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第1話 超鋼アーマー雪雷七六式
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私のおじいちゃんは大正生まれで武蔵と書いて(たけぞう)といいます。
私はおじいちゃんの事が大好きでした。
4月生まれの私に、おじいちゃんは春の様に暖かい人になって欲しいと「春香」という名前をつけてくれました。
おじいちゃんが出掛ける時はいつも一緒に行くとダダをこねていたそうです。
でも
私が小学3年生の時にお父さんが女の人と出て行き、5年生の時にお母さんが男の人と出て行きました。
私は....捨てられた子
それからはおじいちゃんに育てられています。
おじいちゃんもいつか私を捨てるんだ。
「春香、どこに行くんだい?」
「おじいちゃんには関係ないわよ」
私は中学生になり、おじいちゃんを避ける様になっていきました。
夏休みになっても両親の離婚の経緯を知っているから一緒に遊んだりする友達はいなかったけど、それでもあまり家には居たくなかった。
おじいちゃんは私が小さい頃、よくむかし話を聞かせてくれました。
それは、私の生まれる遥か前、当時はソビエト連邦と呼ばれていたロシアが一方的に日ソ不可侵条約を破棄して択捉島に攻め込んだ時、1人の少年がソ連の戦車に轢き殺されそうになるところをおじいちゃんが戦車の前に立ちはだかり気合一閃!
戦車をひっくり返したそうです。
「まさか~」
と言う私の顔をおじいちゃんはニコニコしながら見ていました。
家の前に横断歩道があります。
近くで大きなショッピングセンターが出来るらしく、おじいちゃんの家や近所の家も立ち退きの話がでているみたいで、嫌がらせをしているみたいに、毎日何台ものダンプが通ります。
今日も横断歩道を渡ろうとする歩行者にクラクションを鳴らして威嚇している様でした。
「邪魔だチンタラしてんじゃね」
「貴様の方こそ遠慮して走れー!」
歩行者に罵声を浴びせているドライバーにおじいちゃんが怯まずに注意をしています。
おじいちゃんは毎日、横断歩道の交通整理をしています。
「おじいちゃん危ないよ」
そんなおじいちゃんを横目に横断歩道を渡ろうとした私。
「春香、大きく強い者が小さく弱い者を苛めてどうする」
歳の事も考えずみんなの為に頑張っているおじいちゃんを思わず心配になって声をかけた。
心配....私が....
横断歩道の真ん中でぼんやりと考えていた私。
「はるかー!あぶない!」
「え....」
ダンプが目の前に迫っていた。
私は死を覚悟した。
このまま生きていてもいつも誰かに捨てられる人生....じゃあ、私から捨ててもいいのかな?
一瞬私の体が中に浮いた。
ダンプにはねられたんだと思ったけど違っていた。
「おじいちゃん?!」
私はとっさにおじいちゃんに突き飛ばされていた。
90歳を超えたおじいちゃんのどこにそんな力があったのだろう。 おじいちゃんはとても優しい笑顔をしていた。
そして
ダンプに跳ね飛ばされた。
病院の廊下。
私は椅子に座っていた。
「どうして....おじいちゃん....私なんかを助ける為に....」
私はあの時のおじいちゃんの笑顔が頭から離れられないでいた。
手術室のドアが開いた。
「おじいちゃんは」
「普通なら即死してもおかしくないのですが....恐るべき生命力です」
「じゃあ、おじいちゃんは」
「命には別状ありませんが、全身骨折ですし、まして高齢ですから、しばらくは絶対安静です」
お医者さんはおじいちゃんが生きている事に納得できない感じでしたが私に一通り狀態の説明をして立ち去っていった。
「良かった」
安心した途端にいつ以来だろうか?
