異世界転移から始まるハーレム生活〜チートスキルを貰った俺は、妹と共に無双する〜

昼寝部

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1章 異世界へ

vs『黒の騎士』 2

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 【威圧】の影響で立ち上がることもできないカナデの下へ向かう。
 幸い、黒の騎士は動かず高みの見物をしているため、騎士を視界に捉えつつ思考を巡らす。

「賢者さん。【透明化】も鑑定をお願い」

『了解しました』


ーーーーー

【透明化】

 2秒間だけ透明になれる。ただし、音を消すことはできず、使用した後は10秒間使用できない。

ーーーーー


「2秒か。戦いの中での2秒は厄介だぞ」

 だが音を消すことはできないので、足音や鎧の音で戦うことはできる。
 騎士の分析を終えた俺は全く動かない騎士を放置し、まずはカナデの側に行く。

「ごめん……ね……お兄ちゃん……」
「大丈夫だ。ゆっくり深呼吸をしろ」
「うん……」
「カナデが落ち着くまで俺は側にいるから」

 本当なら抱きしめて安心させたいが敵の目の前で行うのは危険なので自重する。

「……チートスキルをもらったから、どんな敵でも勝てると思ったんだ。でも『黒の騎士』と視線が合った時、私は初めて死の恐怖を感じた。そしたら動けなくなって……うぅ……またお兄ちゃんに迷惑をかけて……ぐすんっ。こんな私が情けないよぉ……」

 涙を流しながらカナデが自分の気持ちを吐露する。
 そんなカナデの頭を軽く撫でる。

「ぐすんっ……お兄ちゃん?」
「カナデ。俺はいつもカナデが側に居るだけで元気をもらってるんだ。だから迷惑なんてかかってないよ。それに死の恐怖は誰にでもあることだ。情けないことはない。これから少しずつ、お兄ちゃんと克服していこうな」
「……うぅ……ごめんなさい……お兄ちゃん……」
「こういう時は『ごめんなさい』じゃないだろ?」
「……ぐすん。ありがと……お兄ちゃん」
「あぁ。だから今は心を落ち着かせてくれ。そして俺の援護ができるよう準備してほしい。アイツを倒すには必ずカナデの力が必要になるから」
「うん。頑張ってみるよ」

 最後にカナデの涙を人差し指で拭った後、もう一度『黒の騎士』を見据える。

「ありがたいことに高みの見物だな。ならもう少し待ってもらってもいいか?」

 もちろん返事は来ないが動く様子もない。

(『黒の騎士』の性格がクズでよかったよ。多分、心が壊れた冒険者たちを眺めるのが趣味なんだろう)

 そのことに安堵しつつ、今度はルナさんの下へ足を運ぶ。

(おそらく、俺のことを昔の誰かと勘違いしている)

 今もなおルナさんが俺のことを恐怖の対象として見ていることが何よりの証拠だ。

「ルナさん。カミトですよ」

 危害を加えないことをアピールするため、優しい笑みを浮かべてルナさんに近づく。

「やめて!来ないで!」

 しかし、ルナさんの震えや恐怖の眼は治らない。

「ルナさん。俺のことを覚えてますか?俺たち、今日一緒にダンジョンを探索したんですよ?」

 次に今日の出来事を思い出してもらおうと語りかける。

「し、知らない!」

 しかし、これでもルナさんは思い出してくれない。

「お願い!これ以上はやめて!私が全て悪かったから師匠の身体を傷つけないで!これ以上は師匠が歩けなくなるよ!」
「っ!」

 その言葉を聞いて心が痛む。
 昔、ルナさんに何があったかは分からないが、おそらく師匠が冒険者を引退することになった場面を思い出しているのだろう。

「お願いだから師匠を傷つけないで!私が何でもするから!」

(ルナさんの師匠は悪い人間によって大怪我を負わされ冒険者を引退した。その原因を作ったのがルナさんだったのか)

