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第71話 白い追跡者
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道路の上。
ディミトリは見つけたドローンをジッと見ていた。ポケットから監視の為に持ってきた単眼鏡を取り出す。
それをドローンに向けて見てみると、胴体にカメラらしき物が有るように思えた。
(まったく…… いつから監視されていたんだ?)
アカリが拉致されかけた時に、妙なタイミングで中華系と思しき連中が現れたのを思い出した。
車を取り逃がしそうになった時に、進路を妨害するためにトラックが出て来たのに違和感を覚えたのだ。
(あの時は仲違いしていた組織同士なので、監視をしあっているのかと思ったが……)
どうやらディミトリが揉め事を起こしていたので、どさくさに紛れて拐おうとしたのだろうと考えたようだ。
(ずっと監視されていたのかも知れんな……)
もっとも、その後にアオイの救出に気を取られてしまったので忘れていた。
(ドローンなら移動している時にも容易に追跡が出来ただろうな……)
ドローンを睨みつけながら、自分の相手を欺こうとした努力が無駄だったのかも知れないとディミトリは考えた。
本当は直ぐに行方が分からなくなるディミトリを追跡しようと、灰色狼がドローンを導入したのは彼も知らなかっただけだ。
(まあ、俺も色々な機材を使って相手を観察してたからな)
そう、考えてディミトリは苦笑したが或る事に考えが至った。
(あ…… マンションはヤバイかも知れんな……)
アオイのマンションが見張られていた事に気が付いたのだ。そうで無ければドローンが現れた理由が分からない。
ディミトリは携帯電話を取り出してケリアンに電話を掛けた。
『ケリアンさん……』
『どうしましたか?』
『今、車がドローンに追跡されてます。 貴方の指図じゃないですよね?』
ディミトリは念の為に尋ねてみた。ひょっとしたら護衛用の監視かも知れないと考えたからだ。
『私は知らないです……』
『そうですか』
『はい、灰色狼が貴方の行動を見張る為に飛ばしているのでしょう……』
『恐らく……』
裏社会の長いケリアンはドローンの意図を言い当てた。ディミトリも同じ意見だった。
『ケリアンさん。 そこは直ぐに引き上げた方が良いですよ』
『ああ、私も危険な匂いがする。 そちらも気を付けて……』
『はい、僕が居ないので彼らは気兼ねなく銃を使って襲撃するでしょうからね』
ディミトリの話で自分に危険が迫っている事に気が付いたケリアンはそう言って電話を切った。
(俺がアオイの救出に向かったのを知っているはず……)
ディミトリが居ない隙に乗じて、アオイたちを人質に取ろうとする可能性があるのだ。
ケリアンとの電話が終わった時に、横合いにバイクが並走して来た。中型のバイクで運転手は一人だけだ。
バイクは追い抜くわけでなく、並走して車内をチラチラ見始めた。
『お客さんだ……』
ディミトリは呑気に世間話をしている二人に声をかけた。
バイクの行動にピンと来る物があった。ディミトリが居るかどうかの確認であろう。
『え?』
そう言うと運転手は自分の右側に顔を向けた。バイクを確認しようとしたのだ。
後部座席のディミトリを確認したバイクの運転手は懐から銃を取り出した。
『危ないっ!』
ディミトリは叫ぶのと銃撃は同時だったようだ。
運転手側の窓が砕け散って、運転手の脳やら髪の毛やらがフロントガラスにへばりついた。
それを見ながらディミトリは自分の銃を取り出した。モロモフ号でかっぱらった奴だ。
(くそっ! なんてせっかちな連中なんだ!)
ディミトリは咄嗟に後部ドアの下側に屈み、自分の銃で窓越しにバイクを銃撃した。窓ガラスが車内に飛び散る。
当たるかどうかでは無く、牽制の為に銃弾をバラ撒いたのだ。
『運転を!』
ディミトリは叫ぶが助手席の男は顔を伏せたままだ。銃弾が自分目指して放たれているので仕方が無い所だ。
片手でハンドルを握っているが、前を見てるわけではない。このままでは事故ってしまう。
(クソッタレがっ!)
