上 下
20 / 41
罰ゲームでクラス一の陰キャに告白して付き合う話

大きく…なってないね全然

しおりを挟む
 試合が終わった。得点の付け方が、よく分からんけど…。どうやら、加藤くんが応援していた先輩たちの勝利だったようだ。すぐに駆け付けると思いきや、珍しくモジモジとして決心がつかないようだ。

 「どうしたの?直接彼の許に会ってきて、挨拶すればいいじゃん。尊敬してる、先輩なんでしょ?」
 そう言って焚きつけると、何やら小声でフニャフニャとよく分からん事を言いながら彼の許に駆け付けて行った。こう言う所は、結構ヘタレだよな。オレに対しては、思ったこと何でもハッキリ言いやがるくせにさ。
 「弓弦さん…」
 苗字だか下の名前だか知らんが、加藤くんが先輩に声をかけようとした時だった…。ってか、名前に上下の区別ないんだっけ?
 突然観客席から駆けつけた女性が、弓弦先輩とやらに抱きついた。おぉっと、これは加藤くんの目の前で何ともショッキングな…。でも、そうだよね。弓弦先輩なかなかのイケメンさんだし、当然そう言う相手もいらっしゃるよね…。加藤くんの存在に気づいた先輩が、彼女の身体を引き離しながら言う。
 「か、加藤くん?久しぶり。大きく…なってないね全然。LIMEで連絡したけど、本当に試合見に来てくれるなんて。どうしたの今日は」
 「弓弦さん…。そ、その。大した用事ではないのですよ。言いましたけど、スマホに機種変しましたのでその報告と…。そ、その機種変に付いてきてもらったのがそこの彼です。クラスメートの二階堂怜央くん」
 「そうなんだ?へぇ、いいお友達が出来たみたいで良かったね!俺も、安心した」
 「ボクに友達がいない事、ずっと気にしてましたものね。スマホもそうですけど、彼がボクの知らなかった色んな事を教えてくれます。朝の電車にも、付き合ってくれるそうです。だから…ボクは、もう大丈夫なのですよ」
 あなたがいなくても、と言う意味だろう。加藤くんは再びフニャフニャと別れの挨拶らしき言葉を口ずさんで、そのまま早足で弓道場を出て行った。残された先輩と彼女さんが、呆気に取られたような表情をして見ていた。
 オレは…喜ぶ所ではあるのかな。何だかんだ、ライバルが減った訳だし。だけど、とてもそんな気持ちになれない…。何でか知らないが、オレの胸まで締め付けられるように苦しい。とりあえず、すぐに彼の許に駆け付けて…何て言おう。
 そんな事を思っていたら、呆気に取られていた先輩がやっとの事で口を開いて彼女に声をかけた。
 「今の子が、ちょいちょい言ってた後輩の子…。学校は、別なんだけど。彼、どうしたんだろうねマジで。ってかさお姉ちゃん。後輩も見てるんだから、抱きつくとかやめてくんない?もうお互い、いい年なんだからさぁ」
 お姉ちゃんとな!?そういやどちらも美男美女で、どことなく顔に共通点あるわ。え?そしたら、弓弦先輩フリーだったって事…?そう考えていると、今度は背後から駆けつけてきたチャラい男が先輩に抱きついた。次から次へと、騒がしい弓道場だなオイ!
 「ゆづー!ごめんなさいねぇ、試合見に来れなくって。ってか、何よさっきのカワイイ男の子。アタシと言うものがありながら、隅に置けないわぁ~」
 こ、こいつはいわゆるオネエ枠!弓弦先輩も今度は身体を引き離す事なく、顔を赤らめながらヘラヘラと笑っている。どうでもいいが、結弦って名前(苗字じゃない方ね)だったらしいな…。
 腐男子歴が短いこのオレでも、ハッキリと分かる。こいつらは、恋人的な意味で付き合っているな…?しかも、付き合って結構長いと見た。うん、でもまぁ…。多少、予想しないでもなかったわ。メタな事言うと、「絶対BLになる世界」だからな。ここ…。

 加藤くんに、伝えるべきか?色んな意味で、やめといた方がいいだろうな…。
しおりを挟む

処理中です...