涙が私の頬を伝わる。
その時おじいちゃんにとんでもない事が起きていたのは後になって知る事になる私でした。
戦車の大軍が迫ってくる。
「タケ君もう戦線を維持できない、退却だ」
「許せん。火事場泥棒め」
「仕方ない。あちらさんだって何かしらの戦果が欲しいのだから」
1945年8月28日択捉島。
ソ連軍が上陸して次々に島を占拠していった。
戦車の大軍の先に逃げ遅れた少年がいた。
「あのままでは少年が戦車に潰される!」
「タケ君!」
上官の止めるのも聞かず走りだし少年を守る様に立つ武蔵。
「よう」
怯えて動けなくなっていた少年に笑顔で答える武蔵。
向かってくる戦車にあろう事か正面から戦車を食い止めた。
「どっせい!」
力任せに戦車をひっくり返す武蔵。
「そんなバカな!」
多分ロシア語でそう言ったのだろう。
相手のロシア人は驚いて戦車から逃げ出していった。
何より驚いたのは後にいる少年だろう。
「少年。ケガはなかったか」
うなづく少年にニッコリと笑う武蔵。
「日本の未来は任せたぞ、俺はこれからの日本の礎の為に戦ってくる。願わくば、弱い者、力の無い者の為に何かを成し得てくれ」
戦車の大軍に向かって走っていく武蔵。
「夢か....」
ベットの上で目を覚ます武蔵。
誰かが立っていた。
私はあれから、おじいちゃんの代わりに横断歩道の交通整理をしていました。
ダンプは相変わらず傍若無人に走っています。
横断歩道を渡ろうとする小学生、しかしダンプが走ってきてなかなか渡れない。
「止まりなさいって言っているでしょ~」
いくら黄色い交通安全の旗を振っても全然止まる気配がない。
私が諦めかけた時。
見覚えのある人がそこにいました。
全身骨折で動けない筈のおじいちゃんがそこに立っていた。
「まったく、こんなじいさんに何をさせるんだかな」
迫るダンプ、その時おじいちゃんが入れ歯だろうか?口にはめる。
「Put in!」
掛け声をかけた。
するとおじいちゃんの体が光に包まれた。
次に私が見た光景は片手一本でダンプを止めている。
漆黒の鎧を身につけている人でした。
「お、おじいちゃん¿」
「いつまでも、デカイ顔をしてパーパー走ってんじゃないぞ」
「て、てめえ、このジジイ」
ダンプの運転手は凄んで魅せたが片手でダンプを止める化け物が相手。
猛スピードでバックして走り去って行った。
私は目の前の事がまったく理解ができないでいた。
「話しはだいたい聞きました。相変わらずですね」
男が懐かしそうに武蔵に話しかける。
「誰だ。お前は」
「あの時の約束を果たしにきました」
「あの時の約束だと」
「択捉島であなたに助けられた者ですよ」
男は武蔵に助けられたお礼を言いい、その後ある研究機関で開発したという兵器について説明を始めた。
「これは強化アーマーで体を守り常人の域を遥かに凌駕する力を発揮する事ができる装置です」
メタリックの銀色が光輝く入れ歯を差し出す。
「この、超鋼アーマー雪雷(せつらい)七六式は単騎で一国の軍隊に匹敵する力があります」
「とんでもない物を作ったんだな」
「強大な力は、力の無い者を守る為にこそに使われる....私が武蔵さんに教えてもらったことです、武蔵さんなら強大の力に負けない強靭な心があるから雪雷を使いこなせると思います」
ある種の決意が男から溢れ出していた。
「そして、武蔵さんにあわせて起動装置は趣向を凝らしてみました」
「わかった。俺の命。弱い者の礎の為にくれてやろう」
小学生に声をかける漆黒の鎧。
「よう、車に気をつけてな」
お礼を言って走り去る。
鎧が外れる。
「おじいちゃん」
やはり、おじいちゃんだった。
でもどうして?
なんであんな姿に?