ディミトリは身体を起こしてバイクの男に銃撃を行った。車が揺れるせいなのか外してしまった。バイクの男も反撃して来た。
だが、ディミトリには当たらない。バックシートや窓に無駄に穴が開いていく。ディミトリも当たらないまでも銃撃していた。
(真っ直ぐ飛ばないじゃないか……)
モロモフ号で拾った銃は、バレルが曲がっているらしい。ちゃんと手入れをしていなかったのだろう。とんでもない方向に弾が飛んでしまう。暴発しないだけでも目っけ物の部類だ。もっとも、ちゃんと構えて撃っている訳ではないので仕方が無い。
何発目かでバイクの男は仰け反ったかと思うとバイクは横転してしまった。何処かに命中したようだ。
横転したバイクを避けようとして、後続の車が急ハンドルを切ったらしい。しかし、そのままコントロールを失って中央隔壁に衝突して反対車線に飛び出して行った。
何台かの車を巻き込んで道を塞ぐような形で停車してしまっていた。
『今の内に死体を蹴り出せっ!』
ディミトリは弾倉を交換しながら助手席の男に叫んだ。彼は運転席のドアを開けると同時にハンドルを左に切った。すると、遠心力の助けもあって運転手は道路に転がり落ちていった。
助手席の男は運転席に滑り込んでアクセルを踏み付けた。速度が上がるのを感じる。
(ヤバイヤバイヤバイ……)
バイクの男が運転手を撃ったのは車を停める為だ。ディミトリは灰色狼の連中が自分を拐いに来たのだろうと考えた。
何故、今のタイミングなのかは分からないが、コソコソ動くのを辞めたようだ。
『速度を上げてっ! お友達がいっぱい来るよっ!』
後ろを振り返ったディミトリが叫んだ。彼には速度を上げて迫ってくる車が見えていたのだ。
ディミトリは見つけたドローンをジッと見ていた。ポケットから監視の為に持ってきた単眼鏡を取り出す。
それをドローンに向けて見てみると、胴体にカメラらしき物が有るように思えた。
(まったく…… いつから監視されていたんだ?)
アカリが拉致されかけた時に、妙なタイミングで中華系と思しき連中が現れたのを思い出した。
車を取り逃がしそうになった時に、進路を妨害するためにトラックが出て来たのに違和感を覚えたのだ。
(あの時は仲違いしていた組織同士なので、監視をしあっているのかと思ったが……)
どうやらディミトリが揉め事を起こしていたので、どさくさに紛れて拐おうとしたのだろうと考えたようだ。
(ずっと監視されていたのかも知れんな……)
もっとも、その後にアオイの救出に気を取られてしまったので忘れていた。
(ドローンなら移動している時にも容易に追跡が出来ただろうな……)
ドローンを睨みつけながら、自分の相手を欺こうとした努力が無駄だったのかも知れないとディミトリは考えた。
本当は直ぐに行方が分からなくなるディミトリを追跡しようと、灰色狼がドローンを導入したのは彼も知らなかっただけだ。
(まあ、俺も色々な機材を使って相手を観察してたからな)
そう、考えてディミトリは苦笑したが或る事に考えが至った。
(あ…… マンションはヤバイかも知れんな……)
アオイのマンションが見張られていた事に気が付いたのだ。そうで無ければドローンが現れた理由が分からない。
ディミトリは携帯電話を取り出してケリアンに電話を掛けた。
『ケリアンさん……』
『どうしましたか?』
『今、車がドローンに追跡されてます。 貴方の指図じゃないですよね?』
ディミトリは念の為に尋ねてみた。ひょっとしたら護衛用の監視かも知れないと考えたからだ。
『私は知らないです……』
『そうですか』
『はい、灰色狼が貴方の行動を見張る為に飛ばしているのでしょう……』
『恐らく……』
