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青天の……

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「お目覚めになられてようございました」
「あ、はい」
 とりあえず、手を胸から外して気をつけの姿勢で頷けば、メイドさんが部屋に置いてある椅子を引いて、座るように促すのでそのまま着席。
「あの時は本当に驚きました」
「あ、あの時?」
「お嬢様がなにやら机の引き出しに向かって叫んで居るのを見、一体何事かと思えば、いきなり『ビバ! 』と叫ばれ引き出しに突っ伏した、『あの時』でございます」
「つ、机の引き出し……(ド○えもんか!)」
「そう、机の引き出しでございます。とうとう逝っちゃったかと思いました」
「い、逝っちゃったって? どういう意味で?」
「両方の意味ですが、何事も無k……、ありましたけど、目を覚まされて良かったです」
 メイドさんってもっとこう主人を敬う感じかと思ってたんだけど、結構辛辣。
「それで、お食事はどうなさいますか? こちらにお運びしましょうか?」
「あ、いえ、食事の方に私があそばします」
「……かしこまりました」
 じっとりと明らかに何かしら疑っている瞳を向けつつも、綺麗な一礼を決めてメイドさんが出ていった。
「うん、きっと、バレてる。お嬢様言葉なんてわかんないよ」
 なんだか怒涛過ぎて何かが麻痺しているのか、結構どうでも良くなった僕は再び鏡の前に立って、もう一度自分自身を確認した。
 見た目やピチピチしているところから見て恐らく10代後半から20代前半と思われるこの人物。
 人間、ここまで長くなるもんなんだなというほど長い髪の毛は膝裏まであり、ふわりとしたウェーブの青みがかった銀色。
 生まれてこの方、長髪・ロン毛の髪型などなった試しがない僕は髪の長さに戸惑っていたが、光を浴びてキューティクルが美しく輝く様に思わず感嘆の声を上げる。
 瞳はアメジストのような薄い紫がかった色合いで、光を受ければ少し赤くなった。
 向こうでは天然石や宝石原石が好きだった僕は、この不思議に綺麗な瞳に見惚れてしまう。
「あ、この髪色と瞳の色。この子はもしかしてアルビノとかかな?」
 詳しく知っているわけではないが、昔そういうテレビ番組を見たような記憶がある。
 肌にしても、肌理が細かく吸い付くようで、頬ずりしたくなるような真っ白な肌。毎日アパートの風呂場で、ナイロンタオルで磨くだけの僕の肌とは雲泥の差だ。
 何よりその肌は、ただ白いだけじゃない、ほんのりピンク色で可愛らしくもあり色気すら感じた。
 色気。そう、色気と言えばこのスタイルだ。
「これぞ、噂のボン・キュッ・ボン。いや、ボボン・キュッ・ボン」
 大きな胸はこれぞマスクメロン級(贈答用)で、くびれた腰に、肉付きが程よいキュッとしているのにプリンとした安産型のお尻。
 今までの28年の人生で直接お目にかかったことなど一度もない大きな胸だったが、胸だけが目立ちすぎるようなこともなく、体全体、均整の取れた良い体つきであった。
 むこうの僕がこんな女性に迫られたら、恐らく一目散に逃げ出すだろう。
「いや、まじで凄いわ。この体」
 胸元の谷間をしっかり強調した肩出しのドレスは、体全体にピッタリくっついてボディーラインがくっきりわかる仕様。
 ただ、ドレスではあるのに伸び縮みする比較的動きやすい素材の服で、見た目もシンプル。
 ただ、そんな服でさえ、この体がまとえばまるでディナーショーにでも行くかのような華麗さを際立たせるのだ。
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