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学園編

72 モブ!君、モブとして働く

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「ーーーと、いうわけで、この魔法式はこの部分が特殊系ですの」
ここは地獄の研究所。
今日も今日とて、仕事が山積み……のはずが、一転して今は所長の妹様から講義を受けている。

あ、どうも、冴えないモブ!君です。

最近、妹様のお陰で仕事が捗り、仕事時間中に自由ができはじめました。
元より魔法学園生な僕たち新人は、エド副所長の薦めでニコラスの才女と呼ばれる妹様の講義を受けています。

初めは浮かれないメンバーたちだったが、授業が進むにつれて先輩たちまで見に来るように。
魔法学園時代で知り得ることの出来なかった部分をあっさりと解明して、説明までする。
妹様、本当に何者なのでしょうか?

さすがに光系の魔法を使ってみせて「人が一瞬で死ぬ魔法ですわ」とにこりと笑って見せた時には、多くのものが失神しそうになった。
エド様は苦笑い、タファ様は「さすが、俺の妹!」とシスコンぶりを発揮していた。
いや、その妹様はとんでもないですよ?

ニコラス公爵家は変態が多いと噂に聞いていたが本当かもしれない。
妹様は研究員たちの口を塞ぐために、授業前に契約書を書かせる徹底ぶりで、抜け目がない。
もしかすると、公爵家は妹様が継ぐのかもしれない、そうなったらなんとなく領民が可哀想な気もする。

しかし、安心安全安定の三拍子、完璧な仕事ぶりの妹様なら適切だろう。
後は、国をとろうなどと画策しないことを願うばかりである。

そんな、妹様。
偶々本校舎に用がある時に、一人で歩いているのを見かけた。
駆け寄ろうか?と思ったが、自分は冴えないモブなので、隣に立つだけですくむなと止めておいた。

さて、仕事するかと振り返ろうすると、次の瞬間、とんでもないものを見る。

なんと、妹様が落とし穴に……。
あれ?嵌まってない?
いや、浮いてるぞ!?
そして何事もなかったかのように魔法で穴を埋めて立ち去る妹様。
か、格好いいですっ!!!

そうでなくて……、なんか言いたいことが一杯あってまとまらない。
アワアワしている内に妹様は視界から消えていった。
……どうしよう?!そうだ、所長に報告しなくちゃっ!!!

焦った僕は気がつかない。
それが、とんでもないことを招くなんて……。
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