 そう思うと今までの発言が全て繋がる。

「お願い!私が奴隷になるから、これ以上は師匠を傷つけないで!」
「ルナさん!」

 俺はルナさんとの距離を詰め、ルナさんを抱きしめる。

「俺はそんなことをしない!思い出して!ルナさん!」
「い、いや!やめて!放してっ!」
「くっ!」

 ルナさんの渾身のパンチが俺の腹に決まる。
 完全に油断しておりSランク冒険者のパンチを防御なしで喰らったため、かなりの激痛が走るが、俺は我慢してルナさんに笑顔を向ける。

「ルナさん。俺は絶対にルナさんやルナさんの師匠を傷つけません。どれだけ殴られても絶対に」

 殴られたことなど気にしていないことをアピールするため、笑顔を崩さず出来るだけ優しい声色で伝える。

「こ、来ないで……来ないでーっ!」

 そんな俺を見ても未だに恐怖を感じているようで、再びルナさんが俺を殴ろうと拳を握る。

「ルナ!」
「ひっ!」

 俺のことを殴ろうとしたルナさんだが、強い口調で名前を呼ばれると、“ビクっ!”として動きが止まる。
 そんなルナさんへ俺は優しく抱きしめる。

「俺は絶対にルナやルナが大切に思ってる人を傷つけない。そしてルナやルナの大切な人を傷つけようとする奴は俺が必ず粛正する。これからは俺がずっとルナの側にいるから」

 俺が本心で想っていることを伝え、ぎゅーっと抱きしめる。

 すると、俺のことを思い出したのか…

「アキ……ト……」
「ルナさん!」

 恐怖で身体を震わせることなく、俺の名前を呼んでくれる。

「怖かった、アキト。助けてくれてありがと……それとごめ……ん」

 そう言って“バタっ”と倒れる。
 どうやらフラッシュバックでの精神的ダメージが大きかったようで、気を失ってしまったようだ。
 そんなルナさんを優しくお姫様抱っこしてカナデの側へ寝かせる。

「カナデ。ルナさんを頼む」
「う、うん!ルナさんは絶対私が守ってみせるよ!」
「あぁ。頼んだぞ」

 未だに震えが治っていないカナデだが、俺たちのやり取りを一部始終見ていたこともあり、立ち上がりながら応えてくれる。

(ルナさんを守るという気持ちがカナデの心を変えたか)

 今まで立ち上がることもできなかったカナデが立ち上がる様子を見て、俺は嬉しくなる。

「ルナさん、少し休んでてください。俺がすぐに終わらせますから」

 そう言ってルナさんの頭を優しく撫でる。

「アキ……ト……ごめん……」

 俺を殴ったことを覚えてるようで、気を失った状態でも謝ってくる。

「そんなに謝らなくていいですよ」

 気を失っても謝り続ける優しいルナさんに笑みをこぼしつつ、再び頭を撫でる。
 すると俺の声が届いたのか、ルナさんの表情が和らぐ。

「師匠の夢……は……私が叶……える……」
「そうか。ルナさんの夢は師匠の夢だったのか」

 ここに来る道中、ルナさんには夢があると言った。
 どうやら怪我を負った師匠が叶えたかった夢を引き継いでいるようだ。

「こんな話を聞いたら夢を叶えるための手伝いがしたくなりますよ」

 俺は最後にもう一度ルナさんを見る。

「ルナさん。この戦いが終わったら俺たちをルナさんのパーティーに入れてください。絶対、ルナさんを悲しませたりしませんので。だから今はゆっくり休んでてください」

 そう伝えた後、俺は『黒の騎士』を見る。
 どうやら今までのやり取りがとても良かったようで、笑っているように見えた。
 そんな『黒の騎士』に対して俺は自分の気持ちを言い放つ。

「許さねぇ。お前は絶対、俺の手で殺す!」

 俺は『黒の騎士』に向けて闘志を燃やした。
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