私の方に歩いてくる。
「春香、ただいま」
いつも通りの私の大好きなおじいちゃんだった。
おじいちゃんは私の頭を優しく撫でてくれました。
私はおじいちゃんの事が大好きでした。
4月生まれの私に、おじいちゃんは春の様に暖かい人になって欲しいと「春香」という名前をつけてくれました。
おじいちゃんが出掛ける時はいつも一緒に行くとダダをこねていたそうです。
でも
私が小学3年生の時にお父さんが女の人と出て行き、5年生の時にお母さんが男の人と出て行きました。
私は....捨てられた子
それからはおじいちゃんに育てられています。
おじいちゃんもいつか私を捨てるんだ。
「春香、どこに行くんだい?」
「おじいちゃんには関係ないわよ」
私は中学生になり、おじいちゃんを避ける様になっていきました。
夏休みになっても両親の離婚の経緯を知っているから一緒に遊んだりする友達はいなかったけど、それでもあまり家には居たくなかった。
おじいちゃんは私が小さい頃、よくむかし話を聞かせてくれました。
それは、私の生まれる遥か前、当時はソビエト連邦と呼ばれていたロシアが一方的に日ソ不可侵条約を破棄して択捉島に攻め込んだ時、1人の少年がソ連の戦車に轢き殺されそうになるところをおじいちゃんが戦車の前に立ちはだかり気合一閃!
戦車をひっくり返したそうです。
「まさか~」
と言う私の顔をおじいちゃんはニコニコしながら見ていました。
家の前に横断歩道があります。
近くで大きなショッピングセンターが出来るらしく、おじいちゃんの家や近所の家も立ち退きの話がでているみたいで、嫌がらせをしているみたいに、毎日何台ものダンプが通ります。
今日も横断歩道を渡ろうとする歩行者にクラクションを鳴らして威嚇している様でした。
「邪魔だチンタラしてんじゃね」
「貴様の方こそ遠慮して走れー!」
歩行者に罵声を浴びせているドライバーにおじいちゃんが怯まずに注意をしています。
おじいちゃんは毎日、横断歩道の交通整理をしています。
「おじいちゃん危ないよ」
そんなおじいちゃんを横目に横断歩道を渡ろうとした私。
「春香、大きく強い者が小さく弱い者を苛めてどうする」
歳の事も考えずみんなの為に頑張っているおじいちゃんを思わず心配になって声をかけた。
心配....私が....
横断歩道の真ん中でぼんやりと考えていた私。
「はるかー!あぶない!」
「え....」
ダンプが目の前に迫っていた。
私は死を覚悟した。
このまま生きていてもいつも誰かに捨てられる人生....じゃあ、私から捨ててもいいのかな?
一瞬私の体が中に浮いた。
ダンプにはねられたんだと思ったけど違っていた。
「おじいちゃん?!」
私はとっさにおじいちゃんに突き飛ばされていた。
90歳を超えたおじいちゃんのどこにそんな力があったのだろう。 おじいちゃんはとても優しい笑顔をしていた。
そして
ダンプに跳ね飛ばされた。
病院の廊下。
私は椅子に座っていた。
「どうして....おじいちゃん....私なんかを助ける為に....」
私はあの時のおじいちゃんの笑顔が頭から離れられないでいた。
手術室のドアが開いた。
「おじいちゃんは」
「普通なら即死してもおかしくないのですが....恐るべき生命力です」
「じゃあ、おじいちゃんは」
「命には別状ありませんが、全身骨折ですし、まして高齢ですから、しばらくは絶対安静です」
お医者さんはおじいちゃんが生きている事に納得できない感じでしたが私に一通り狀態の説明をして立ち去っていった。
「良かった」
安心した途端にいつ以来だろうか?
