような台詞だけはお得意な事で。でも、色んな意味でちょっと嬉しかったかな。
言葉を返せずにいると、彼の手から何かしらを渡された。これは…?
「き、球根でさ。こ・これを、庭園いっぱいに植えていきやしょう」
僕の人生で、花を植える機会なんてのはこれが初めてだ。周りには数え切れない死が取り巻いていたのに、何だか不思議な気分だな。でも土を掘り草を抜き、その球根を植えると…。暗い地下で球根が元気を出し、猛烈に働き出すような気がした。
「はーい坊っちゃま、いい表情ですよ!さぁ、もっと楽しそうに!」
本日は、何をしているかって?正解は、久々に「メアリー」の格好をして写真撮影をしているよ。女装の必要が無くなった時、こんな衣装は捨ててしまおうとも考えたが…。ヤケになって、燃えるゴミの日に出さず本当に良かったと思っている。どんな物でも使い道があるから大事にしろと、乳母のアーヤが言っていた通りだな。
撮影は、メイドのマーサにお願いした。例のブランコを修理してもらい、ディコンと一緒に並んで撮ったよ。これが、姉・メアリーに対して最後の供養だ。これ以降は、僕自身の幸せと恋のために生きて行きたいと思う。いいよね?
天国のメアリーが、こう答えた気がした。
『は?あたし最初っから、そんな事頼んでませんけど。いいからアンタは、アンタ自身のために生きなさい。他ならぬ、自分だけの人生でしょ?』
せっかくなので、女の子としてでなく本来の姿でも撮影をしてもらった。何だか、この辺りからマーサに変なスイッチが入ってしまったようで…。
「いいねぇ、お二人さん。もっともっと、密着して!お次は姫抱っこか~ら~の~、壁ドン行ってみようか!あ、目線こっちに下さい!」
何て事だ。まさか彼女が、後の世で言う腐女子であったとはね。目に変な光が宿った彼女を何とかなだめて、普通のポーズで撮影させてもらったよ。随分と片付いてきた庭園の中で、ディコンと二人並んで撮った。
この日の写真は、いつまでも色褪せない二人だけの宝物だ。
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