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第10話 肝試し
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ショッピングセンター。
姫星に頼み込まれた少年たちは喜んで話を始めた。
「自分たちの中学の先輩たちから、伝え聞いた話なんですが……」
少年たちが言うには、昔肝試しに行った中学生が行方不明になったという噂だ。
二十年ほど前に霧湧村の中学生たちが、神社で肝試しをおこなったそうだ。神社の鳥居の所から灯り無しで、本殿に行き中に紙を置いて来る。ただ、それだけの肝試しだ。
最初の一番目は無事に帰って来たが、二番目と三番目が帰って来ない、最初は二人が示し合わせて悪戯しているのだろうと思って、鳥居の所で小一時間ほど待ったが帰って来ない。声をかけながら神社を探し回ったがやはり居ない。
流石に不味い事態になったのかもしれないと、一旦帰宅して夜中にも関わらず自分の父親に相談した。
「あの神社は遊びで行く場所じゃないと言っておいたろうが!」
話を聞いた父親は叱ったが、行方が分からない二人を放っておけず、自ら神社に向かった。そして神社の本殿に入って、中学生たちが居ないのを確かめた。事態を重く見た父親は、直ぐに村中の男たちに声をかけた。そして村中を捜索したが見つからない。ついには山狩りまで行ったがやはり見つからない。
(さて、どうしたものか?)
一同で思案していると、村の長老が『コケシ塚』の石蓋をどけて見ろと言い出した。二メートル位の正方形で、重さが数トンはある奴だ。
村中の男たちでロープと滑車を使ってエンヤコラと石蓋を退けてみると、そこには二メートル四方の石室があって、中に行方不明の二人が居たんだそうだ。
石室は石蓋以外に出入り口は無い。数トンの蓋を中学生二人で持ち上げる事などは不可能だ。一体どうやって中に入ったのかは当人たちも分からない。
神社の境内を歩いていて『急に景色がグラリとしたと思ったら気を失った』と言っていたそうだ。あとは発見されるまで気を失っていたらしい。
村人たちも分けが判らず、中学生たちの悪戯ということで落ち着いたらしい。先の村の長老の話では、昔から良くある神様の悪戯だそうだ。
「ふむ、そういう噂もあるのか。 いや、どうも有り難う。 とても参考になったよ」
雅史は少年たちに礼を言った。聞いてみれば学校の怪談や都市伝説程度の噂話だった。それでも引っ掛かりがある。
『行方不明』というキーワードだ。雅史は霧湧村に帰ってから、山形に『コケシ塚』にある石蓋の事を質問してみようと考えた。
「じゃ、次の買い物に行きましょ」
雅史の隣で髪をいじりながら、退屈そうに話を聞いていた姫星は、買い物の続きの方が気になるらしく話を切り上げたがった。
「みんな、ありがとーねーー」
姫星は少年たちに手を振って雅史の袖を掴んで先を急がせる。少年たちは名残り惜しそうに、手を振りながら姫星を見送った。
(うむ、少年たちよ。 君たちの気持ちは痛いほどわかるぞ…… でも、だーめっ)
少し意地悪な雅史は、少年たちから姫星を引き離すために次の買い物先へと向かった。
「ぶぅぅぅっ、こっからは宝来さんが来ては駄目なのっ」
姫星が腕を胸の前でバッテンにしている。ふと、上を見ると『婦人用下着売り場』とある。
その文字列を見ただけで雅史は焦ってしまった。
「ぬぅおぁっ。 じゃ、僕は向こうで待ってるから、これで清算して於いてね」
雅史は自分の財布をそのまま渡して壁際に有ったベンチに避難していった。
そして、椅子に座って深くため息を付き、愛用のタブレットに質問の要点をまとめ始めた。
朝からバタバタしてしまい、今日のスケジュールを考えていなかった事に気が付いたのだ。
雅史は、タブレットを手帳代わりに使っている。こうしておけば、美良の足取りを時系列で考える事が出来ると思ったのだ。
三十分ほど、そんな作業をしていると、姫星が小さな袋を持って戻って来た。
「ちょっと、奮発して良いのを買っちゃった……」
姫星がニコニコしながら財布とレシートを雅史に渡した。
渡されたレシートをチラリと見て、その値段の高さに驚愕してしまった。
「たかがパンツで、何故にこの値段なのだ……」
ショーツのレシートを睨みつつ財布にしまった。
二枚組で五百円のパンツを愛用している身からすれば高いと思える値段だった。
(生地の使用量の少なさと、価格が反比例する謎を是非とも追求したいものだ……)
明後日の方向に火が付いた学者魂で、雅史は真剣に考えるのであった。
姫星に頼み込まれた少年たちは喜んで話を始めた。
「自分たちの中学の先輩たちから、伝え聞いた話なんですが……」
少年たちが言うには、昔肝試しに行った中学生が行方不明になったという噂だ。
二十年ほど前に霧湧村の中学生たちが、神社で肝試しをおこなったそうだ。神社の鳥居の所から灯り無しで、本殿に行き中に紙を置いて来る。ただ、それだけの肝試しだ。
最初の一番目は無事に帰って来たが、二番目と三番目が帰って来ない、最初は二人が示し合わせて悪戯しているのだろうと思って、鳥居の所で小一時間ほど待ったが帰って来ない。声をかけながら神社を探し回ったがやはり居ない。
流石に不味い事態になったのかもしれないと、一旦帰宅して夜中にも関わらず自分の父親に相談した。
「あの神社は遊びで行く場所じゃないと言っておいたろうが!」
話を聞いた父親は叱ったが、行方が分からない二人を放っておけず、自ら神社に向かった。そして神社の本殿に入って、中学生たちが居ないのを確かめた。事態を重く見た父親は、直ぐに村中の男たちに声をかけた。そして村中を捜索したが見つからない。ついには山狩りまで行ったがやはり見つからない。
(さて、どうしたものか?)