涙が私の頬を伝わる。
その時おじいちゃんにとんでもない事が起きていたのは後になって知る事になる私でした。
戦車の大軍が迫ってくる。
「タケ君もう戦線を維持できない、退却だ」
「許せん。火事場泥棒め」
「仕方ない。あちらさんだって何かしらの戦果が欲しいのだから」
1945年8月28日択捉島。
ソ連軍が上陸して次々に島を占拠していった。
戦車の大軍の先に逃げ遅れた少年がいた。
「あのままでは少年が戦車に潰される!」
「タケ君!」
上官の止めるのも聞かず走りだし少年を守る様に立つ武蔵。
「よう」
怯えて動けなくなっていた少年に笑顔で答える武蔵。
向かってくる戦車にあろう事か正面から戦車を食い止めた。
「どっせい!」
力任せに戦車をひっくり返す武蔵。
「そんなバカな!」
多分ロシア語でそう言ったのだろう。
相手のロシア人は驚いて戦車から逃げ出していった。
何より驚いたのは後にいる少年だろう。
「少年。ケガはなかったか」
うなづく少年にニッコリと笑う武蔵。
「日本の未来は任せたぞ、俺はこれからの日本の礎の為に戦ってくる。願わくば、弱い者、力の無い者の為に何かを成し得てくれ」
戦車の大軍に向かって走っていく武蔵。
「夢か....」
ベットの上で目を覚ます武蔵。
誰かが立っていた。
私はあれから、おじいちゃんの代わりに横断歩道の交通整理をしていました。
ダンプは相変わらず傍若無人に走っています。
横断歩道を渡ろうとする小学生、しかしダンプが走ってきてなかなか渡れない。
「止まりなさいって言っているでしょ~」
いくら黄色い交通安全の旗を振っても全然止まる気配がない。
私が諦めかけた時。
見覚えのある人がそこにいました。
全身骨折で動けない筈のおじいちゃんがそこに立っていた。
「まったく、こんなじいさんに何をさせるんだかな」
迫るダンプ、その時おじいちゃんが入れ歯だろうか?口にはめる。
「Put in!」
掛け声をかけた。
するとおじいちゃんの体が光に包まれた。
次に私が見た光景は片手一本でダンプを止めている。
漆黒の鎧を身につけている人でした。
「お、おじいちゃん¿」
「いつまでも、デカイ顔をしてパーパー走ってんじゃないぞ」
「て、てめえ、このジジイ」
ダンプの運転手は凄んで魅せたが片手でダンプを止める化け物が相手。
猛スピードでバックして走り去って行った。
私は目の前の事がまったく理解ができないでいた。
「話しはだいたい聞きました。相変わらずですね」
男が懐かしそうに武蔵に話しかける。
「誰だ。お前は」
「あの時の約束を果たしにきました」
「あの時の約束だと」
「択捉島であなたに助けられた者ですよ」
男は武蔵に助けられたお礼を言いい、その後ある研究機関で開発したという兵器について説明を始めた。
「これは強化アーマーで体を守り常人の域を遥かに凌駕する力を発揮する事ができる装置です」
メタリックの銀色が光輝く入れ歯を差し出す。
「この、超鋼アーマー雪雷(せつらい)七六式は単騎で一国の軍隊に匹敵する力があります」
「とんでもない物を作ったんだな」
「強大な力は、力の無い者を守る為にこそに使われる....私が武蔵さんに教えてもらったことです、武蔵さんなら強大の力に負けない強靭な心があるから雪雷を使いこなせると思います」
ある種の決意が男から溢れ出していた。
「そして、武蔵さんにあわせて起動装置は趣向を凝らしてみました」
「わかった。俺の命。弱い者の礎の為にくれてやろう」
小学生に声をかける漆黒の鎧。
「よう、車に気をつけてな」
お礼を言って走り去る。
鎧が外れる。
「おじいちゃん」
やはり、おじいちゃんだった。
でもどうして?
なんであんな姿に?
私の方に歩いてくる。
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いつも通りの私の大好きなおじいちゃんだった。
おじいちゃんは私の頭を優しく撫でてくれました。
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