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私とホワイトエンジェル

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今日も昼休み、手作りクッキーを持参し、
魔法クラスへと来ていた。
そこで一人でいるルイ様を発見した。

「ルイ様!」
「げっ!!またかよ」
「今日はお一人ですか?」

周囲を見回しウララを探す。

「今日はウララは休みだよ!」
「えっ?」
「ジェイド、余計な事言うなよ」
「君、この間ウララに吹っ飛ばされてた子だよね?」

私の顔をジロジロ見てくるこの男を私は知っている。
ジェイド・ブラウン。
元気そうに見えているが、この人は私の患者だ。
気づかれないとは思うがバレては困る。


「やっぱりルイの知り合いなの?紹介してよ」
「知り合いではない、他人だ」
「へぇ、そうなんだ。じゃあこの子俺が貰ってもいいんだね」
「えっ?お前何言ってんの?俺達は貴族だぞ。一般市民となんか付き合えるかよ」
「そう?俺はこんな可愛い子ならOKだけど」
「可愛い!?」
「あぁ、それに見てみろよ」

私はぐいっと腕を引っ張られジェイドに、
顔を押さえられた。


「この目!貴重なブルーアイズだぞ」
「!!」

ヤバい。逃げなくては。
私はジェイドの手を振りほどいて二人の前から立ち去った。


「あーぁ、逃げちゃった。残念」
「本当にあのブルーアイズなのか?」
「そうだよ。なぁルイ、俺あの子に本気になっていい?」
「、、、俺には関係ない」
「じゃあ遠慮なく」


ジェイドはニコっと笑うと教室へ戻って行った。






ジェイドに会ってからどっと疲れたが、
今日週に一回のお仕事の日。
学校が終わって夜から病院へ向かう。
疲れてる暇はない。

一度フィースト家に戻ると、
ローブを脱ぎ、クローゼットを開けた。

仕事場の病院は、貴族のみが通うことを許されている
場所であり、要は高いお金を支払った者のみが、私の回復魔法で治療される。

私としては、貴族も市民も関係ないのだが
この仕事は回復魔法が使える者達が、
代々受け継いだ来た事だ。


すると部屋の扉をノックする音が聞こえた。

「スノウ」
「お母様」
「病院まで一緒に行きましょ」
「いえ、仕事の際は父様が迎えに来て下さるので大丈夫です。それと、病院で会っても他人のふりをした方が良いかと。」
「スノウが言うならわかったわ、じゃあ今日も宜しくね」
「はい。お母様」


回復魔法が使える私を欲しがる貴族は沢山いる。
それがいい人ばかりではない。
もちろん力を悪用する人もいるだろう。
だから私の正体をバレてはならない。


私は、白いローブに着替え髪をポニーテールに結い金色の髪留めをつけた。
胸にはホワイトローズのネックレスが光っている。
迎えが来たので、部屋から出て、向かおうとした矢先だった。


「出掛けるのか?」
「ルイ様っ」

今まで話しかけられた事なんてなかったので驚いたが、
今は話しかけられたくない。
仕事の事はバレないと思うが、早々にこの場を
抜けなくてわ。
私は頭を下げてルイ様の横を通り過ぎようとすると腕を掴まれた。


「こんな時間に一人でか?アクトは?」
「一人で大丈夫です」
「、、、、、」
「ルイ様、腕を離して下さい」
「本当に、、、」
「えっ?」
「本当にブルーアイズなのか?」
「、、、何かの間違いですよ」


私は、腕を離すと走り去り父上の運転する
車に乗った。
病院へ着くと私は顔に仮面をつけた。
もちろん偽名を使っていて、
ホワイトエンジェルと呼ばれている。
そして私専用の部屋へ案内された。
部屋は月と星の光で明るく照らされ、
辺りにはホワイトローズが植えられている。
部屋の真ん中には池があり、水面にベットが浮かんでいる。
患者はそこで寝ながら診療を受ける。