一同で思案していると、村の長老が『コケシ塚』の石蓋をどけて見ろと言い出した。二メートル位の正方形で、重さが数トンはある奴だ。
村中の男たちでロープと滑車を使ってエンヤコラと石蓋を退けてみると、そこには二メートル四方の石室があって、中に行方不明の二人が居たんだそうだ。
石室は石蓋以外に出入り口は無い。数トンの蓋を中学生二人で持ち上げる事などは不可能だ。一体どうやって中に入ったのかは当人たちも分からない。
神社の境内を歩いていて『急に景色がグラリとしたと思ったら気を失った』と言っていたそうだ。あとは発見されるまで気を失っていたらしい。
村人たちも分けが判らず、中学生たちの悪戯ということで落ち着いたらしい。先の村の長老の話では、昔から良くある神様の悪戯だそうだ。
「ふむ、そういう噂もあるのか。 いや、どうも有り難う。 とても参考になったよ」
雅史は少年たちに礼を言った。聞いてみれば学校の怪談や都市伝説程度の噂話だった。それでも引っ掛かりがある。
『行方不明』というキーワードだ。雅史は霧湧村に帰ってから、山形に『コケシ塚』にある石蓋の事を質問してみようと考えた。
「じゃ、次の買い物に行きましょ」
雅史の隣で髪をいじりながら、退屈そうに話を聞いていた姫星は、買い物の続きの方が気になるらしく話を切り上げたがった。
「みんな、ありがとーねーー」
姫星は少年たちに手を振って雅史の袖を掴んで先を急がせる。少年たちは名残り惜しそうに、手を振りながら姫星を見送った。
(うむ、少年たちよ。 君たちの気持ちは痛いほどわかるぞ…… でも、だーめっ)
少し意地悪な雅史は、少年たちから姫星を引き離すために次の買い物先へと向かった。
「ぶぅぅぅっ、こっからは宝来さんが来ては駄目なのっ」
姫星が腕を胸の前でバッテンにしている。ふと、上を見ると『婦人用下着売り場』とある。
その文字列を見ただけで雅史は焦ってしまった。
「ぬぅおぁっ。 じゃ、僕は向こうで待ってるから、これで清算して於いてね」
雅史は自分の財布をそのまま渡して壁際に有ったベンチに避難していった。
そして、椅子に座って深くため息を付き、愛用のタブレットに質問の要点をまとめ始めた。
朝からバタバタしてしまい、今日のスケジュールを考えていなかった事に気が付いたのだ。
雅史は、タブレットを手帳代わりに使っている。こうしておけば、美良の足取りを時系列で考える事が出来ると思ったのだ。
三十分ほど、そんな作業をしていると、姫星が小さな袋を持って戻って来た。
「ちょっと、奮発して良いのを買っちゃった……」
姫星がニコニコしながら財布とレシートを雅史に渡した。
渡されたレシートをチラリと見て、その値段の高さに驚愕してしまった。
「たかがパンツで、何故にこの値段なのだ……」
ショーツのレシートを睨みつつ財布にしまった。
二枚組で五百円のパンツを愛用している身からすれば高いと思える値段だった。
(生地の使用量の少なさと、価格が反比例する謎を是非とも追求したいものだ……)
明後日の方向に火が付いた学者魂で、雅史は真剣に考えるのであった。
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