裏社会の長いケリアンはドローンの意図を言い当てた。ディミトリも同じ意見だった。
『ケリアンさん。 そこは直ぐに引き上げた方が良いですよ』
『ああ、私も危険な匂いがする。 そちらも気を付けて……』
『はい、僕が居ないので彼らは気兼ねなく銃を使って襲撃するでしょうからね』
ディミトリの話で自分に危険が迫っている事に気が付いたケリアンはそう言って電話を切った。
(俺がアオイの救出に向かったのを知っているはず……)
ディミトリが居ない隙に乗じて、アオイたちを人質に取ろうとする可能性があるのだ。
ケリアンとの電話が終わった時に、横合いにバイクが並走して来た。中型のバイクで運転手は一人だけだ。
バイクは追い抜くわけでなく、並走して車内をチラチラ見始めた。
『お客さんだ……』
ディミトリは呑気に世間話をしている二人に声をかけた。
バイクの行動にピンと来る物があった。ディミトリが居るかどうかの確認であろう。
『え?』
そう言うと運転手は自分の右側に顔を向けた。バイクを確認しようとしたのだ。
後部座席のディミトリを確認したバイクの運転手は懐から銃を取り出した。
『危ないっ!』
ディミトリは叫ぶのと銃撃は同時だったようだ。
運転手側の窓が砕け散って、運転手の脳やら髪の毛やらがフロントガラスにへばりついた。
それを見ながらディミトリは自分の銃を取り出した。モロモフ号でかっぱらった奴だ。
(くそっ! なんてせっかちな連中なんだ!)
ディミトリは咄嗟に後部ドアの下側に屈み、自分の銃で窓越しにバイクを銃撃した。窓ガラスが車内に飛び散る。
当たるかどうかでは無く、牽制の為に銃弾をバラ撒いたのだ。
『運転を!』
ディミトリは叫ぶが助手席の男は顔を伏せたままだ。銃弾が自分目指して放たれているので仕方が無い所だ。
片手でハンドルを握っているが、前を見てるわけではない。このままでは事故ってしまう。
(クソッタレがっ!)
ディミトリは身体を起こしてバイクの男に銃撃を行った。車が揺れるせいなのか外してしまった。バイクの男も反撃して来た。
だが、ディミトリには当たらない。バックシートや窓に無駄に穴が開いていく。ディミトリも当たらないまでも銃撃していた。
(真っ直ぐ飛ばないじゃないか……)
モロモフ号で拾った銃は、バレルが曲がっているらしい。ちゃんと手入れをしていなかったのだろう。とんでもない方向に弾が飛んでしまう。暴発しないだけでも目っけ物の部類だ。もっとも、ちゃんと構えて撃っている訳ではないので仕方が無い。
何発目かでバイクの男は仰け反ったかと思うとバイクは横転してしまった。何処かに命中したようだ。
横転したバイクを避けようとして、後続の車が急ハンドルを切ったらしい。しかし、そのままコントロールを失って中央隔壁に衝突して反対車線に飛び出して行った。
何台かの車を巻き込んで道を塞ぐような形で停車してしまっていた。
『今の内に死体を蹴り出せっ!』
ディミトリは弾倉を交換しながら助手席の男に叫んだ。彼は運転席のドアを開けると同時にハンドルを左に切った。すると、遠心力の助けもあって運転手は道路に転がり落ちていった。
助手席の男は運転席に滑り込んでアクセルを踏み付けた。速度が上がるのを感じる。
(ヤバイヤバイヤバイ……)
バイクの男が運転手を撃ったのは車を停める為だ。ディミトリは灰色狼の連中が自分を拐いに来たのだろうと考えた。
何故、今のタイミングなのかは分からないが、コソコソ動くのを辞めたようだ。
『速度を上げてっ! お友達がいっぱい来るよっ!』
後ろを振り返ったディミトリが叫んだ。彼には速度を上げて迫ってくる車が見えていたのだ。
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