さぁ、仕事の時間だ。
私は池に両手を入れ呪文を唱える。

「月星の輝き、草花の囀り、我に力を」

水面から黄金に輝くツタが出て、
私の腕に巻きついていく。

「ヒール」

患者の体が金色の光に包まれていく。
これが、世界で3人しか使えないとされる
回復魔法だ。
もちろんやり方は色々あるが、
症状の重い方にはこのやり方が一番だ。


私は次々と治療を行っていた。
次はお母様の順番だ。

「こんばんわ。ホワイトエンジェル。」
「こんばんわ奥様。宜しくお願いします」

最低限の会話を終え、
お母様の体が黄金の光に包まれる。

「何か悩みでも?」
「えっ?」
「先週より顔色が良くないので」
「先日、息子に婚約者が出来たんです。でも息子が認めていなくて」
「そうなんですか」
「相手の女性はとても魅力的なので言い寄られる男性も多いのではと。いつ息子に愛想をつかし出ていってしまうか心配なのです」



やっぱり、アクトは私の執事兼監視役か。
お母様に言われて出ていかないか見張っているのね。


「うまくいくことを祈っております」
「ありがとう」



お母様の治療も終え、今日最後の15人目。
診察のカルテを見ると呆然とした。
ジェイド・ブラウンだ。
ジェイドが部屋へ入ってきた。


「こんばんは、ホワイトエンジェル」
「こんばんは。ブラウン様」


簡単に会話を済ませ治療を行った。
大丈夫、平然としていれば、ばれる事はない。
順調に治療は終了した。


「今日の治療は終りました。お疲れ様でした」

私は頭を下げると、ジェイドが近づいて来た。


「ねぇホワイトエンジェル。昼間は何で逃げたの?」
「なんの事でしょうか?」


会話でわかった。ジェイドに正体がばれている。
何とかして誤魔化さなくてわ。
ジェイドはお構い無しにどんどん近づき、
私の顎を掴みうつ向いている顔を強引に上に上げると顔を近付けてきた。

「それでも隠してるつもりなの?そのブルーアイズ貴重だって言ったよね」
「離して下さい。私には聞き覚えはありません」
「今日ルイに会いに来てたの?全く相手にされてなかったけど」
「そんな方、存じ上げません」
「強情な所も可愛いね」

そう言うと、ジェイドは頬にキスをした。

「やめてっくだっ」

言いかけた所で、ジェイドの指が私の口の中へ
入り込み言葉を封じられる。
ジェイドは、頬から徐々に首筋へと口を滑らせる。

抵抗しても、やはり男女では力の差がある。
口の中の指が、舌を手探り息苦しく、
治療の疲れもあったせいか、意識が朦朧としてきた。


するとトントンとドアの叩く音が聞こえた。
助かったと安心すると、足の力が抜け膝からしゃがみこんだ。

「残念。邪魔が入ったね。また続きしようねホワイトエンジェル」


ジェイドは服を正すと部屋の外へ出ていった。


「遅かったが何かあったのかい?」
「父様」
「もしかして正体がばれたのか」
「誤魔化しましたが、申し訳ありません」


父様は、私を抱き抱えて、病院を後にし
車へと乗せた。
車の中で、今日学校で起きた事、
先ほどジェイドにされた事を父様に話した。


「お前には話していなかったが、いま噂になっているんだよ。スノウの事が」
「噂ですか?」
「回復魔法が使えるブルーアイズの少女が数年で18歳を迎える為、婚約者を探していると。その情報を得た貴族達はお前の事を血眼で探している」
「、、、、、」
「フィースト家に嫁ぎたいなら、必要以上の人間関係を避けなさい。学校でも、もう魔法クラスへ行ってはダメだよ」
「はい」
「また何か起きたら、報告しなさい」


父様の言う通り、
前の様にしばらくは、大人しくしていよう。

車の窓に自身の姿が写る。
首筋にはジェイドにつけられた跡が残っていた。
私は首筋の跡にそっと手をふれた。
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